優里「ドライフラワー」豊かな感情表現でバイラルチャート好調 男女の視点を的確に描いた歌詞と“揺らぎ”のある歌声

 今週チャート2位にランクインした「ドライフラワー」は、前述した「かくれんぼ」のアフターストーリー。両曲とも“終わったばかりの恋愛”を歌った繊細なラブバラードだが、歌詞を見ると「かくれんぼ」は男性目線、「ドライフラワー」は女性目線で綴られている。シンプルな言葉ながら、男女差を的確に表現しているところが、実にリアル。タイトルを並べただけでも、違いがわかる。ドライフラワーなんてタイトル、シュールすぎて個人的に心を抉られる思いがある。2曲の歌詞を比較することで、聴き手がそれぞれの楽曲(という名の物語)により入りやすくなるのは明らかで、聴いていて”感情移入”というよりも”自己投影”に近いような感覚があった。だから筆者自身、心を抉られてしまったわけなのだが。

優里 『ドライフラワー』Official Music Video(フル)

 優里の魅力は、その歌声にある。独特の揺らぎがあるその声質は、とても中毒性がある。さらに、その声質を最大限に活かせるスキルもある。ボーカルアプローチからは、歌詞に寄り添って歌うことがベーシックにあることが伺えるが、ファルセットやロングトーン、ビブラートなども、出してもすぐ引くような潔さがあり、自己陶酔することない抜群のバランス感覚も持ち合わせている。このバランス感は、今後バラード以外の曲でも活かされてくるだろうし、このアーティストのマジョリティに直結している部分でもある。

 しかしながら特筆すべきは、何気ないところで繰り出される感情豊かなニュアンスだ。「ドライフラワー」の『THE FIRST TAKE』の歌い出しに、その実力が出ている。ナチュラルすぎて一度聴いただけでは気が付かないぐらいだが、2度目からワンフレーズの中でも、複雑な感情を聴きとることができる。歌詞だけに頼らず、歌声でも感情を紡げる表現力こそ、彼の未来につながる最大の武器だ。

優里 - ドライフラワー / THE FIRST TAKE

■伊藤亜希
ライター。編集。アーティストサイトの企画・制作。喜んだり、落ち込んだり、切なくなったり、お酒を飲んだりしてると、勝手に脳内BGMが流れ出す幸せな日々。旦那と小さなイタリアンバル(新中野駅から徒歩2分)始めました。
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