SKY-HIが“今できること”を凝縮したステージ 8年分のメッセージ届けた無観客ライブ『We Still In The LAB』を振り返る

SKY-HI、無観客ライブを振り返る

 「俺たちが歩いた世代の話をしよう」という言葉に導かれ、KEN THE 390が登場し、日本のヒップホップの黎明期をテーマにした「What's Generation」を披露。さらにTARO SOULも加わり、(ソーシャルディスタンスを保ちながら)3人で「PONR」、そしてSKY-HIが鍵盤を演奏する「Critical Point」も。8年前のワンマンにも参加したKEN THE 390、TARO SOULとともに思い出を繰り広げた後、「Lego!」(KEN THE 390)がはじまった瞬間、ケーキが運ばれ“ハッピーバースデー”(この日はKEN THE 390の誕生日)のサプライズ。ともに日本のヒップホップを盛り上げてきた3人の、気の置けない関係性が感じられる場面だった。

 この後は、再び一人のステージへ。「生きるとか死ぬとか、マジで身近になる瞬間だったじゃん。ネガティブから目を逸らさないのは大事だけど、同時に“楽しむことは罪じゃない”と言っていきたい」というコメントから、「死んじゃった友達の歌を歌います」と鍵盤の弾き語りで「LUCE」を披露。続けて「そこにいた」「アイリスライト2020」とバラードを歌い上げ、音楽性の広さ、歌の表現力の深さを見せつける。

 「家にいたからこそ出来たこともあったかもな。SUPER FLYERS、愛してるぜ!」というコールに導かれた「#Homesession」では、カメラに向かって〈否定は何も産まない/批判は社会を育てる/違いがわかるかい?〉というラインを響かせ、リスナーの思考を促す。ここで過去のライブ映像を挟み、「カミツレベルベット2020」(ファン投票で1位になった同曲を、新たにボーカルレコーディング、MIX&マスタリングを行なった新バージョン)へ。正面に“NO HATE”、背中に“MORE LOVE”と書かれたオリジナルTシャツに着替えたSKY-HIは、生配信ライブを作り上げたスタッフへの感謝を口にした後、「画面の向こうで構わないぜ、気持ちを躍らせろ!」と宣言し、「Double Down」「Snatchaway」「Seaside Bound」とライブアンセムを連発。会場中を走り回りながら、高揚感に溢れたステージを繰り広げた。

 「リアクションが見えることやります。投票でやる曲を決めます!」と、「Blue Monday」「Bitter Dream」「New Verse」「Over the Moon」の4曲で視聴者の生投票を行い、34.4%の支持を集めた「Blue Monday」を披露し、ライブはクライマックスに向かう。「Thanks To You」「I Think, I Sing, I Say feat. Reddy」「Marble」と強いメッセージ性と華やかなポップネスを共存させた楽曲によって、SKY-HIにしか体現できない音楽観を提示していく。

 「8年間アッという間に過ぎて。人生は瞬間の連続だけど、いまの自分は世界で一番幸せな人間の一人。こんな状況でね、本当にありがとう」と改めて感謝の言葉を述べた後、いまの世界を覆う差別の問題にも言及し、「当事者ではないけど、部外者ではない。みんなで考えていきましょう」「世の中の問題がこれだけあると息苦しいけど、自分のことを愛してほしい」「そのための息抜き、心を育てる部分、愛を与えたり交歓する、そのためにエンターテインメントはそのためにあると思ってます」と言葉を重ね、ライブは終了した。

 このライブを通し、“これまで積み重ねてきたこと”“今できること”を濃密かつエッジ—に示したSKY-HI。この日、告知されたように7月19日にも生配信ライブが行われ、9月23日にはベストアルバム『SKY-HI’s THE BEST』をリリース。すべてのエンターテインメントが甚大な影響を受けている現状において、SKY-HIの動きは本当に刺激的だし、一つの大きな希望だと思う。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

SKY-HI オフィシャルサイト

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