miletの歌声が現代を生きる人々の胸にふさわしく響く 1stアルバム『eyes』を色々な“視点”で聴く

 Perfumeや星野源、サカナクションなどのミュージックビデオを手がける映像ディレクターの関和亮が監督を務めた竹内結子主演のドラマ『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』(フジテレビ系)のOPテーマ「inside you」で鮮烈なデビューを飾り、この1年間で5枚ものEPをリリースしてきたシンガーソングライターのmiletが、待望の1stフルアルバム『eyes』をリリースした。本作はドラマ『偽装不倫』(日本テレビ系)の主題歌としてヒットした「us」や、日本を代表するアニメーション監督である原恵一の最新作『バースデー・ワンダーランド』の挿入歌「Wonderland」、人気アニメ『ヴィンランド・サガ』の2ndクールのEDテーマ「Drown」、そして、最新EPに収録されたゲーム原作のアニメ『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』のEDテーマ「Prover」など、数々の映像作品とのコラボレーション楽曲を含む全18曲を収録した、1stにしてベストアルバムともいえる大作となっている。

milet 1st full album『eyes』クロスフェード(6.3 on sale)

 新人ながらもこれほど多くの映像クリエイターから求められるのは、それぞれの作品の世界観やメッセージ性を汲み取ったアプローチが的確であることも挙げられるが、なんと言っても、彼女のダークで深みのある歌声の魅力に尽きるだろう。デビュー当時、アデルやロード、シーアやラナ・デル・レイらと比較されることが多かった彼女は、ローやミドルの音域をしっかりと響かせ、高音域では息声も効果的に使うことで、日本のJ-POPシーンにはあまり見当たらない独特のメランコリックなムードや優美な暗闇を作り出している。彼女が口を開き、華奢な身体から低い声を吐き出すと、一瞬にして目の前の風景が変わるのだ。深い深い海の底へと潜り込み、水面に映る小さくも眩しい光を見上げる。やがてその歌声は徐々にスケールを広げていき、ダイナミックな展開と共に空高く飛翔していく。街の中、土の匂いがする強い風、凍えそうな冬の山、海の上に浮かぶ船。あのダークな歌声が映像を連れてくるのだ。ただ、ダークと言っても、暗いとか闇とか影という意味だけではない。表面からは決して見えない、隠れている部分、心の奥底の思いを歌っているという意味でのダークであり、自分の心の内側の見つめ方、その“目”=“eyes”こそが最大の魅力なのだ。

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