森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.196
でんぱ組.inc、OKAMOTO’S……節目の時期を迎えたアーティスト 新譜からピックアップ
快楽的なファンクネスを放つリズム隊、歪みまくったギターフレーズ、シャープかつポップなメロディとともに描かれる“ここじゃない、どこかへ”を希求する歌。1曲目の「Mutant」から一気に引き込まれ、興奮させられる。赤い公園の“新体制・初オリジナルアルバム”『THE PARK』は、4人が新たなスタイルを掴み取ったことを告げる記念碑的作品だ。郷愁と解放感を同時に感じさせるポップナンバー「紺に花」、現行のR&B、ヒップホップとバンドサウンドを有機的に融合させた「chiffon girl feat. Pecori (ODD Foot Works)」、ボーカル・石野理子の切なくて凛とした声が真っ直ぐに飛び込んでくるアッパーチューン「yumeutsutsu」など、独創性に溢れたアイデアと極上のポップネスを共存させた楽曲がたっぷり。メンバーそれぞれのプレイヤビリティがせめぎ合いながら結合するアンサンブルも、さらに豊かさを増している。
オーセンティックなロックロールから始まり、メジャーデビュー10周年を記念したベストアルバム『ID10+』には、「ボニーとクライドは今夜も夢中」「Mary Lou」(毛皮のマリーズ)、「Trash」「トートロジー」(ドレスコーズ)から、最新アルバム『ジャズ』の収録曲まで、時期によって音楽性を大きく変貌させてきた志磨遼平のキャリアを改めて追体験できる作品に仕上がっている。毛皮のマリーズを解散させたときも、ドレスコーズが志磨のソロプロジェクトになったときも驚いたが、本人がセレクトした曲を時系列で聴いてみると、すべてが必然であり、音楽的な根拠に基づいた変化であったことがはっきりとわかる。スタイルを固定せず、賛否両輪を引き受けながら、常に新たな表現を切り開き続け、“最期までカッコよかった”と言われる存在になってほしいと願う。そう、デヴィッド・ボウイのように。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。