GO 三浦崇宏が語る、ヒップホップと“言語化力”の関係 「くそったれな現実を逆転させる力がある」

三浦崇宏、ヒップホップと言語化力の関係

モラルや常識はアップデートしていくもの 

ーー三浦さんが「言語化力」という観点で最も共感する日本のラッパーは誰ですか?

三浦:RHYMESTERですね。

ーー強いて言うなら2MCの内のどちらですか?

三浦:強いて言うなら宇多丸さんです。彼のラジオとかを聞いていればわかるんですけど、宇多丸さんはちゃんと謝るんです。最近だと女性向けメディアの連載で、若い頃自分も女性蔑視的な発言をしていたし、そういう曲も書いていたけど、今は違うって。僕は最近、モラルや常識はアップデートすると、よく言うんです。

ーー本書にもその言葉が出てきます。

三浦:広告をつくっていると、5年前だったらOKだったものが今炎上するっていうことは当然あるんです。つまらない二流のクリエイターって、それにクレームを言うんです。「こんなんじゃ面白いこと言えないよ」とか「何をしても女性蔑視とか言われるとクリエイターの自由さが失われるよ」とか。でもモラルや常識はアップデートしていくもの。かつて女性は選挙に投票できなかったし、かつて黒人はバスの椅子に座れなかった。今そんなことありえないじゃないですか。僕たちは進化した世界にいるんだから。

ーー昔のものさしで計られても困ると。

三浦:そうです。馬車が車になり、車が自動運転になるように、モラルがアップデートする、テクノロジーも進化する、それに合わせて人間もアップデートしなきゃいけないのに、意外とクリエイターの中には止まってる人が多い。でも、宇多丸さんってアップデートしていることをちゃんと主張してくるんです。RHYMESTERの「Still Changing」という曲に〈かつての「ナシ」も「ナシ」じゃないってのは別に哀しい話じゃない〉っていう一節がありますが、まさにそう。その姿勢が格好良い。もちろん1個1個の言葉の強さにも惹かれるんですけど、最近の宇多丸さんのアップデートし続ける姿勢にはリスペクトです。

ーーヒップホップの歌詞表現においては、婉曲的な言葉遣いをするアーティストもいれば、直接的な物言いをする方もいます。その点についてはどのようにお考えですか?

三浦:そこはシンプルに考えていて。徹底的に結果にこだわればいいと思うんです。過激な方が伝わるんだったらやればいいし、過激なことで失うものがあるんだったら戦略的にやればいい。そこは自分が変えたいものとか抗いたいものから逆算すればいいと思うんです。

ーーその都度、戦略を考えれば良いと。

三浦:戦略っていう言い方はよくなかったかな。頑張るっていうのは、ただ努力するんじゃなくて、何に集中すべきかを見極めた上でそこに全力を注入することだと思ってるんです。だから、その手前にある、何のためにどういうふうにやることが最適なアプローチかを考えないでやる奴は努力が足りないなと思います。目的から逆算してベストな手段をとればいい。最近、僕の後輩の牧野(圭太)というコピーライターが、「逃げてる奴も全力で走ってるから成長はしてる」とむちゃくちゃ良いことを言ってました。GADOROは「確かに俺は逃げたけど前に逃げたんだよ」と同じことを言う。まさに、逃げることもひとつの戦略だと思います。

ーー三浦さんが音楽を聴くときにポイントを置くのは歌詞ですか?

三浦:歌詞で聞く場合もあれば、グルーヴで聞く場合も全然あります。僕のプレイリストでよく再生されているのはRHYMESTER、岡村靖幸、坂本龍一、宇多田ヒカル、キース・ジャレット……この辺ですね。最近だとSTUTSもよく聞きます。

ーー言葉に集中してしまうぶん、真逆のインストも聞きたくなるんでしょうか。

三浦:僕、音楽を聞きながら仕事ができないんです。言葉に気が行っちゃうから。

ーー音楽を聴いていて、無理やり名言を探し出したりすることも?

三浦:それはないです。人生に役立つ何かを見つけようと思っていたら、自ずと見つかりますね。自然と耳に留まる。

ーーそのためには日頃から言葉に敏感になっていたほうがいいんじゃないかと思います。その感覚を鍛えるためのアドバイスはありますか?

三浦:このことをいつか誰かに言ってあげたいっていう言葉を、1日に1個でも2個でもいいから見つけるっていうことを決めて生きるとセンサーが働くと思います。

ーーそれは悪口でもいい?

三浦:悪口でもいいと思います。だって、愛している人にいう「バカ」がめちゃくちゃ美しい「バカ」になる場合もあるじゃないですか。言葉は使う人とそのシチュエーションによって意味がいくらでも変わるから。そのときは悪口だったとしても、いつか違う愛の言葉としてそれが機能するかもしれないんで。そこはあまり考えずに、歌詞でもいいし、プロレスラーのマイクアピールでもいいし、友達のひと言でもいいし、上司の説教でもいい。それをメモしていくことから始めてみるといいような気がします。

■書籍情報
『言語化力(言葉にできれば人生は変わる)』
著者:三浦崇宏
出版社:SBクリエイティブ
価格:¥1,500(税抜)

■関連リンク
三浦崇宏 Twitter
The Breakthrough Company GO

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