『水曜日のダウンタウン』など手がける藤井健太郎が明かす、バラエティにおける音楽へのこだわり 豆柴の大群が成功した背景も
豆柴の大群は“物語の面白さ”が盛り上がりにつながった
ーーまた、『水曜日のダウンタウン』内のアイドルオーディション企画「MONSTER IDOL」についても聞かせてください。番組の放送が進むにつれて、大きな話題を呼んでいましたよね。
藤井:2018年にクロちゃん(安田大サーカス)が参加する恋愛リアリティ企画の「モンスターハウス」というのを放送したんですけど、最後に人を集める展開を作ったら想定以上の人が集まって、トラブルで終わってしまったんですね。結果、視聴率はそこまで良くなかったんですけど、観てる人の一人ひとりの熱は思った以上に高かったということが分かったので、その生んだ熱をポジティブな方向に向けられないかなというところが企画の出発点です。それで、アイドルオーディションと恋愛リアリティを混ぜ込んだような企画にして、最後にアイドルが誕生するというのがいいなと思ったんです。生まれた熱が無駄にならずに、そのアイドルを応援する方に持っていけるんじゃないかなと。で、具体的にどう形にしようかという時に、一番その辺の感覚が共有できるWACKの渡辺(淳之介)さんに手伝ってもらうことにしました。
ーー結果、豆柴の大群が誕生し、大きな熱を生み出しました。今回の企画が成功した要因、魅力はどこにあったと思いますか?
藤井:物語がちゃんと面白かったというのが一番じゃないですかね。アイドルオーディションの企画って、『ASAYAN』(テレビ東京)以降も、今に至るまで脈々とあるとは思うんですけど、そこで記憶に残っているものが少ないのは、みんながのめり込むようなストーリーや演出、仕掛けを作れていなかったからだと思います。その点、今回はオーディションが先にあるんではなくて、あくまでバラエティ的な面白さを優先するものだったので、その面白さが結果的に盛り上がりにつながったんじゃないかと。
ーー藤井さんがディレクションとプロデュースを担当した「りスタート」MVは、YouTubeで1200万回再生を超える大反響となりました。ここまでの世間からの反応は予測できていましたか?
藤井:去年の「モンスターハウス」の経験があったので、合宿のロケが終わって、この撮れ高だったらある程度いけるなというのは感覚としてはありました。曲自体も良かったし、具体的な数字まではイメージしていなかったですが、いけるんじゃないかとは思っていましたね。
ーー企画オンエア中には、パネラーとして出演したファーストサマーウイカさんが番組とWACKの相性の良さに触れていましたよね。その後に『Love music』(フジテレビ系)で、ウイカさんが渡辺さんのことを「珍味」と例えていたことがあって、それは『水曜日のダウンタウン』にも言えることなんじゃないかと。
藤井:僕としてもそういう扱いでいいというか、逆に思ったよりも真ん中っぽく見らてるな、と。もうちょっと端っこの存在でいるつもりだったし、別に王道ではないと思います。僕自身はバラエティ界のど真ん中というよりかは、もう少し外れものというイメージがあったんですけど、思ったよりも真ん中っぽいポジションに来てしまっているのかなという気はしていて。
ーー言うなれば、WACKもそうかもしれません。
藤井:確かに、やっていること自体は僕らもWACKも“真ん中”っぽいことではないと思うので。
ーーその組み合わせが上手くハマったのかもしれないですね。
藤井:自分ではあまり分からないですけど、僕と渡辺さんもどこか似たようなところはあるんでしょうね。
ーー最後に、『水曜日のダウンタウン』に限らず、関わってきた番組において、音楽の部分で意識しているこだわりがあれば教えてください。
藤井:基本的に作っているのはバラエティなので、あくまで面白さが優先なんですが、内容を邪魔しない範囲で、ビジュアルや音楽の面でもなるべくかっこよくスタイリッシュであった方がいいなとは思っています。昔の番組の方がきっとそういったところは洗練されていて、特にフジテレビの番組は面白くてかっこいいというイメージがありました。その辺が、たぶん今のテレビ番組には段々なくなっちゃっていて、「テレビ=ダサい」と思われてしまいがちな部分なのかな、と。なので「すごく面白くてちょっと洒落てる」くらいの感じを目指して番組を作っていきたいと思っています。