『やまとなでしこ』主題歌で描かれた恋の衝動とたしかな愛 MISIA「Everything」不朽のラブソングとしての魅力

アーティスト・MISIAの魅力

 1998年、ラジオから流れる「つつみ込むように…」に筆者は衝撃を受けた。同じ衝撃に覚えがある人は、きっと少なくないはずだ。

 イントロでのホイッスルボイス。5オクターブを誇る音域。なにより、これほどスタイリッシュな音楽を、脅威のリズム感をもってのびのびと歌いながらも「歌詞が日本語であること」に驚いた(デビュー曲の歌詞についてはMISIAによるものではないが)。

 「日本人離れした」という枕詞を用いられることが多いMISIAだが、デビュー当時から現在に至るまで「日本語で伝えること」を大切にしているアーティストだ。歌詞カードを読まずとも、きちんと耳に、心に言葉が伝わるよう、大事にメロディに乗せて歌う。MISIAが歌い続けるのはR&Bではなく、こだわりの“J-R&B”だ。

 「Everything」の歌詞は、仮歌を聞いたMISIAが翌日には書き上げたという。フレーズのいくつかを拾い上げてみれば、ドラマの内容とリンクする部分はもちろんある。しかし、ひとつのラブストーリーを歌で表現したというよりは、さまざまな愛の形を紡ぎ合わせた歌詞という印象を受ける。歌詞をどこで切り取っても、たしかな“愛の歌”……まさにラブソングなのだ。

 だからこそ多くの人の心を打つ。たとえば桜子の気持ちになってみても、欧介の気持ちになってみても、胸に刺さるフレーズがある。恋愛であるだけでなく、人間愛でさえある。

 MISIAは、デビュー20周年を迎えた際のインタビューにおいて、自身の数々のヒット曲について振り返り「民謡のよう」と表現した。「歌い手も、誰が曲を作ったのかもわからなくなっても、その曲が存在していくような楽曲」、普遍的なものを作ることができるよろこびを、シンガーとして、作り手として語っていた(参考:Yahoo!ニュース)。

 民謡や、それこそ万葉時代の和歌のような、普遍的に人々が共感する言葉やメロディ。MISIAはそうした作品を紡ぐことができる、稀有なアーティストだ。

 「Everything」もまさにそう。時代が令和を迎えても愛され続け、当時生まれていなかった人もこの曲を口ずさむ。誰もが歌詞に心を重ね、癒され、ときに切なくなる。

 いつか自分がいなくなった世界、果てしなく遠い未来にも永遠に響き渡るだろう至高のラブソング。「Everything」と同じ時代にめぐり合えた奇跡を、心から幸せだと思う。

■新 亜希子
アラサー&未経験でライターに転身した元医療従事者。音楽・映画メディアを中心に、インタビュー記事・コラムを執筆。
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