あの、“ano”として再び音楽に向き合った理由 「本質の部分は曲を聴いてもらわないとわからない」
今一番強い気持ちは「期待を裏切っていきたい」
ーーテレビ朝日で始まった『あのちゃんねる』では、カエルをつかんだり、50メートル走をしたり、あのさんがまさに「バラエティ」をやっていますよね。地上波テレビで冠番組を持つのはどんな感覚ですか?
あの:心配(笑)。突然オファーが来て「なんで自分?」と思っていたんですけど、前に『出川とWHYガール』というテレ朝の番組に一回出させてもらって、その時の制作の人が「やりたい」って言ってくれていたみたいで。ファンの人の反響がすごく大きかったらしくて、「みんなの声が実際に形になっていって、自分の可能性を広げてもらえているんだな」って今回は特に感じて。ファンの子の声で自分が生きるためのお仕事をもらえたり、音楽活動ができるようになることに繋がる。本当にありがたいですね。
ーー「デリート」の歌詞の世界と『あのちゃんねる』の世界はだいぶ違いますよね。自分の中ではどうバランスを取っていますか?
あの:バラエティだけを見ているファンと、ぼくの言葉や曲、ライブが好きで、そこを見てくれているファンとで、けっこう分かれるパターンもあって。「あの」という人に対しての受け取り方が全然違くて面白い。ぼくも「バラエティはバラエティだ」という感覚で割り切って前からやっています。
ーー持たれるイメージがあまりにも違って、逆に生きづらくなったりしませんか?
あの:今までずっとバラエティとか関係なしに、生きづらいとは思って生きてきたし、「テレビに出しちゃダメな人間」とか言われたりバラエティのイメージで通りすがりの知らない人に暴言吐かれたこともあって息苦しさや生きづらさも感じていたけど、でもテレビとかを見てぼくを初めて知って、曲を聴いてくれたって人も沢山いるから救われてます。ぼくは割り切ってはいるけど、「本質の部分は曲を聴いてもらわないとわからないな」とも思う。
ーーテレビはテレビで割り切っている?
あの:割り切ってるけどありのままではいる。バラエティだからこうしようとかなくて。ちゃんとしゃべれるようにはしているけど……あれが限界(笑)。まだ始まったばかりですけど『あのちゃんねる』は、本当に自分のままやらせてもらえているバラエティです。
ーーそうなると、『あのちゃんねる』は周りがあのさんをうまく料理してくれて、音楽活動はあのさんが自分から全部出していく感じですね。
あの:音楽もテレビのお仕事もやっぱりグループでやっていた時よりも、ひとりの責任を感じる。いろんな人が関わってくれているんですけどね。でも、自分が自己中になれたらいいな。意外とグループの時はバランスを意識したりしちゃっていたんですよ。「ひとりで曲を作ったり、歌ってもいいんじゃないか」って声があったけど、両立できるほど器用にやれなくて。それが辞めたきっかけじゃないけど、辞めた今、できることをちゃんと、自分が思うままやれたらいいな、と思います。
ーーそんななか、「デリート」をソロの1曲目に選んだのはどうしてですか?
あの:他の曲よりメロディが明るいから。世界観は変わらないけど、今後はいろんな曲もやりたいし。でも、一回はこういうのを出したら、ファンの人にとっても、自分にとっても、ようやくちゃんとスタートする準備ができるのかな、って。まだスタート地点にも立っていないとぼくは感覚で思っているけど。
ーー「デリート」は、1番と2番でAメロの構造が違っていたりして複雑だけど、そこに表現したいことが詰まっている印象がありますね。
あの:そうですね。今ある曲の中では一番ストレートな感じ。タイトルは「デリート」だけどスタートみたいな曲。これからいろんなものが再生していったり、生まれていったりしたらいいな、って。
ーー「デリート」のMVでP-MODELのレコードが出ていましたが、ふだんからあの部屋で聴いているんですか?
あの:うん。置いてあったのをがっつり撮られちゃって、恥ずかしい(笑)。
ーー本当に自分の部屋で撮っている、と。
あの:そうなんですよ。大家さんに怒られなくてよかったです。けっこう暴れちゃってたから。
ーーふだんから家であんなに暴れることは?
あの:時と場合ではありますね。服とかぶん投げたり。虫とか出たら「ギャーッ!」って大泣きしちゃいます。
ーー虫は平気そうに見えるのに。
あの:今ここにいたりするのは平気です。食べてもいいです。
ーー食べなくていいです(笑)。
あの:でも、ひとりの部屋で出た時は本当に叫びます。ふだんはめちゃくちゃ静かです。
ーー部屋でひとりの時は何をしていますか?
あの:部屋はめっちゃ真っ暗です、目が悪いんですけど。映画見たり、ゲームをしたり、寝たり。最近は曲を作ったり、ギター弾いたり。
ーーそんな生活をしながら、今後はどんな自分を見せていきたいですか?
あの:その時その時で生まれた衝動的な感情を曲にして表現したい。新しいこともどんどんしていきたいから、期待を裏切っていきたい気持ちもある。それが今一番強い気持ち。
ーー突然あのさんに映画の主演のオファーが来たり、どこかから「選挙に出ませんか?」と言われたりしたらどうしますか?
あの:いいんならやる。「やらなそう」と思われているものをやりたい。
ーー拒否はしない?
あの:ふふふ、うん。今までずっと拒否してきたんですよ。ニートみたいな生活をしているのが一番いいと思っちゃって。でも、今回曲を出してみんなが喜んでくれたり、生きる希望が湧いてくれたり、人生の手本にしてくれる変わった人たちがぼくのファンの中にはいっぱいいるので(笑)。だから音楽はやりたいな。今までは専属モデルの話とかもあったけど全部断ってきちゃってて。写真集も出せたけど、それまでにも話はいろんなところからいっぱいあって。でも、鞄の中身やメイクの紹介込みの提案が多くて。でも、それはやりたくなくて、自分の好きな素敵な写真家さんと、写真だけの写真集を作りたいということでようやく出せた写真集でした。今回もそうやって『あのちゃんねる』を受けてみました。結果どうなるか分からないですけど(笑)。やっと曲を出せたので、いろんな仕事をやっていこうと思います。
ーーまさに「デリート」してリセットして始まる。あのさんの中では変わり続けることが一番大事?
あの:わかんない。だってその気持ちも変わっちゃうかもしれないじゃないですか。ぼく、けっこう気分屋だから。「めっちゃ一途だけど気分屋」みたいな感じで。根本的なものは何も変わらないんだけど、その時々で感情の起伏が激しいから、自分でも困ります(笑)。そこは何とかなるようにします、自分で。
■楽曲情報
「デリート」
作詞:あの
作編曲:TAKU INOUE
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