メディアミックスプロジェクト戦国時代が到来? DJ、お笑い、戦国武将……多種多様に広がるコンテンツの現在

『ヒプマイ』の対抗馬となりそうな『Paradox Live』

【MV】BAE / 「BaNG!!!」 -Paradox Live(パラライ)-

 そして『ヒプマイ』の対抗馬となりそうなコンテンツが、エイベックスとGCREST(ジークレスト)によるHIPHOPメディアミックスプロジェクト『Paradox Live』。近未来を舞台に、14人のラッパーたちが4つのチームに分かれて「幻影ライブ」と呼ばれるラップバトルで競い合う、その世界観や設定を含めて『ヒプマイ』との共通項が多い本作だが、とはいえ全体の雰囲気はだいぶ異なっている。その違いを言語化するのは難しいが、『ヒプマイ』が日本語ラップ的だとすれば、『Paradox Live』はよりグローバル感があるというか、ヒップホップやR&Bを取り入れた近年のポップス(特にK-POP系)のサウンドに近しいものを感じさせる。

 先日リリースされたばかりの初CD作品『Paradox Live Opening Show』には、各チームの楽曲を1曲ずつと、それぞれのドラマトラックを収録。AIやCHEMISTRYらへの楽曲提供で知られる藤本和則が制作(作詞はMICRO)したBAE(ベイ)のエレクトロR&B「BaNG!!!」、ジャジーヒップホップの香りが漂うThe Cat's Whiskers「MASTER OF MUSIC」、ダウナー系双子ユニットのcozmezが歌うトラップチューン「Where they at」、ダンスホールレゲエ風のリディムに乗せて5人がマイクを回す悪漢奴等の「BAD BOYZ -悪漢奴等 Underground-」と、各収録楽曲のスタイルは多様ながら、いずれもスタイリッシュなラップソングとなっている。

 ちなみに本作には、豊永利行や畠中祐、土岐隼一といったアーティスト活動も行う男性声優に加え、歌い手として活動する96猫、浦島坂田船の志麻などがキャストとして参加。各チームのキャラクターデザインにも、イラストレーターの秋赤音、『刀剣乱舞』の絵師として知られる小宮国春といった、若年層に人気のクリエイターを起用しており、いわゆる声優ファンに向けたのとはまた違う間口を用意している。そういった意味でも色々なところから人気に火が付く可能性がありそうだ。

アイドル系の期待コンテンツ『IDOL 舞SHOW』『IDOLY PRIDE』 

IDOL舞SHOW PV第二弾

 また、アイドルコンテンツに関しても、引き続き新しい企画が多く立ち上がっているが、最近は従来の作品との差別化を図った作品が増えている。例えば2019年に始動した『IDOL 舞SHOW』は、戦国時代の武将である斎藤道三・伊達政宗・真田幸村の生まれ変わりとなるプロデューサーたちが、アイドル戦国時代に制するために、自身がプロデュースするアイドルグループを率いて戦(ライブ)を繰り広げるという、何ともユニークな設定のコンテンツ。そのプロデューサー役には、斉藤滋、冨田明弘、木皿陽平という、実際にアニメソングの世界で活躍する音楽プロデューサーが就任。彼らがそれぞれ、ダンスミュージック〜R&B系のサウンドを得意とするNO PRINCESS、正統派アイドルグループの三日月眼(ルナティックアイ)、10人組という多人数ならではのステージングで魅せるX-UC(テンユーシ)という3組の声優ユニットをプロデュースし、CDリリースやライブイベントなどを通じて魅力的な音楽を発信している。

【IDOLY PRIDE】第1弾プロモーションムービー

 そして、ミュージックレイン所属の声優が揃って参加していることで注目を集めているアイドルプロジェクトが『IDOLY PRIDE』。小さな芸能事務所、星見プロダクションに所属する10人の新人アイドルを中心に、アイドルの最高峰をめざす女の子たちの物語が描かれるという本作。星見プロダクションの新人アイドル役を、ミュージックレインの新人となる3期生の5名と各声優事務所期待の若手5名が演じるほか、そのライバルグループとなるTRINITYAiLE役にTrySailの麻倉もも、雨宮天、夏川椎菜、LizNoir役にスフィアの寿美菜子、高垣彩陽、戸松遥、豊崎愛生が決定しており、原案には『ラブライブ!』に関わったことで知られる安達薫(ストレートエッジ)や脚本家の花田十輝も参加。さらに、大石昌良、沖井礼二(TWEEDEES)、北川勝利(ROUND TABLE)、さかいゆう、田中秀和(MONACA)、やしきん、kz(livetune)、Q-MHz、Wicky.Recordingsら豪華クリエイター陣が楽曲提供を行うとのことで、音楽面でもハイクオリティなコンテンツとなることが期待される。現時点ではまだ情報は少ないが、先日に『ワンダーフェスティバル2020[冬]』で行われた星見プロダクションのキャストによる初ステージの評判も良く、すでにTVアニメ化が発表されていることもあり、間違いなく今後大きな話題となることだろう。

『ラフラフ!』『天歌奏流-TENKASOUL-』など、新興勢力もぞくぞく登場

天歌奏流 第1弾PV

 他にも個性的なメディアミックスコンテンツは多数ある。例えば2020年にプロジェクトが本格始動した『天歌奏流-TENKASOUL-』は、戦国時代にタイムスリップしてしまったロックバンドのメンバーたちが、「天歌」と呼ばれる謎の力を持った楽団として戦国武将に召し上げられて共に戦うという戦国ロック活劇。物語はボイスドラマCDで展開されており、そこに各武将に協力するロックバンドたちの楽曲も収録。ボーカルにはPENGUIN RESEARCHのフロントマンで声優活動も行う生田鷹司をはじめ、大城盛東、kaytoという若手の実力派が揃っており、エンドウ.や山本メーコ、おぐらあすかといった一二三所属のクリエイターたちが制作した、戦国武将たちをも鼓舞する熱量の高いロックチューンを歌っている。

JAZZ-ON!(ジャズオン!) 星屑旅団 - 「千本桜 星屑旅団JAZZアレンジバージョン」short ver.

 そしてゲーム会社のアカツキがプロデュースする、ジャズをテーマにしたメディアミックスプロジェクトが『JAZZ-ON!(ジャズオン!)』。本作の舞台となる市立湊ヶ丘高等学校には、本格的なジャズに打ち込む研究会「Swing CATS」と、アニソン×ジャズサークルの「星屑旅団」というふたつのジャズ部が存在。彼らジャズに対する価値観の異なる二組が、それぞれの思いを胸に自らの信じるジャズを奏でる青春ストーリーとなっている。こちらもCD(楽曲+ドラマトラック)が中心となっており、SANOVAの堀江沙知やジャズピアニストの桑原あい、サックス奏者のユッコ・ミラー、ジャズインストバンドのCalmeraといった実力派が楽曲を提供。一流ミュージシャンたちによるホットな演奏をバックに、人気男性声優たちが艶やかな美声やスキャットを聴かせる、他ではなかなか楽しむことのできないサウンドが個人的にも一押しだ。

ラフラフ!-laugh life- より【ビヨンド】漫才「よき」

 さらに、DMM musicとオトメイトの共同プロジェクトとして昨年スタートしたのが、男性声優×お笑いプロジェクトの『ラフラフ!-laugh life-』。全7組16人の芸人たちの物語やネタをCDで展開しており、なおかつ各CDには彼らが結成したアイドルユニットの楽曲も収録している。同じくお笑いを題材にしたメディアミックス企画としては、サンリオ発のお笑い芸人キャラクターによるプロジェクト『Warahibi!』も注目。YouTubeでネタ動画を配信しているほか、先日に12人の芸人キャラが歌うメインテーマ「GIFT for SMILE!」をリリースしたばかり。この楽曲はTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDが提供した、レゲエ調のリズムによる心温まるミディアムナンバーで、中盤ではTECHNOBOYSお得意(「SIX SAME FACES 〜今夜は最高!!!!!!〜」「BAKA-BONSOIR!」などを参照)のキャラクターたちによる掛け合いネタもしっかりと盛り込まれており、お笑いコンテンツならではの音楽作品に仕上がっている。

 今後も、アニメ×アプリゲーム×フットサル試合イベントによるメディアミックス企画『フットサルボーイズ!!!!!』(音楽はR・O・Nが制作)、吹奏楽×男子高校生×青春をテーマにしたDMM GAMESの新作ゲーム『ウインドボーイズ!』(楽曲制作はノイジークロークの坂本英城)といった作品が本格始動を予定。それを思うと、キャラクターコンテンツと音楽の掛け合わせにはまだまだ無限の可能性があるだろうし、もしかしたら2020年は、これ以外にもアッと驚くようなメディアミックス作品が登場するかもしれない。ぜひ自分の感性にピンとくる作品を探してみてほしい。

■流星さとる
流浪の人。アニメ・声優・アニソン関連のライター仕事、よろず承ります。お問い合わせは【ryuseisatoru@gmail.com】までどうぞ。

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