「Fly to NEW WORLD」インタビュー

ミライアカリ×斎藤滋×神田ジョン 鼎談で明かす音楽活動の可能性と第2章のスタート 「みんなと一緒に夢を叶えたい」

 VTuberのミライアカリが、新レーベル<GOOM STUDIO>第1弾アーティストとして、9月30日に発表する新曲「Fly to NEW WORLD」で本格的な音楽活動をスタートさせる。作曲・編曲はPENGUIN RESEARCHのギタリストとしても活動する神田ジョン、作詞は『アイドルマスター』シリーズなど数多くのキャラクターソングを手がける安藤紗々、そして音楽プロデュースは『涼宮ハルヒの憂鬱』や『ラブライブ!』などの人気アニメシリーズを数多く世に送り出した斎藤滋が担当する。「今、世界的に大変なことがたくさんある。アカリのことを見て、少しでも明るい気持ちになってほしい」という彼女の思いを受け、「Fly to NEW WORLD」は、ミライアカリの第2章を高らかに歌いあげると同時に、新時代到来への期待に胸が躍るような、中毒性も抜群の超エモーショナルな楽曲に仕上がった。ミライアカリのプロジェクトが示す未来とは? そしてVTuberの可能性とは? ミライアカリ、斎藤滋、神田ジョンによる鼎談で明らかにしていく。(榑林史章)

ちょっと大人っぽいのが魅力

ーーまず、アカリさんにお伺いします。今回メジャーデビューすることについて、どんなお気持ちですか?

ミライアカリ:メジャーデビューできるなんて夢にも思っていなかったので、とても嬉しくてワクワクしています! これも、いつも応援してくださっているみなさんのおかげですし、本当に感謝しています。せっかくいただいたチャンスなので、音楽活動を通じていつもとは少し違ったアカリの一面やメッセージを、たくさんの人に届けたいと思っています。

ーー斎藤さんと神田さんは、実際にアカリさんと会ってどんな印象でしたか?

神田:僕はレコーディングで2回会って以来ですけど、その時はすごくよく笑う明るい人だなって。

斎藤:しゃべりが上手で、人の懐にスッと入っていける感じですよね。

神田:それができる人ってなかなかいないですよ。僕は人の懐に入るのが苦手だから、それができる人は尊敬します。

ミライアカリ:そんなそんな、恐縮です(笑)。でも、そう言っていただけて嬉しいです!

ーーアカリさんは、神田さんや斎藤さんと会って、どんな印象でしたか?

ミライアカリ:最初にお会いした時は私も少し緊張していたのですが、しげちゃん(斎藤)、ジョンくん(神田)のお2人はとても話しやすくって、すぐに緊張がとけました。レコーディングも、本当に楽しくさせていただきました。

ーー神田さんは、もともとVTuberに興味を持っていたそうですね。

神田:はい。普通にファンだったと言うか。VTuberの黎明期から、キズナアイさんやアカリちゃんはじめとした、四天王と呼ばれるみなさんの動画をめちゃめちゃ見ていて。キズナアイさんの写真集を買って、バンド内で回し見していたくらい好きだったんです。その当時はいろんなインタビューで、「次はVTuberがクるぞ」って言っていたくらいで。

ミライアカリ:え! そうだったんですか!? 確かにアイちゃんの写真集は私も見ましたけど、とても素敵でしたよね。でも、まさかジョンくんがVTuberにお詳しかったなんて、初めて知ったのでびっくりです!

ーー最近はVTuberの音楽活動が増えていますが、VTuberのアーティストとしての可能性は、どんな風に考えていますか?

斎藤:技術があればどんなビジュアルでも表現できるわけで、視覚的な要素の可能性は無限大にあります。音楽性に関しては、VTuberでも声優さんでも普通のシンガーでも、考え方の根っこは変わらないと思っているので、VTuberだからこうだとか特別なプロデュースはしないようにしようと思っています。

ーー斎藤さんは、数多くのキャラクターコンテンツ手がけてきた経験をお持ちで。多くのアニメコンテンツでは、絵=IPビジネス、声優=アーティストビジネスという2つの側面があって、VTuberはその2つが統合されているわけですが、その部分では難しいのかやりやすいのか、どんな考えですか?

斎藤:すごく難しい質問で、未だに答えは見いだせていません。確かにアニメーションのキャラクターであれば、監督やシナリオライターが作るキャラクターがいて、声を当てる声優さんが別にいて、完全に分かれていますよね。でもVTuberの場合、声と人格は本人ですから、キャラクターソングを作ることとは明確に違います。僕の理解としては、先ほどお話したことと同じで、いちアーティストとして扱うのが正解なんじゃないか、と。VTuberという存在が、本人であると同時に、IPコンテンツでもある。一人の人間としてしっかり向き合う必要があると思います。そこには繊細なプロデュースバランスが求められるので、その点では、非常に難易度が高いと思っています。

斎藤滋

神田:でも僕がなぜこんなにもVTuberに惹かれたのかと言うと、確かにVTuberは新しくて革新的なコンテンツではあるけど、ネットゲームの中ではいにしえから存在するものだからなんです。つまりアバターです。自分の分身として、自分じゃないものがいる。アバターを通して嘘を付くこともできれば本音を言うこともできて、それはその人の自由で、その進化版がVTuberだと思っています。そこに感じる音楽的な魅力や可能性と言うのは、ライブをやる場合にVRやARを使って際限なく自由にできる。歌という生のものに対して、人間が想像し得るだけの空間をバーチャルで作り上げられる。もうやっている人もたくさんいますけど、そこにはめちゃめちゃ可能性を感じていますね。

神田ジョン

ーーその上でアカリさんの音楽プロジェクトに対しては、どういうテーマやコンセプトを考えたのでしょうか?

斎藤:音楽性で言うと、VTuberだからEDMやデジタルサウンドに行きたくなる自分もいますけど、それはちょっと待てよ、と。あくまでもアカリちゃんという「人」にとって何が必要かを考え、そこから導き出される音楽が良いと思いました。今回で言うと、とにかくメロディを突き詰めていこうというのが一つあります。サウンドに関しては、あえて有機的なバンド感が感じられるものが良いなと思いました。それによって、アカリちゃんの人間臭さが引き出せたら良いなと思って。それを神田くんにも伝えて、作ってもらったんです。

ーーアカリさんの人間臭さは、どんなところに感じますか?

神田:僕が今回のお話をいただく以前に良いなと思っていたのは、大人っぽさですね。配信の内容はけっこうハチャメチャ系ではあるんですけど、メリハリのあるプロポーションとか(笑)、大人っぽさは魅力の一つだなと思っていて。だからバカ明るいよりは、ちょっと憂いとか切なさとか、そういったものをはらんだ曲を作るべきだなと思ったんです。

ミライアカリ:大人っぽいだなんて、なかなか言われないので……ありがとうございます(照)! でもアカリ自身、今回ちょっと大人っぽい、格好いいオリジナル楽曲にチャレンジできたので、自分でも新しい一面に気づけたような気がします!

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