でんぱ組.incから=LOVEと≠ME、バンもん!、ラストアイドルまで テレワークによる“チーム力”結集したコンテンツ
8日間を振り返ってみて改めて思うのは、ものすごいスピード感で物事が動いていたのだなあということ。LINE LIVEで前山田が「やっぱりフラストレーションが溜まっていた」「今回は言いたいことが多かったので」と発言し、もふくちゃんが「多くのクリエイターさんがそうですよね。逆境にいるときこそすごい」と応じる場面もあったように、それぞれの内に秘めたものが爆発した結果、迅速かつ質の高いアウトプットが実現したのだろう。
全ての作業をテレワークで行うという企画自体の面白さももちろんある。一方、1つの曲が生まれるまでにどのような工程が存在するのか、そしてそこにはどんな人が携わっているのか、それらがSNSを通じて見える化されたことの意義も大きい。
今まさにストリーミング配信サービス隆盛期となりつつあるし、その流れはますます加速していくだろう。しかしストリーミングのデメリットとして、「1つの曲に携わったクリエイターのクレジットが見えづらい」ことが挙げられる。例えば、Spotifyには「楽曲クレジットを表示する」という機能があるが、ここで確認することができるのは「アーティスト名」「ソングライター名」「プロデューサー名」の3項目のみ。レコーディングに参加したミュージシャンの名前や、ミックスを手掛けたエンジニアの名前まで把握することはできない。
同じくSpotifyのプレイリストシリーズ「Works」では作詞家・作曲家・プロデューサーがフィーチャーされている。『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)のように、演奏家や振付師のすごさをピックアップしている音楽番組もある。しかしそういった取り組みはまだ始まったばかりという印象だ。また、クレジットをウェブ上で公開していないアーティストも多く、クリエイター側にも、ポートフォリオのように自身の実績をまとめて公開している人は少ない。ユーザーからすると、気になって検索したとしても、必要な情報に辿り着くのが困難な状況だ。
1つの曲が生まれるためにどれだけの(人的、経済的、時間的)コストがかかっているのか。それは、コンテンツを購入している(あるいは、提供者の厚意により無料提供されたコンテンツを楽しんでいる)消費者にとっても無関係なことではないだろう。そういった視点を獲得することは、広く言うと、職人による質の高い仕事にそれ相応の対価が支払われる環境の土壌作り――例えば違法アプリの撲滅、営業停止を要請された文化的施設への適切な補償などに繋がるのではないだろうか(もちろんそれらの問題は根深く、ユーザーの善意のみに頼っていい話ではないのだが)。