佐藤千亜妃が同性から支持を得る理由は? 『バズリズム02』特集から考える

 地上波の番組に出演することも珍しく、番組内では意外な一面も覗かせた佐藤。「女子が好きな女性アーティスト」が今回のテーマだったが、多くの同性が惹きつけられる理由の一つ“歌詞”に注目してみたい。番組内でフワちゃんが「〈コンビニ〉というワードがよく出てくる」と語っていたが、ほかにも〈交差点〉〈国道〉など、佐藤が描く歌詞は具体的な情景描写が多く、一瞬で景色を思い浮かべられるため自然に歌詞の世界観に感情移入していけるのではないだろうか。一方、たとえば『PLANET』(2019年)の中にははっきり〈大キライ〉(「大キライ」)と言っていたり、〈笑顔が下手な私でいいの?/傷つけたくない 初めてそう思った〉(「空から落ちる星のように」)と二人の関係が深まることを躊躇しているような歌詞が出てくるが、いずれも「本当に相手のことが好きで好きでたまらなかったんだろうな」と想像できる歌詞だ。逆の言葉を並べているのに「好き」という気持ちを連想させる、いわば“行間”を読む女心の描写が秀逸な佐藤の歌詞が共感を得ているのだと感じる。

 また、番組では彼女の多才さもフィーチャーされていた。19歳のときにきのこ帝国を結成し、ボーカル・作詞・作曲を担当しており、他アーティストのサウンドプロデュースを務めるなど音楽面での手腕は言わずもがなだが、前述の『CAST:』のほか映画『包帯クラブ』、ドラマ『ホタルノヒカリ2』など演技の実力も持ち合わせており、さらにモデルとしても活動するなどマルチな活躍を見せている。音楽ファンのみならず数々のミュージシャン、タレント、俳優からも支持されている佐藤千亜妃が番組内で見せた等身大の姿には、多くの女性が親近感を抱いたのではないか。きのこ帝国の活動を経てソロアーティストとしてどんどん新たな表現に向かう佐藤千亜妃は、今後も私たちの目も耳も惹きつける存在となっていくのだろう。

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