ビートルズにも影響与えたリトル・リチャードの名曲がバイラルチャート上位に ロックンロールの創始者が現代に伝えること
リトル・リチャードが後世に与えた影響は前述の通り図り知れないが、その影響を最も多く受けた一人にポール・マッカートニーがいる。訃報に際してポールは、「ティーンエイジャーだった頃にリトル・リチャードは僕の人生に登場して叫び始めたんだ」「僕のやっていることの多くがリトル・リチャードや彼のスタイルのおかげなんだ」とInstagramに追悼文を発表した。
The BeatlesがまだThe Quarry Menと名乗っていた1957年、ジョン・レノンが2歳年下のポール・マッカートニーをバンドに誘い入れるが、ポールの持っていた豊富なロックンロールの知識がバンドの幅を一気に広げたと言われている。なかでも印象的だったのがリトル・リチャードの楽曲であり、The Beatlesは後に「Long Tall Sally」「Kansas City/Hey, Hey, Hey, Hey」などを自身のアルバムやシングルでカバーし、いずれもポールがリードボーカルを務めている。1962年、リトル・リチャードのUKでのライブの前座を務めたのも、デビューして間もないThe Beatlesだった。特に「Long Tall Sally」はポールとリチャードの絆を象徴する1曲としてロックンロールファンに愛され続けてきたこともあり、このタイミングで「Tutti Frutti」とともにバイラルチャートを急上昇。今週の50位にランクインしている。
この度、筆者も「Tutti Frutti」「Long Tall Sally」が収録された名盤『Here's Little Richard』(1957年)を聴き返してみたが、60年以上前にリリースされたとは思えないほど、今も鮮烈な輝きを放っている。久しぶりにアルバムを引っ張り出して、何度目かの衝撃を受けたリスナーも少なくないだろう。何より魅力的なのは歌声で、目の前で歌っているのではないかと思うほど生々しく躍動感があってソウルフルだ。例えばフィオナ・アップルの新作『Fetch The Bolt Cutters』にも感じたことだが、自粛が続き、生活の中でリアルな人との接触が欠如している昨今、こうしてはっきり温度を感じ取れる“距離の近い”歌声には、高揚と同時に安心感すら覚えてしまう。まさに今聴きたい、今聴くべき作品とも言えるのだ。
音楽性のみならず、ド派手なメイクや破天荒な生き方で、固定概念をことごとく打ち砕いていったことも、リトル・リチャードが“ロックスター”の道を切り拓いたと言われる所以である。最期まで自分らしさを貫いた彼の生き様からは、現代を生きる我々も多くのことを学べるはず。改めて元祖ロックンロールに舌鼓を打ってみてはいかがだろうか。