でんぱ組.incから=LOVEと≠ME、バンもん!、ラストアイドルまで テレワークによる“チーム力”結集したコンテンツ
最後に、でんぱ組.inc以外にもリモートワークで制作を行っているグループがいるので、それらを紹介していきたい。
=LOVEと≠MEは4月15日、共同名義で新曲「次に会えた時 何を話そうかな」のMVを発表した。
同曲の制作は2組のプロデューサー・指原莉乃による発案から始まったとのこと。ボーカルのレコーディング、MVで使用されている映像素材の収録はメンバーが自宅で行い、作詞家・作曲家・編曲家・サウンドディレクター・MV監督はそれぞれ自宅で作業した(参照:音楽ナタリー)。
また、指原のツイートによると、関係者間で以下のやりとりがあったとのこと。
MVが公開されたのは4月15日であるため、当初想定していたスケジュールよりも早く進行したことが推測できる。それはつまり、でんぱ組.incの事例でも見られた「クリエイターは逆境にいるときこそすごい」という現象が、=LOVE/≠MEのチームでも発生していたということだろう。
バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHIは4月6日、「6 RESPECT」のMVを公開した。MVで使用されている映像はメンバーが自宅で撮影したものだ。
「6 RESPECT」は2019年12月に発表された曲であるため、音源は既存のものを使用。レコーディングを行う必要がなく、4月上旬という非常に早いタイミングでの公開が実現した。昨今の状況を踏まえて新たに制作された曲ではないため、リアルタイムのメッセージが歌詞に直接反映されているわけではないが、MVの終盤には、6分割画面を利用してメンバーがファンへのメッセージを発信している場面がある。「新曲ではない」という特性を活かした工夫だ。
ラストアイドルは4月14日、「愛を知る」の特別映像を公開した。この映像には、18名の選抜メンバーが自宅でダンスする様子、歌詞に合わせてリップシンクする姿が収録されている。
「愛を知る」は2019年12月時点でリリースが決定していたシングルの表題曲で、同シングルは(リリースに伴うイベントは中止・延期となったものの)当初の予定通り、今年4月15日にリリースされた。3月11日には単曲での配信リリースがされ、MVも同じ日に公開されている。
そのため、この特別映像は、昨今の状況を鑑みて急遽制作が決まったものと推測することができる。冒頭で「私たちと一緒にお家で踊りましょう!」と呼びかけているように、また、途中で「腕をしっかり振りましょう」といったアナウンスが被せられているように、外出を自粛せざるをえない生活が続くなか、リスナーに身体を動かす機会を提供する意図があったのではないだろうか。
このように、ステージに立つメンバーのみならず、クリエイターやスタッフも含めた「チーム力」の結集といえるコンテンツが続々と発信されている。新型コロナウイルスによる感染症の拡大は私たちの生活を大きく変えてしまったが、一方、「文化」の重要性をそれぞれが考え直す機会にもなっているといえるだろう。「文化」をフィールドに仕事するすべての人々に対して、今こそエールを送りたい。
■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。