『D4DJ』全キャストから感じた未来への躍動 総勢20名で盛り上げた『D4 FES. -Departure-』を振り返る
3番手は、この日が4名全員での初ステージとなったPhoton Maiden。彼女たちのカバー曲「ブルー・フィールド」では、センターを務めた前島亜美(新島衣舞紀役)がカメラに近づいてフロアに耳を傾けたり、〈ほらまた愛で満たされる〉という歌詞で、フレームいっぱいにハートマークを描いたりと、レンズ越しでのコミュニケーションを試みていた。
スペースチックなユニットカラーを押し出すPhoton Maidenは、フロアとコンタクトを取るだけでなく、全国のライブビューイングを観ているディグラー(D4DJ のファンの総称)へもレンズを通して呼びかけるような動きをみせた。レンズの向こう側をも意識したパフォーマンスは多くのディグラーを喜ばせたことだろう。
次に登場したMerm4idは、人気カバー曲「キューティーハニー」のほか、90年代ユーロビートの代表曲「Gamble Rumble」を初披露。全ユニットの中でも、往年の名曲リバイバルを突き詰めているMerm4id。彼女たちの音楽性は、往年より多くのファンに愛され続けてきたものであり、それらが2020年代にリバイバルされることで、時に新鮮さを運んでくることもあるだろう。彼女たちがフロアを揺らすことができるのも、そんな“目一杯に踊ってみたい”という想いを後押しするサウンドがあるからなのかもしれない。
最後は、こちらも4名全員での初パフォーマンスとなるPeaky P-key。彼女たちの前回ライブからのカバー曲「CYBER CYBER」では、“本家”と同じく曲中で腿上げエクササイズを繰り広げる。なかでも特筆すべきは、メインボーカルを務める愛美(山手響子役)の適応力の高さだ。同曲では、原曲を歌うアーティストのラップからハイトーンでのボーカル、さらには前述の運動量高めなダンスまでをもさらりとやってのける。ここからだけでも、愛美のステージ経験の豊富さをありありと示されてしまった。
新規カバー曲のほか、ライブ内では新オリジナル曲も披露されるなど、楽曲の幅がぐんと増したことを実感した今回のライブ。各ユニットともに、約20分のロングセットをやり切るなど、非常にエネルギッシュなステージだったという印象も強い。また、カバー曲を含めて、全ユニットがそれぞれの音楽的なフィルターを通して、多岐にわたるジャンルの楽曲を繋ぎ合わせていたことも、ステージに感じた“DJプレイ”らしさを強めた要因のひとつではないだろうか。
今回のライブタイトル「Departure」は、プロジェクトの黎明期を形容する上で、これ以上ないくらいに相応しいものだ。ただ、「Departure」は直訳すれば“出発”という意味なのだが、ここではあえて“臨戦態勢”という強めな言葉を選んでみたい。そう思えるくらいに、『D4DJ』が生み出す盛り上がりからは目を離せなくなってきている。