三浦透子、森七菜、上白石萌音、adieu=上白石萌歌……表現力を歌唱にも活かす女性シンガー
ドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)の大ヒットも記憶に新しい上白石萌音は、初主演長編映画がミュージカル作品『舞妓はレディ』であることからも歌という表現が根付いた役者だ。2016年のカバーアルバム『chouchou』でのCDデビュー以降、精力的に活動している。
彼女の柔らかくしなる歌声は、メロディを華やかに彩る。バラードはもちろんのこと、アッパーな曲でさえどこか温かな質感を与え、安らぎをくれるのだ。楽曲によっては自身で作詞も手掛け、飾らない言葉で心象を綴るなどソングライターとしての自己表現も手にしている。
今年2月リリースの「From The Seeds」でGLIM SPANKYが書き下ろしたヘヴィなロックナンバーをタフに歌いあげたかと思えば、5月リリースの「夜明けをくちずさめたら」では慈愛に満ちた歌声を届ける。彼女がこれまで演じてきたキャラクターに通ずるような、おっとりした部分と芯の強さが共存するボーカルはどんどん磨きがかっている。
また、妹である上白石萌歌も2017年から“adieu“名義で音楽活動を行っている。快活でタフな女性を演じることが多い彼女だが、歌声はやや憂いを含んでいるのが印象的だ。
2019年11月にリリースされたEP『adieu1』は全編通して切なさを胸に残す。小袋成彬とYaffleが作詞作曲した「強がり」ではビートを乗りこなしながらメロウなムードに寄り添い、塩入冬湖(FINLANDS)が提供した「よるのあと」では徐々に雄大に変わるアレンジに呼応するように歌の表情を広げていく。翳りのあるボーカルは神聖な雰囲気もあるがどこか親しみやすい。“永遠のお別れ”を意味するアーティストネームにも象徴的なように、穏やかな寂寥感が漂う不思議な聴き心地を纏った1作だ。
上白石姉妹は4月5日にインスタライブを行ったことも話題に。同居している姉妹ならではの試みだが、そこで披露されたスピッツ「チェリー」のアカペラカバーは特別な魅力があった。2人の異なる声質が混ざり合って織り成すハーモニーは逸品であり、今後はアーティストとしての共演や楽曲の共作なども期待したくなる。
歌と芝居、それぞれの表現は互いに還元し合い、幸福な循環を生む。その相乗効果は彼女たちのアウトプットをより良いものにし続けている。これからのエンタメ/カルチャーシーンの一端を担うであろう4人は、多彩な可能性と共に輝いていくはずだ。
■月の人
福岡在住の医療関係者。1994年の早生まれ。ポップカルチャーの摂取とその感想の熱弁が生き甲斐。noteを中心にライブレポートや作品レビューを書き連ねている。
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