振付から紐解くJ-POPの現在地 第8回:CRE8BOY(前編)

日向坂46ら手がける振付ユニット CRE8BOYに聞く、大人数への作品創作で意識するポイント

 J-POPシーンの最前線で活躍する振付師にスポットを当て、そのルーツや振付の矜持をインタビューで紐解いていく連載「振付から紐解くJ-POPの現在地」。第8回となる今回は、CRE8BOYに取材した。“振付ユニット”として活動する彼らのルーツやスタートを振り返るとともに、前編となる本稿では、CMやミュージックビデオの振付・ポージングなど、あらゆる分野において「遊び心を振付ける」のポリシーのもと、思わず真似したくなる、ひと目みるだけで忘れられない演出・振付を行う彼らに、AKB48グループや坂道シリーズなど大人数の振付を手がける際に意識するポイントなどを語ってもらった。(編集部)

■連載「振付から紐解くJ-POPの現在地」インデックス
第1回:s**tkingz
第2回:TAKAHIRO 前編後編
第3回:辻本知彦
第4回:YOSHIE
第5回:リア・キム
第6回:akane
第7回:竹中夏海 前編後編

振付ユニットの強み「必然的にいろんなジャンルを振付に盛り込める」

――CRE8BOYさんは何人組なんですか?

山川:8人ぐらいいますかね。CRE8だけに。

――CRE8の8は8人の8。

山川:最初はそうじゃなかったんですけど(笑)、だいたい8人くらいがバランスがいいなということで。

山川氏

――ダンス的なルーツはみなさんバラバラですか?

山川:新体操やチアダンス、バトン、ミュージカル的なショーダンスをやっていた人もいて。必然的にいろんなジャンルを振付に盛り込めるので、ありがたいですね。

――お二人がダンスを始められたきっかけというと……?

秋元:僕は中学・高校とずっとバスケをやっていたんですが、高3の時に高校生ダンス選手権のような深夜番組をやっているのをたまたま見て、すごくカッコいいなと思ったんです。大学生になってから「ちょっとダンスやってみようかな」と思ってダンスサークルに入って、そこから沼にハマりました。

山川:僕は中学生ぐらいの時にダンスをやっている友達の発表会を見に行ったことがあって。その時にすごくカッコいいチームを見かけて「自分もあんな作品を作りたい」と思ったのが最初ですね。友達に誘われたこともあり、そのままなし崩し的にズブズブとハマっていきました。

――ご自身が踊る上で好きなジャンルはありますか?

秋元:それぞれの気持ちよさがあるので、基本的に踊るのは何でも好きですね。

秋元氏

山川:ダンスはだいたいどのジャンルでも好きなんですが、僕は基本的に“整列しているもの”が大好きです。ダンスというよりは日本体育大学の「集団行動」とかマスゲーム、あとヨーロッパで部隊の方が行進するパフォーマンスを見てると「ごちそうさまです!」と思います(笑)。

【集団行動】日本体育大学 最新演技

――そういった趣味趣向も振付の特徴に関わってきそうですよね。現状、日向坂46や乃木坂46といった大人数のグループの振付をされるケースも多いですよね。

山川:うちは大人数のグループの振付をするときの立ち位置決めはかなり細かいほうだと思います。だいたい90㎝間隔で舞台上に番号が貼ってあるんですけれども、普通はそれを90cmかその半分の45cmで区切って立ち位置を決めるんです。僕らはその1マスに対して1/4とか1/5で区切って、小数点以下でメンバーを並べることもあります。自分たちでやっていて「細かいね」という話はよくしますね。

――お二人ともダンス歴があって振付自体にも興味があったと思うんですが、チームで振付業界に参戦しようと思ったきっかけは?

山川:僕自身がダンスを始めた頃から振付に興味があったというのもありますけど、もともと一緒のチームで踊っていた彼(秋元)から誘われて……。

秋元:今でこそ若い世代のダンサーや振付師がSNSきっかけで仕事をもらったり、海外にワークショップに行ったりといったケースが増えてきましたが、当時のダンス業界は縦の繋がりがないと仕事をもらうことが難しかったので、ダンスにかかわり続けていく上で先の見えなさを感じていました。それでいろんな企業の方々やCMの制作会社と自発的に繋がって、仕事をもらえるようにしていかなければと考えたのが最初ですね。振付自体を突き詰めてやってみたい気持ちももちろんありました。

浮遊boy

――振付師として正式に活動を始めた最初の頃の仕事というと、CMがメインですか?

山川:そうですね。企業関係の作品だと、一番最初に手掛けたのはPepper(感情を認識する人型ロボット)ですかね。

――それもすごいですよね。相手が人間じゃなかったという(笑)。どなたかが踊った動きがプログラムされるという流れでしょうか?

秋元:そうですね。まずPepperがどのくらい動けるかというのを打ち合わせで確認させていただいて、これができない、これが得意という情報を反映する形で振りを作って、プログラミングしていただいて。実際に動いている様子を見て細かいところを修正していくという流れでしたね。

山川:その前後にMAXさんが振付を公募されていたことがあって、そこに作品を出したのがきっかけで「#SELFIE ~ONNA Now~」(2015年)の振付をやらせていただいたのが、アーティストの方との最初のお仕事です。そこから同じ事務所のフェアリーズなど、アイドル方面に繋がっていきました。

¥MAX / #SELFIE 〜ONNA Now〜 -Music Video- #SELFIE_ONNA_Now #MAX

――「#SELFIE」はヴォーグ的な手の振りやド派手なMVも含めてかなりインパクトがあった作品です。これまで膨大な数の振付を手掛けてこられた中でも、世間的には日向坂46や乃木坂46の坂道シリーズやAKB48グループの振付の印象が強いと思いますが、秋元康さんプロデュース作品の場合は、どういうふうに振付を進めることが多いですか。

秋元:制作の流れでMV撮影が先になることも多いので、MVの雰囲気やイメージに近づけた形の振付になる場合と、「この曲はこういうテーマだから、こういう感じの振りをお願いしたい」と具体的なオーダーがある場合があります。

――振り入れの直前に完成した歌詞が上がってきた場合は、それに合わせて振りのイメージを修正していくんですか?

山川:歌詞を事前にいただいたら、できるだけその段階で振りを歌詞とのイメージが合うように軌道修正していきますし、歌詞が完成していなければ振り入れの直前にとにかく頑張ります。まず音を聴きながら「なぜ今回、この曲が選ばれたのかな?」というのを考えて、曲がどういうビートを刻んでいるのか、どこにコーラスを入れているのかなど特徴をチェックしつつ振りを作っていきます。具体的に例を挙げると、AKB48の「失恋、ありがとう」なら、デモをいただいた段階でバックコーラスが入っていたんですが、そのコーラスがかなりビートルズ的な印象だったので「今回は60’s~70’sっぽくしようとしているのかな」というのを意識しながら、そのニュアンスを振りにも取り入れたりしています。

【MV full】失恋、ありがとう / AKB48 57th Single【公式】

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