さなりのライブに感じた“現場”に人々を巻き込む力ーー『1st LIVE TOUR「SICKSTEEN」』BLITZ公演を振り返る

 「え、どこの改札から出ればいいの」「マイナビBLITZ赤坂って、こっちじゃない?」そんな会話が、東京・赤坂駅に響いたのは12月23日のことだった。彼らの服装は街へ遊びにいくときとなんら変わりなく、フェスやロックのライブに出向くバンドキッズとはかけ離れている。普段からライブに通い慣れていないであろう人たちまでもライブハウスに集めてしまう、求心力の発端こそ次世代を担うニューカマーさなりだ。マイナビBLITZ赤坂で開催された、『さなり 1st LIVE TOUR「SICKSTEEN」』追加公演には、約1500人のオーディエンスが集結。デビュー1年弱とは思えぬ、熱いステージを展開した。

 「Find Myself」のイントロが流れると、大きな歓声が会場を包みこむ。ピンスポットに照らされたシルエットからは少しばかり緊張も伝わってきたが、どこかふわふわした会場の空気を凛とさせていたのは、“このステージを最高のものにする”という彼の決意だろう。サビ前には「いくぞ、赤坂!」と煽り、会場中がハンズアップ。普段はライブハウスに来ないような層も一体となってライブを作りあげているさまは、時代が動いていくようなトキメキがあった。「タカラモノ」ではジャンプでフロアを揺らし、「BLUE」ではステージを左右に動き回り観客へ語りかける。キャリアのスタートと共に始めたダンスはまだまだ拙いが、だからといって手を抜こうとする様子は一切ない。今できる自分の精一杯をやりきるという意思が、彼のマイクに入りこむブレスが物語っているようだった。

 艶っぽい歌声が響いたのは「Mayday」だ。何度も披露している楽曲だからなのか、表情やフロウが余裕を感じさせる。キラーチューンの登場に、「Mayday!」のコール&レスポンスも大いに賑わった。ダンサーがステージから捌けると、歌詞を真っすぐに伝えるメドレーへ突入。「unknown」を筆頭に「FREE STYLE」「もっと」と、丁寧に言葉を紡いでいく。吸い込まれるように何千もの視線が注がれていたのは、計り知れないさなりの気持ちがフロアの奥の観客にまで伝わっていたからに他ならないだろう。

 しっとりした雰囲気を引き継いだまま、夢を通して現在・過去・未来を歌うセクションへ。「さなりとして活動していくうちに広がった夢の歌を歌います」と告げ、「Dream」が封切られた。〈ならここに 記せばいい〉というリリックは、現在から未知なる世界へ軌跡を刻んでいこうという彼の思いを感じさせる。その後も過去へ思いを馳せる「Memory」、夢を通して未来への展望を歌う「Life goes on」と続き、アカペラでフロウをかます「Pride」によって3曲を結んだ。その姿は堂々としていて、華やいで輝いて瞬いていく未来を想起させる。今後彼が、より大きな舞台に立った姿を容易に想像させるステージングだった。

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