BTS、“1人の人間として”の思いに迫るドキュメンタリー メンバーそれぞれの自我や信念が明らかに

 BTSのドキュメンタリー映画『BREAK THE SILENCE: THE MOVIE』が9月10日より全国ロードショーとなっている。

 2018年の『Burn the Stage:the Movie』、2019年の『BRING THE SOUL:THE MOVIE』に続く今作。ビルボードやグラミーなどで世界的評価を受けてきた彼らのワールドスタジアムツアー『LOVE YOURSELF: SPEAK YOURSELF』に密着したドキュメンタリー映画で、全10都市を回った彼らの公演の舞台裏が描かれている。

 3作目となる今回の副題は”PERSONA”。彼らの6枚目のミニアルバム『MAP OF THE SOUL:PERSONA』、また同アルバム収録曲「Intro:Persona」としても登場した言葉でもある。

 PERSONA(ペルソナ)とは、私たち人間が持ち合わせている様々な「顔」のこと。心理学における概念として知られ、BTSの作品にも関わりを見せるカール・グスタフ・ユングが提唱したものである。ペルソナはもともと古典劇で役者がつけていた仮面を指す言葉であったが、人々の持つ様々な面を仮面に見立ててユングがこう呼んだのが現在の概念の始まりになった。

 「Intro:Persona」は、〈나는 누구인가 평생 물어 온 질문(「俺は誰なのか?」一生問い続けてきた質問)〉で始まり、曲中でも何度も〈Who the hell am l ?(俺は一体誰なのか)〉と自問自答が繰り返されるのである。

 この副題の表す通り、今作では初めから終わりまで一貫して、彼らの中に存在する“世界的アーティストであるBTSのメンバー”と“韓国に生まれた20代の青年”の2つの面を意識させられるだろう。ステージ上で“アイドル”として輝く彼らが舞台を降りたとき、1人の人間として何を考えているのか。映画が上映されている約90分の間、私たちは彼らの秘めた思いに耳を傾ける。

 冒頭で印象的だったのはBTSメンバー7人による一人ひとりの挨拶。彼らは「BTSの◯◯/本名は◯◯です」と活動名と本名で自己紹介をしたことだ。この自己紹介の指示に戸惑うメンバーもいれば、すんなりと挨拶をこなすメンバーもいた。

 そして、それぞれが自我について考えていた。BTSのメンバーとしてあるべき姿と、もともと存在する“自分”について。

 彼らの中で共通していたのはしっかりと自分の2つの面を認識しているということだった。JUNGKOOKはこのことに関して、デビューした時と現在で違う考えを持っているようだ。心も身体も成長する時期に、人気を獲得するにつれて重くなっていく周囲からの期待やプレッシャーと向き合いながら過ごすこととなったJUNGKOOK。彼はその過程で“自我”についても向き合いつつ自分なりの考えを得ていったのだろう。

JUNGKOOK

 また、最年長のJINは「JINとキム・ソクジンは分離する」と答えていた。その心のうちにはファンに対する愛が込められており、ファンを大切にし、ファンを想うが故に自分のあり方を真剣に考えている姿が印象的だった。

JIN

 V、SUGAはそれぞれ自分の理想とするVの姿、SUGAの姿があるようだった。その“理想”はもちろん同じではなかったが、ファンに見せたい姿やしてあげたいことがたくさんあると話していた。2人からは“楽しさ”を大切にするという共通点も伺えると同時に、「Vとして、そしてキム・テヒョンとしての存在をどちらも大切にする姿」「SUGAとしてあるべき形を貪欲に追求し続ける姿」が人前に立つ自覚を持った”プロ”であるということを改めて感じさせる。

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