忌野清志郎の音楽はなぜ今も時代に刺さるのか デビュー50周年を機に、ロックで“メッセージ”を伝え続けた軌跡を辿る

時代的な影響と結びつきを感じるアニメーション表現

 「AROUND THE CORNER 曲がり角のところで」(1987年)のミュージックビデオは、今観ても十分楽しい作品としてオススメしたい。作家風の清志郎が、「んっ?」という表情で机の上にある用紙のコマ割に目をおとす。そのコマのなかで、ライブをしているミュージシャンを見つけて釘付けになる。アニメーションを織り交ぜたユニークな作品だ。

 このアニメーションは、ロトスコープという技法が使われている。近年は映画『音楽』(2020年)、『惡の華』(2019年)、『花とアリス殺人事件』(2015年)などでも活用された。実写映像をもとにアニメを制作するやり方だ。ただ「AROUND THE CORNER 曲がり角のところで」は、ロトスコープによるアニメーションから、実写の清志郎の姿へと“逆戻り”。アニメをもとにして本物の清志郎を描いたようにみせる表現がまずおもしろい。

忌野清志郎 – AROUND THE CORNER 曲がり角のところで

 同作は時期的に、a-ha「Take On Me」(1985年)のミュージックビデオのロトスコープ表現に、大なり小なりの感化があったのではと推測している。また1988年には、レナウン I.N.EXPRESS(奇しくも2020年に経営破綻)のCMがロトスコープで作られた。THE BLUE HEARTSの曲「人にやさしく」にのせて3人のキャラクターがダンスをしているものだ。そういえば、THE BLUE HEARTSの甲本ヒロトは清志郎をリスペクトしており、仲が深い。ほぼ同時期の作品表現として、時代的な影響や結びつきを感じさせる。

a-ha – Take On Me (Official 4K Music Video)

 あと、清志郎はかつて漫画家に憧れ、近所にあったツチノコプロに持ち込みなどをおこなっていた。手塚治虫の本を買って勉強するなど、漫画家を目指していたが、ギターを手にしたことで人生が変わったという。ミュージックビデオに登場する作家風の清志郎は、実は漫画家の設定ではないか(実際の役設定をご存知の方は逆に教えて欲しい!)。しかし、ギターを持って楽しそうに歌う ミュージシャンの様子を見てしまったために、その後の人生が変わる……という男の姿のように感じた。漫画家からミュージシャンという方向へ“角を曲がった”、清志郎自身のようである。

今もし清志郎が生きていたら、という夢想の答え

 そのほかにも印象深いミュージックビデオが目白押しだ。「世界中の人に自慢したいよ」(1996年)は6分近く、正面から清志郎だけを撮り続けたもの。映像作品においてこれだけの時間、ひとりの人物だけで画面を持たせるのは、被写体に余程の存在感の強さがないとできない。実直にメッセージを伝えてきた、清志郎らしさがあふれる内容になっている。

忌野清志郎 – 世界中の人に自慢したいよ

 LOVE JETS「UFO神社」(2003年)は、人気玩具をモデルにしたキャラクターや大型玩具店風のロゴが出てきたり、和と宇宙の融合だったり、いろんなマッシュアップがあり、ごちゃまぜな世界のおもしろさが感じられる。遺作「Oh! RADIO」(2009年)は、終盤の手書きメッセージにグッとくる。

LOVE JETS – UFO神社
忌野清志郎 – Oh! RADIO

 清志郎は、歌うことで自分の意思を表明していた。新型コロナの状況、政治や社会が抱える問題。2020年、世界はいろんなことに直面している。「もし清志郎が生きていたらどんなことを歌うだろうか」と夢想する人が多い。新しい曲ではないけど、でもこの17曲がその夢想の答えの一つになっている。

 清志郎が亡くなって11年。かつて、デビュー35周年時にRHYMESTERとコラボした「雨上がりの夜空に 35」(2005年)で、清志郎が「35周年なんてアッという間だぜ、よくわかんねーけどよ!」と歌ったように、やっぱり時間はあっという間に過ぎていく。でも、こういう時代だからこそ、清志郎の歌とメッセージが今まで以上に「よくわかる」気がする。清志郎の曲を聴いたことがないという人は、ぜひミュージックビデオを鑑賞してみてほしい。

■田辺ユウキ
大阪を拠点に、情報誌&サイト編集者を経て2010年にライターとして独立。映画・映像評論を中心にテレビ、アイドル、書籍、スポーツなど地上から地下まで広く考察。バンタン大阪校の映像論講師も担当。Twitter

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