『Cheer』インタビュー

真心ブラザーズに聞く、未曾有の事態にもブレない音楽への姿勢「世界がどう変わっても健康で、面白いと思えればやり続ける」

世界がどう変わっても健康で、面白いと思える気持ちがあればやり続ける

真心ブラザーズ

ーー「サンセットハンター」のスティールギターの響きも、空間的でいいですよね。

桜井:そうですね。あと「緑に水」という曲は特に、演奏陣の表現力をすごく感じた曲ですね。YO-KINGさんがスタジオで弾き語りをして、そこにみんなで乗っかる時に、「緑が萌えて、水がはじけて、光が飛んで」みたいなイメージのベーシックが自動的に出てきたんですよ。ボーカルはそのサウンドの中で自分の思いを吐露する、みたいな図式がポンとできあがって、「このバンドは成長しましたなあ」と思いましたね。大ちゃん(伊藤大地)は細野(晴臣)さんのところで、お手の物なリズムだとは思うんだけど、細野さんバンドでやっている渋さとは違うので。人が違えばこうなるんだ、という感じですね。

ーー今回の演奏陣は、おなじみのLow Down Roulettes(岡部晴彦、伊藤大地)が7曲で、「かっこいいだろ」「不良」はCRAZY BUFFALOES(グレートマエカワ、サンコンJr.)で、「ビギン!」はスカパラから茂木欣一、川上つよし、沖祐市の3人が参加しています。この内訳は?

桜井:去年のツアーで一緒にやった、EMOTIONAL ROCKERS(茂木欣一、柏原譲、沖祐市)も、グレートとサンコンも、どのバンドもすごく楽しくて。次はこの人たちと一緒に新作を録音して一区切りつけたいなという思いがあったので。「かっこいいだろ」とか、ロックンロールはグレートとサンコンでバシッと決めて、「ビギン!」はそれこそビギンというリズムの曲なので、スカパラチームでいつも通りやってくださいと。

ーー完璧ですね。

桜井:普通にスカパラの曲ですよね(笑)。サビのメロディを考えた時に、昭和の大作曲家の先生が使うようなスケールの、なかなか最近ないメロディですけど、このミッド昭和感がスカパラのサウンドにすごく合っていると思います。

ーーあと、やっぱり注目したいのは「炎」ですよ。ここであらためて大プッシュしておきましょう。リード曲だし、MVも面白いし、超キャッチーなメロディだし。

桜井:作っている時は、そこまでの気持ちはなかったんですけどね。ディスコロックみたいなことがやりたかったんですけど、これはけっこう歌詞に悩んだというか、まんじりともしない感じを歌いたかったんですよ。自粛中に、運動不足にならないように近所を散歩していた時に、マスクをしているのをいいことに、もごもご歌いながら歩いていて、〈迷子の目まい/塩漬けの愛〉が出てきた時に、「これだ!」と思いました。「そうそう、このイカれた感じがほしかったんだよ」と。リード曲にするつもりはなくて、もっと変態というか、ストレスたまっている人のどうかしちゃった発言みたいな感じだったんですよね。しかも歌うのは俺じゃなくてYO-KINGさんだから、無責任に言いたい放題作れるという自由さもあって、より自由になれた部分はありました。

ーー振り切っている感じ、ありますよね。

桜井:この曲はワンコーラスの中のパーツが多くて、A,B,C,Dまであるんですよ。長すぎるから、Cを8小節で済まそうと思ったんだけど、レコード会社のスタッフから「もったいないです」と。

ーーサビのメロディですよね。あれが8小節じゃ確かにもったいない。

桜井:Cは16小節ほしいと言われて、やってみたら、こっちのほうがいいやということになった。しかも今はイントロがない時代で、たぶんサブスク時代に対応して、イントロで飽きられちゃう前に核心に入る狙いがあるんだろうけど、この曲はどんなに頑張ってもイントロが20小節必要なんですよ(笑)。むしろリード曲としては、いきなり〈かっこいいだろ〉で始まる曲のほうがいいのでは? とも思いつつ、でもまあ、ここまで古くさいのも面白いかなと思って、リード曲にしました。もしも余力があったら、サビを口ずさんでほしいです。

ーーこれはみんな一発で覚えられるメロディだと思います。ぜひ。

桜井:挙句の果てに、後半に以上に長いギターソロもあるという、何から何まで時代に反した曲です(笑)。ギターソロ、40小節やっていますからね。

ーー最高です。ヒットチューンです。

桜井:キーボードの奥野(真哉)氏からも、レコーディングが終わったあとに「この曲はヒットの匂いがする」というLINEをもらいました。今はそもそもヒット曲って、年に何曲あるんだ? ということになっちゃったけど、ヒット曲という憧憬がこの曲の中には確かにある気はします。

ーーみなさんぜひチェックしてください。そして、このあとは、久々にお客さんを入れたライブをやりますか。

桜井:そうですね。ぼちぼち動かないと。

ーー11月1日、品川インターシティホール。来年になれば、徐々にライブも平常運転に戻れるというか、戻ってほしいというか。

桜井:戻れるといいですね。

ーーYO-KINGさん、最後に、今後の見通しについて何かあれば。

YO-KING:今後の見通しは……ピエール・カルダンは、98歳の今も毎日出勤して仕事をしているらしいので、そうなりたいです。出勤はしていないですけど(笑)。僕は多趣味な人間なんですけど、趣味として音楽をとらえた場合、すごく面白い趣味ですね。飽きない。曲を作ってライブをやって、それは飽きないことだから、世界がどう変わっても自分が健康で、面白いと思える気持ちがあればやり続けて、聴く人がいなくなったら静かに舞台から下がっていけばいいだけの話なので。周りの状況は状況として、把握はしておくけど、そこに左右されずにマイペースでやり続けることかな。

■リリース情報
『Cheer』
2020年10月14日(水)リリース
初回限定盤(CD+DVD+GOODS):¥5,000+税
通常盤:¥3,000+税
<収録内容(全形態共通)>
●参加ミュージシャン
1 パッチワーク
●岡部晴彦、伊藤大地、首藤晃志
2 炎
●岡部晴彦、伊藤大地、奥野真哉、うつみようこ
3 かっこいいだろ
●グレートマエカワ(FLOWER COMPANYZ)、サンコンJr.(ウルフルズ)
4 不良
●グレートマエカワ(FLOWER COMPANYZ)、サンコンJr.(ウルフルズ)
5 こんぷろマインズ
●岡部晴彦、伊藤大地
6 ビギン!
●川上つよし、茂木欣一、沖 祐市(東京スカパラダイスオーケストラ)
7 朝日の坂を
●岡部晴彦、伊藤大地
8 妄想力
●岡部晴彦、伊藤大地
9 緑に水
●岡部晴彦、伊藤大地、奥野真哉
10 サンセットハンター
●岡部晴彦、伊藤大地

<初回限定盤付属 DVD 収録内容>
1 Music Video
M1.炎
M2.天空パレード
2 Studio Live Movie
M1.妄想力
M2.パッチワーク
M3.炎
3 Talk & Acoustic Live『Out of Cheer』
※惜しくもアルバムに収録されなかった、それぞれの楽曲の弾き語り演奏と、
推しポイントを楽しくトーク

<初回限定盤付属 GOODS>
オリジナル・キャラクター「チア子さん」特製グッズ
<購入者特典プレゼント>
ニューアルバム『Cheer』を購入した場合、抽選で下記をプレゼント
※ A賞:貴方のためだけに贈るメンバーメッセージDVD(抽選で50名様)
※ B賞:特製“チア子さん”巾着(抽選で100名様)

■関連リンク
真心ブラザーズ公式HP
徳間ジャパン公式HP

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