THIS IS JAPAN主催オンラインフェスを徹底レポート 10組が示した、ロックバンドの矜持とライブへのこだわり
最後に登場した杉森は、今歌うべき曲を歌っていたように思う。リズムボックスとエレキギターを持ち出し、〈死にたくない/まだ死ねない〉と叫んだ「グルメ」、ポジティブなメッセージを持った5月20日配信リリースの新曲「HEARTBEAT」など、選曲にも配慮があったはずだ。バンドサウンドを聴かせられない半面、ボーカルの声に焦点が当たる弾き語りなのだから、「言葉」に力を持った曲を歌おうと思ったのは想像に難くない。また、メンバーの小山祐樹(Gt/Vo)やかわむら(Dr/Cho)がハウスにのめり込み、タイトなリズムで仕上げることを目指した『WEEKENDER』をリリースした彼らである。リズムボックスの導入で、ちゃっかり試金石を得たのではないだろうか。
元々「10人弾き語りリレー配信」と銘打ったイベントだったが、トークではバンドのメンバーも招くなど、スタッフや視聴者も含めて、全員で対バン企画としての熱を生み出そうとしていたように思う。その意識は、今回のイベントを「ギグ」と呼ぶことにこだわっていたことからも明らかだ。それは彼らの歩みの中で培われた意識であり、「ライブとは何か」ということのひとつの答えでもある。杉森はあの日の企画について、こんな感想を言っていた。「ライブハウスでやったとしても、お客さんが全然いなかった日はあったし、逆にお客さんが沢山いても、心を通じ合えないようなライブもあったから。極論ライブって、見てくれる人と演者で同じ時間を共有して、シンクロすることなんです。ざっくり言うと、『今日やってよかった』、『来てよかった』って思えたら、それはライブだと思うんですよ」。
本原稿を執筆している段階では、緊急事態宣言は5月末まで延長される見通しだ。それが明けたとしても、しばらくは平時のようにライブができない日々は続くかもしれない。だが、起こせるアクションは必ずあるはずだ。「本当はめちゃくちゃライブハウスでライブをしたいです。でも、それができないから諦めるのではなく、ライブハウスで俺達が感じてたものをこの状況でも作れるように模索していくことが、今俺らにできることかなと思います。昨日はその第一歩だった」。ちなみに、ライブ後のトークで須田は「この期間が明けたら、誘われたライブは全部出る」と言っていた。最高のワンマン、対バンがきっと何度も見れるだろう。
自室で咆哮する杉森を見て、やっぱりこの人は根っからのバンドマンなんだと思った。翌日寝起きの彼はSuperchunk(そう言えば杉森が生まれた年に結成されたバンドである)のTシャツを着てZoomに出てきた。ロックを歴史ごと愛しているのだろう。ライブ終了後に彼は「生きる!!!!!!」とツイートしている......つまりはそういうことなのだ。
■黒田隆太朗
編集/ライター。1989年千葉県生まれ。MUSICA勤務を経てフリーランスに転身。
Twitter(@KURODARyutaro)
■リリース情報
DIGITAL SINGLE「HEARTBEAT」
5月20日(水) 配信スタート
DIGITAL SINGLE「Not Youth But You」
配信中 ダウンロードはこちら
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