秋山黄色に聞く、作曲への目覚めとユニークな曲作りのプロセス 「ゲームやカラオケと同じ感覚」

秋山黄色、ユニークな曲作りのプロセス

実験的でありながら普遍性も確保したい

ーー秋山さんの楽曲は、4つか5つくらいのコード進行の繰り返しの中で、メロディがカラフルに発展していくことが多いじゃないですか。それもやっぱり「チェリー」から学んだ作曲法なのかなと。

秋山:確かに。あと、さっき「ゲームも作曲も同じ延長線上にある」っておっしゃったじゃないですか、それでいうと「リハスタで音を出す」のはカラオケの延長線上というか。高校生の頃は、友だちとスタジオに入って爆音で楽器を鳴らすことが、とにかく最高のストレス発散方法になってたんですよね。「バンドを組んで、ライブハウスに出演する」とかそういう発想ではなくて、とにかく楽器を持ち寄ってリハスタに入ってセッションすることが楽しくて。料金もカラオケと変わらないし。

 ただ、既存の楽曲をコピーして合わせるほどの演奏レベルには誰も達していなかったから(笑)、覚えたてのコードを4つくらい使って適当に演奏するわけです。それに合わせて僕が、即興で歌詞とメロディをつけていくんですけど、それも後から録画したやつを見返してみたらいい感じで。それで友だちと、「ここ、よかったよね」みたいに話していた部分をCubaseに打ち込み直して、編集して1曲に仕上げていく……。実は、今回のアルバム『From DROPOUT』に入っている曲のほとんどが、そういうやり方で作っているんですよね。

ーーそれだけメロディの「引き出し」が頭に入っているということは、これまで相当な数の楽曲をインプットしてきたんでしょうね。

秋山:ただ、それも無意識なんです。何かを深く掘り下げて聴くというよりは、ヒットチャートの音楽を聴いている感じで(笑)。自分でもライブをやるようになって、色んなバンドを聴くようになりましたけどね。最近はドミコとあじさいタウンを交互に聴いてます。基本的に、ローファイっぽいサウンドが好みかもしれない。地元の先輩が乗っている、「本当に令和かよ?」って思うくらいボロイ車に積んであるカーステで流れるeastern youthとか……。

ーーあははは。

秋山:洋楽だとNirvanaも好きですね。色んな人から「たくさん音楽を聴いてそうな人が作る曲」と言われるんですけど、実は違くて。おそらくガチの“音楽好き”じゃないんでしょうね。「音楽がないと死んでしまう」みたいな気持ちは特にないし、相変わらずゲームやカラオケと同じ感覚で作っているんです。

 前にCharさんのインタビューを読んだら、「コード進行とか何も知らず、適当に弦を抑えながら気持ちのいい響きを見つけている」みたいなことを話されていたんですけど、僕も全く同じなんですよ。とにかく「試行回数」だけは誰にも負けない自信があって。気に入った響きを見つけるまで、気に入ったメロディを見つけるまで、ひたすら何度も繰り返し試しているんです。

ーーなるほど。確かにコード進行や曲の構成はとてもシンプルなのに、何度も聴きたくなる中毒性があるのは和声のユニークな積み方が原因かもしれないですね。

秋山:そういえば先日、アルバムのプレムービーを作ったんですけど、映像にコード進行を載せようと思ったら自分のコード進行が分からなくて(笑)。それで色んな人に、「こうやって(弦を)押さえているんですけど、このコードって何ですかね?」と聞いて回り、教えてもらって何とか作り上げました。

秋山黄色1st Full Album「FromDROPOUT」全曲Trailer

ーー(笑)。その複雑な響きに触発されて、メロディが引き出されているところもある気がしますね。それに秋山さんの楽曲は、サウンドテクスチャーにも中毒性を感じます。

秋山:それが自分の楽曲の本質なんじゃないかなと思っているんですよ。音楽を聴くとき、自分は何に一番気持ち良さを感じているかというと“音の感触”なんですよね。例えば嵐とか48グループとか、GReeeeNもそうですけど、たくさんの人の声が混じった時の気持ち良さを、自分の音楽にも取り入れたいなと。

ーーハーモニーというよりは、“倍音”の気持ち良さですね。

秋山:そうなんです。僕は大抵、ヘッドホンで聴きながら曲を作るんですけど、楽器の絡み、声の絡みをいかに気持ちよく聴かせられるかをずっと追求していますね。なので、自分で作ったデモの音像は『From DROPOUT』のミックスダウンでもかなり尊重してもらっています。今回、井上うにさんに何曲かミックスしてもらっているんですけど、「将来、自分でも(エンジニアリングを)やってみたら?」とおっしゃっていただきました。まあ、どこまで本心なのかは分からないですけど(笑)、いつも褒めてもらっています。

 ミックス、本当に楽しいですね。みんなもっとやればいいのにと思います。自分のセンス次第で、いくらトレブル(高音を調節するツマミ)を上げても、ベースを上げてもいいんですから。“ゲーム感覚”という意味では、今までやってきたどのゲームよりもぶっち切りで面白いのはミックスダウンです(笑)。

ーー今回、共同アレンジ(「モノローグ」「夕暮れに映して」)やプログラミング(「エニーワン・ノスタルジー」)を担当した川口圭太さんからの影響も大きいのでは?

秋山:めちゃくちゃ大きいですね。レコーディングのノウハウに関しても、本当に色んなことを教えてくれました。やりたいことが似ているのかなと思うんですけど、川口さんがご自宅で作ってきたアレンジのデモもめちゃめちゃ完成度が高くて。「それ、どうやっているんですか?」みたいな話は随所でしていますし、相当勉強させてもらいました。特に「モノローグ」とか、変な音がたくさん入っているじゃないですか。あれとか「この人、ちょっと変だな」って思います(笑)。

秋山黄色『モノローグ』

ーー(笑)。アルバムを作り終えてみて、今後どんな方向へ進んでいきたいと思っていますか?

秋山:1stアルバムなので、結構昔の曲も実は多いんです。18歳くらいの頃に作った曲なども入っているし、割と“けじめ”に近い。なので次が大事なのかなと。自分のやっていることの影響の与え方も、もう少し選ばなきゃって思いますし。

ーーそれは、どういう意味ですか?

秋山:受け手にしたら、影響を受けるカルチャーそのものが「いいもの」なのか「悪いもの」なのかは関係なかったりするんですよね。自分がやっているのは下品なことだったりするので(笑)、人への影響を“優しく”与えられたらいいなと。最近よく思うことですが、「なんかよく分かんない」という作品を出すのは意外と簡単なんです。そこでリスナーのことをちゃんと把握してないと、「なんかよく分かんない」ものが、そのまま受け入れられちゃう可能性がある。それって危険だなと思っています。

 「なんかよく分かんない。けどすごい」が将来の“普通”になるのであれば、なんかよく分かんないままで済ませたくない。例えば、めちゃめちゃ変なアレンジで、めちゃめちゃ変なサウンドでも、ちゃんと音楽的に成立させたいんです。変なことをやりたいだけの人って、意外と多いじゃないですか。僕自身はただ実験的なだけじゃなくて、実験的でありながら普遍性も確保したい。別にシーンに対しての責任感とかそういうことではなく、「自分で自分のやっていることに、ちゃんと納得しているかどうか?」という話なんですけど。

ーー表現者として、とても真摯で誠実な考え方だと思います。

秋山:ものすごくハードルの高いことを言ってますよね(笑)。でも、それがうまくいったときは達成感が全然違う。「何をやっても評価されるんだから、好き勝手にヤバイことをやってやれ」という気持ちにはなりたくないのかもしれません。それは今後も矜持として持ち続けていきたいですね。

■リリース情報
「モノローグ」
配信日:2020年2月4日(火)

 『From DROPOUT』
発売日:2020年3月4日(水)
・通常盤:¥3,100 (税込)
・DVD付き初回生産限定盤:¥3,700(税込)

<収録曲>
1. やさぐれカイドー
2 .モノローグ(ドラマ『10の秘密』主題歌)※2020年2月4日(火)0時各音楽販売サイトにて先行配信スタート
3 .クラッカー・シャドー
4 .スライムライフ
5 .chills?
6 .Caffeine
7 .猿上がりシティーポップ
8 .夕暮れに映して
9 .ガッデム
10 .エニーワン・ノスタルジー

<DVD収録内容>
1.やさぐれカイドーMV
2.猿上がりシティーポップMV
3 .ドロシーMV
4 .クソフラペチーノMV
5 .クラッカー・シャドーMV
6 .夕暮れに映してMV

<CD先着購入者特典>
【対象店舗及び特典内容】
・Sony Music Shop・・・オリジナルスマホサイズステッカー
・タワーレコード全店(オンライン含む/一部店舗除く) ・・・オリジナルポケットティッシュ(ブルー)
・TSUTAYA RECORDS(一部店舗除く)/ TSUTAYAオンラインショッピング(予約のみ)・・・ジャケットステッカー
・Amazon.co.jp・・・「From DROPOUT」デカジャケット
・楽天ブックス・・・オリジナルコルクコースター
・セブンネットショッピング・・・オリジナルブリキ缶ケース
・秋山黄色応援店・・・オリジナルポケットティッシュ(レッド)※応援店の対象店舗は後日発表。

■ツアー情報
『秋山黄色 「一鬼一遊TOUR」』
2020年4月11日(土)@名古屋APOLLO BASE  OPEN16:30/START17:00
2020年4月12日(日)@梅田Shangri-La  OPEN16:30/START17:00
2020年5月01日(金)@渋谷CLUB QUATTRO  OPEN18:00/START19:00

チケット:¥4,000(税込/1D代別)全公演スタンディング
【オフィシャルファンクラブアプリ「秋山黄色の裏垢」会員抽選先行】
1月21日(火)22:00~2月2日(日)23:00
【一般発売】3月15日(日)10:00~

秋山黄色ファンクラブアプリ「秋山黄色の裏垢」
iOSはこちら
Androidはこちら

『登校の果て.W』※チケットソールドアウト
日時:2020年 2月28日(金)@Shibuya WWW 時間:開場18:30 開演19:00

■関連情報
秋山黄色オフィシャルサイト
秋山黄色Twitter
秋山黄色staff Twitter 
秋山黄色YouTube channel
秋山黄色『From DROPOUT』特設サイト

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