『SPECIES EP』インタビュー

Crossfaith、『SPECIES EP』で感じたセルフプロデュースの魅力 新レーベル設立やヒップホップとロックにおける共通点も語る

Jin Doggの直球の歌詞にロックを感じた(Teru)

ーー今作の中で特に驚いたのが、Jin Doggとコラボレーションした「None of Your Business」です。どういう経緯でコラボが実現したんですか?

Koie:Jin Doggのことを認識したのが2018年後半ぐらいで、「関西にヤバいラッパーがいる」と名前をちょくちょく耳にするようになって。それで『I'm from DIRTY KANSAI』というショートドキュメンタリーをYouTubeで観たら、すごくパッションを感じたんです。ロックな部分も持ち合わせているし。

Jin Dogg Documentary「I'm from DIRTY KANSAI」

Teru:ヌンチャク(※90年代に活躍した千葉県柏市出身のハードコアバンド)のカバーもしてたしな。

Koie:そうそう。そのセンスもそうだし、そういう部分が俺たちには光って見えたんですよね。ジャンルは違うけど根っこにある部分に共感したり、あとはやっぱり大阪出身というところも大きいし。『I'm from DIRTY KANSAI』に出てくるライブ映像の熱量も本当にすごくて、俺たちがシーンに出てきて、小さいライブハウスでもみくちゃ汗だくだった状況が今、ヒップホップにも生まれてきてるんやっていうのも感じたし、その2つが交わったら絶対にヤバイやろうなと思ったので、自分たちのイベント『NITROPOLIS』に出てもらったんです。

ーーそこで意気投合したと。

Koie:はい。同じ匂いを感じたんですよね。俺たちのリスナーにはヒップホップを普段聴かない人もたくさんいると思うけど、そういう人の前でも全力で自分のパフォーマンスを見せてくれた。アーティストとしても人間としても惹かれる部分がありました。

Teru:どこか弱い部分というか、フラストレーションがあるからあれだけサイコになれるのかな。そこにCrossfaithと近いものを感じて、俺はJin Doggにも、Jin Doggの音楽を聴いて暴れている人たちにもすげえシンパシーを覚えたな。そういった人たちに「俺らみたいなバンドがおるで!」っていう曲を作りたいなと率直に思ったんですよ。ステージ上でJin DoggとKoiちゃんが一緒に叫んでいたら、すごくなるやろうな、そういう化学反応を見たいなっていう純粋な気持ち。俺、結構早い段階で言ってたよな、「Jin Doggと一緒に曲やりたい」って。

Koie:うん。Jin Doggみたいにがっつりしたラッパーと一緒にやるのは、これが初めて。自分たちからコンタクトを取って曲のデモを送って、「曲のイメージはこうで、こういうことを歌おうと思っている」と伝えて。それを送ったのが去年の9~10月ぐらいだったんですけど、レコーディングでスタジオに来るまで歌詞ができてなくて(笑)。

ーー(笑)。

Koie:でも、彼はそういうスタイルらしいんですよね。スタジオに来てから30分くらいで「(歌詞が)できた!」って。リリックもカッコいいし、日本語の雰囲気もラップの生々しさも、1つひとつが刺激になりました。俺たちが求めているものを理解してくれていたんだなと、一発録ってそれをプレイバックしているときに感じましたし。

Teru:俺は伝えたいことをストレートに伝えるのがロックだと思うんですけど、最近はロックという言葉が自由とはちょっとかけ離れたものになっているところもあるじゃないですか。だからこそ、今のヒップホップシーンの盛り上がりや、今の10代がヒップホップを聴く理由に昔ロックが持っていた部分が感じられるのかなと思っていて。今回Jin Doggの直球の歌詞に俺はロックを感じたし、そこが気持ちよかったですね。

Koie:うん。〈ピーピーうるさいよ ぶち殺すぞ〉なんて、俺が英語で〈I'm gonna fuckin' kill you〉って歌うのとはちょっと重みが違うというか。フィルターがない状態で生のパンチをぶつけている感覚があって、いいですよね。

ーーそれに、Crossfaithの楽曲に日本語のフレーズが入るのも新鮮ですよね。

Teru:Crossfaithでは初だよな、日本語詞が入っている曲は。

Koie:これで、聴いてくれる人もカラオケで歌えるかな(笑)。やっぱり口ずさみたくなりますよね、〈ピーピーうるさいよ ぶち殺すぞ〉ってフレーズは。

ーーわかります(笑)。

Koie:それがヒップホップの魅力であり、魔力なのかなと思います。

今できることをアクションしていくのが俺たちの選択(Koie)

ーー改めて、今回の作品タイトルやレーベル名に用いられた「Species」という言葉の重みが伝わる内容になりましたね。

Teru:本当にこれが始まりですね。<Species Inc.>っていうデカいプラットホームを作って、これから何をするのか、どういうふうに見せるのかはすべて俺ら次第なので。

ーー本来ならここで、新作を携えたツアーを予定していたと思います。現在のこの状況を皆さんはどう受け止めていますか?

Koie:新しいことを始めるチャンスでもあるのかなと。バンドにできる大きなことって「音楽を作ること」と「ライブをすること」だと思うんですけど、今はそれを奪われてしまっている状態なので、新たに代わるものを作るということが大切だし、この状況だからこそ書ける曲というのがあると思うんです。その中で俺たちが選んだのが、メンバー全員で集まって曲を作ること。それが俺たちなりのファーストアクションですね。加えて、今回の『SPECIES EP』は5月20日に発売されますけど、当初予定していた発売日のまま進めたのも大きくて。やっぱり自分たちでレーベルを作り上げたわけで、一発目のリリースは大々的にいきたいという気持ちもあったんですけど、こういう状況の中でリリースするというのはビジネス的にも正直ネガティブな要素が多くて、周りから止められたりもしたんです。でも、アーティストとして今できることは音楽を発表して、リスナーをちょっとでも勇気付けることだと思うし、家にいる中でもいろんな感情を持ってほしいという気持ちが強くて。そういう意味でも、今のこの状況だからこそ聴いてほしい作品だったんです。

ーーなるほど。

Koie:先々どうなっていくかは誰にも読めないけど、それでもツアーをちゃんとできるようにと考えています。もしかしたら延期せざるを得ない状況になるかもしれないですけど、今年の秋ぐらいにツアーができたらいいなと計画は立てていて。なので、メンバー5人でより密接に話し合いをしつつ、今できることをアクションしていくのが俺たちの選択です。

Hiro:さっきTeruが言っていた、なんでヒップホップのアーティストに今の若者が流れているかっていうことに関連するけど、結局ヒップホップのアーティストが未来を感じさせてくれたり、そう感じさせてくれるぐらい“今”を生きているように映るからだと思うんですね。だから、このコロナの蔓延で経済や社会全体として時間が止まっている状態の中で、俺らは今もこうやってスタジオで生きているし、動いているし、未来を見ている。ヒップホップに希望を求めていた若者たちが根っこで求めているものを、俺たちは今のうちに種を植え付けていけたらなと思っていています。

Koie:だから……ちょっと話から逸れるかもしれないけど、このインタビューを読んでいる人の中で、俺たちが海外に行くときの映像を「撮ってみたい!」と思う人がいたら連絡ください。そういう若いクリエイターも常に探しているので、気になったらぜひ。

Hiro:「Crossfaithと一緒にやったら、こんなに面白いことができる」と考えている人がいたら、ぜひ連絡欲しいですね。

■リリース情報
『SPECIES EP』
2020年5月20日(水)Release
・CD+DVD SPS-001 / ¥2,500+税
・Tシャツ+ステッカーセット付き限定バンドルセット SPS-001T / ¥5,454+税

<CD収録曲>
1. Digital Parasite
2. Endorphin
3. Truth of Insanity
4. None of Your Business (feat. Jin Dogg)
5. Your Song

<DVD収録内容>
Live at Pol’and’Rock Festival 2019
1. Monolith
2. The Perfect Nightmare
3. Kill ‘Em All
4. Make A Move
5. Drum Solo
6. Freedom
7. Countdown To Hell
Exclusive Music Video “Milestone”

公式サイト

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