嵐の名曲は斬新なダンスとともにあったーーフォーメーションの妙や表現力など、5人の飽くなき“こだわり”

 フォーメーションの妙を魅せている曲の一つには、デジタル解禁時にも配信された「Monster」がある。同楽曲が人気の理由には、リーダーの大野智が冒頭で聴かせる美声はもちろん、同部分で他の4人による独創的なダンスとの関連性がある。3拍子になる間奏では華麗な動きを見せるなど、全体的に表現力に富んだダンスパフォーマンスとそれらのインパクトの強さこそ、同楽曲が長年愛されてきた理由とも言えるだろう。また、「Endless Game」のダンスも高い人気を誇る。AメロやBメロ、サビになる毎に曲調もガラッと変わる変則的な同楽曲では、まるで歯車のような一人ひとりの動きが、サビでの一体感へと繋がっていく。独特な曲の雰囲気にあわせるため、ダンスの構成に工夫が加わったことが、結果として高レベルなパフォーマンスを実現させているのだ。

嵐 - Monster [Official Live Video]

 また、嵐はヘッドセットでのパフォーマンスも魅力的だ。激しいダンスとクールさを組み合わせた「truth」は、それまでの明るく元気な嵐のイメージを一変させた。ストリングスとピアノの高貴な雰囲気が印象的な同楽曲は、緊迫した場面が多い。その理由は、全体的に華麗なダンスを魅せている一方で、サビでの〈心は謎めいて〉という部分では少しゆったりとした動きで四角を描くなど、印象的かつキレも魅せるダンスの緩急の多さだ。また、後半への盛り上がりに向け、クールさとしなやかさを使い分けており、表現力という部分に注視したパフォーマンスであると感じた。

嵐 - truth [Official Live Video]

 「Face Down」は、エレクトロニックなトラックからも、スタイリッシュさが目立つ楽曲で、メンバーの息のあった動きやカウントをズラしたダンスをはじめとするキレのあるパフォーマンスがメイン。しかし、フォーメーション移動での足の動きの滑らかさにも目を見張るものがあり、そういった部分での無駄のないスマートさによって楽曲の世界観を支えているのだろう。

嵐 - Face Down

 嵐イズムを生んでいたものとは、多様な楽曲に対応できる5人のパフォーマンス力であったと言える。ポップなイメージが強い嵐は、ファンも真似しやすい振り付けや、スタンドマイクを用いたパフォーマンスなど見せ方のレパートリーを数多く持ち合わせているが、同じ振り付けを踊っているだけでも5人で1つの作品を作り上げている、という印象が強い。その上で、クールな魅力をアピールする場面では、ダンススキルを存分に発揮してきた。嵐が様々なダンスパフォーマンスを見せてきたことは、結果として次の世代への橋渡しとなった、という意味もあったかもしれない。その影響は、これからの日本のエンターテインメントにも活かされていく財産となったはずだ。

■momotoxic
ブロガー。自称”楽曲派”。Twitter:@momotoxic1006

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