ズーカラデル、リュックと添い寝ごはん、Omoinotake……シーンを盛り上げる3ピースバンド 小編成から生み出す最大の魅力

 Omoinotakeは藤井レオ(Vo/Key)、福島智朗(Ba/Cho)、冨田洋之進(Dr)による3ピース。鍵盤奏者がボーカルを兼ねたバンドは珍しくないが、彼らは純然たるピアノトリオ編成。今年頭発売のEP『モラトリアム』が話題となり、4月から3カ月連続で楽曲リリースを行うなど精力的に活動している。

 ギターレスで作られる楽曲はオントレンドなビートが艶っぽいグルーヴを生むスタイリッシュなもの。ドラム、ベースだけでなく鍵盤のアタックもリズム楽器として機能し、踊れるグルーヴを展開。路上で鍛え上げられた求心力のある楽曲たちは耳を掴んで離さない。また、常にバンドであることに強い誇りを感じる音で仕上げているのも特徴だ。打ち込みでリリースしようとした楽曲をリモートレコーディングを行ってまでバンドの音で完成させた「One Day」はその最たるもの。デジタルな音像の中に抜群の肉体性が宿っている。

『Long for』

 ギターに埋もれることなく音の粒立ちに耳を傾けられるのも、ピアノトリオの利点だろう。楽曲によっては絶妙なタイミングでサックスが鳴り響くアレンジも美しい。ベース、ドラムで構築された骨格にピアノが与える豊かな表情。この基軸がブレないからこそ、時折挟まれる差し色としての楽器も輝く。そんな魅力の結晶とも呼べそうな最新シングル曲「産声」は話題のドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系)のオープニングテーマにもなった。11月18日には今年配信された楽曲を全て含むミニアルバム『Long for』をリリースし、シーンをさらに賑わせそうだ。

Omoinotake / 産声

 3ピースという編成はバンドを成す最小単位と呼ばれる。シンプルながらその可能性は限りなく、シンプルながら豊かな表現もできる驚きを伴う。最小の編成から最大の魅力、この飛躍は3ピースバンドしか持ち得ない人気の理由だろう。日常にライブが戻った時、ステージ上で輝く最小で最大の音楽を存分に味わいたいと思う。

■月の人
福岡在住の医療関係者。1994年の早生まれ。ポップカルチャーの摂取とその感想の熱弁が生き甲斐。noteを中心にライブレポートや作品レビューを書き連ねている。
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