『TOKYO HEART BEATS』インタビュー
SPICY CHOCOLATEが語る、“人生に寄り添う応援歌”で届ける思い「どんなに技術が発展しても人とのふれあいはなくならない」
「ずっと feat. HAN-KUN & TEE」が配信チャートで19冠を獲得したことをはじめ、『渋谷純愛物語』シリーズのヒット、配信総数200万ダウンロード超の楽曲が詰まった『スパイシーチョコレート BEST OF LOVE SONGS』など、多くの名ラブソングを世に送り出してきたSPICY CHOCOLATEが、ニューアルバム『TOKYO HEART BEATS』をリリース。本作は『渋谷純愛物語』に続く新シリーズの第1作で、ラブソングだけでなく、「夢のカケラ feat. ファンキー加藤 & ベリーグッドマン」や「願いのせて feat. まるりとりゅうが & モン吉」など、聴く人の背中を押すような応援歌も収録されている。SPICY CHOCOLATEが考える、今の時代に必要とされる音楽とはどのようなものなのか。リーダーのKATSUYUKI a.k.a.DJ CONTROLERに話を聞いた。(榑林史章)
新シリーズのテーマは人生に寄り添う応援歌
――以前のインタビューで、レゲエにはREBEL(反逆)とLOVE(愛)という2つの側面があるというお話をされていましたね。今作『TOKYO HEART BEATS』ではそのREBELとLOVEにYELL(応援)が加わり、新たなフェーズに入ったという印象です。どんなイメージで制作されたのでしょうか。
KATSUYUKI:今までシリーズごとにアルバム3枚とベスト盤を出して完結していて、『渋谷純愛物語』シリーズも『スパイシーチョコレート BEST OF LOVE SONGS』で完結したので、ここらで新シリーズを作ろう、と。そこで今という時代を考えた時に、今は恋愛だけじゃない混沌とした世の中でもあるから、自分たちが前を向いて進んで行くための曲や、落ちている気持ちを上げることができる曲も入れられたらいいなと思ったんです。聴く人の胸や心を揺さぶるような音楽を提供したいという気持ちを込めました。
――昨年は台風などの自然災害も多かったし、今も新型コロナウイルスの不安が広がっていて、応援を必要としている人がたくさんいる。そんな今の時代にフィットしたテーマですね。『TOKYO HEART BEATS』というタイトルは、言葉を選ぶ時に何かヒントになったものはありましたか?
KATSUYUKI:今から20数年前、レゲエの本場であるジャマイカに初めて行った時に泊まった、海沿いにポツンと建つコテージの名前が、実は「HEART BEAT」だったんです。僕の中でその名前がずっと残っていて、今回新しいシリーズを始めるにあたって原点回帰の意味合いも含めて、タイトルの参考にしました。
――カリブ海の青い海と空が目の前に広がるコテージは、とても爽やかで美しいシチュエーションですね。
KATSUYUKI:確かにキレイだったんですけど、ど田舎だったので蚊に何十カ所と刺されて大変な目に遭った思い出があります(笑)。それでも初めてのジャマイカだったからすべてが新鮮だったし、それこそ心臓を揺らされるような経験がたくさんあって、レゲエという音楽にどっぷり浸かるきっかけになりました。
――レゲエにはもともと、応援歌の要素もあるのですか?
KATSUYUKI:気持ちをポジティブにするレゲエは、2000年代に入って以降ですね。60年代〜70年代、ボブ・マーリーなどが歌っていたREBELやLOVEに始まり、それが進化したり飽きられたりすることでダンスホールレゲエが生まれ、僕がジャマイカに行った90年代中盤〜後半にかけて主流だったのは、スラックネス(セックス・ドラッグ・バイオレンスといった露骨な表現のレゲエ)と呼ばれるものでした。そういったレゲエを一通り楽しんだ上で、じゃあ今の時代に何が必要なのか。人生で辛い時や壁にぶつかった時に自分の中で、自然と流れて来る曲ってあるじゃないですか。
――ふと口ずさんでしまうような。
KATSUYUKI:そうです。誰の中にもそういう曲があって、僕の中では長渕剛さんやサザンオールスターズ、THE BLUE HEARTSなどの曲がそれにあたります。そこで今度は、僕自身も聴いてくれる人の人生に寄り添える1曲をどれだけ提供できるかを目標に、背中を押してあげたり、悩んでいる時に手を引いてあげられる曲が作れたら良いなと思いました。そうした中で最初に出て来たのが、「最後に笑おう feat. ハジ→ & 寿君」という曲のアイデアです。
――「最後に笑おう feat. ハジ→ & 寿君」は、人生の終わりを迎えた時に笑っていられるようにするために、どういう人生を送ったら良いか、そのための背中を押してくれる曲ですね。
KATSUYUKI:はい。終わりの無い人生はないわけで……僕個人としても昨年はとても別れの多い1年で、人生は決して永遠じゃないことを実感しました。そこで自分が最期を迎える時は、どういう風に終わりたいかを考えるようになって、自分の人生が恨みや妬みで渦巻きながら終わっていくのは嫌だなって。自分の周りにはこんなに人がいてくれて良かった、恵まれていた、これまで生きていて良かった、ここまで来られて良かったなって、笑いながら終わりたいと思ったんです。最終的なテーマはそういったものですけど、1日の終わり、1週間の終わり、自分が目標達成に定めていた期間や、高校生活の3年間が終わるという時などに、「最後に笑おう」という曲が当てはまってくれたら良いなと思っています。
――〈でも頑張り続けたら明日に また土壇場で神がかったり 捨てたもんじゃないぜ この人生 最後に笑おう〉というフレーズがすごく良いですね。
KATSUYUKI:強いメッセージのある応援ソングになりましたね。今までこういう曲を作って来ていなかったので、ちょっと変わった進化をお見せできる曲なったんじゃないかなって思います。