2020年以降のヴィジュアル系シーンとの向き合い方 アリス九號.将×ユナイト 椎名未緒×WING WORKS RYO:SUKEが語り合う
お金は別で稼ぐと腹を括れたら、次の時代の流れを作るバンドになれる(未緒)
ーーでは、そのスパイラルから抜け出すためには?
未緒:将さんが言っていた“無料のコンテンツを増やす”というのに似てるんですけど、音楽自体はたくさん作って然るべきで、世の中にどんどん発信していかなきゃいけない。けど、その発信自体を自分のプロモーションと考えてお金は別で作ろうよ、と。それが出来ればお金に縛られない活動が出来るじゃないですか。予算が限られてるとビッグチャンスを掴むのは難しいし、ある予算の中でしか活動できないと大きい一手は打てない。そうなるとバンドとしての活動がミニマム化する一方になってしまいますし。
ーー先ほど仰っていた、マネタイズとロマンを分けて考えるという話に繋がりますね。
未緒:マルチワークの時代ですし、お金は色々な仕事をして生み出しましょう、と。そしてバンドはバンドでお金を稼ぐためではなく、自分たちがかっこいいと信じてるものを表現するためにやりましょう、と。精神論に近いニュアンスだけど、“お金を稼ぐ”って考えを一回やめないとこれからはちょっとしんどいと思います。
ーーなるほど。
未緒:俺が知る限り、ここ数年で“ヴィジュアル系シーンを盛り上げよう”って声高々に言う人がめちゃくちゃ増えて、それが複雑だったんです。だって、ヴィジュアル系が最盛期を迎えたタイミングでそんなことを言っている人は多分いなかったし、ヴィジュアル系を世の中に知らしめようって思ってたわけじゃなくて、それぞれが“俺たちこんなかっこいいことやってるぜ”って信じたことを続けてたから結果的にシーンが大きくなったわけじゃないですか。
ーー目的ではなく結果的についてきたものだった、と。
未緒:それに、シーンを盛り上げようのアナウンスの裏に下心が見えてしまうんですよ。そんなこと言いつつ、CD何タイプも出してるじゃん! みたいな(笑)。その数タイプを1タイプにすれば浮いたお金で別のバンドのCDを買ったり、少し興味あるバンドのライブに行ったりできて、それがシーンの大きな循環になるのに、CD何タイプも出すからリスナーはそこに1万円かかってしまうわけで、それはシーンの活性化ではなくてバンドのみの活性化だろ、と。
一同:(笑)。
未緒:だから、お金を儲けるのは別でやるを前提に、沢山のバンドを大きくすること自体がシーンの活性化に繋がるのであれば、下心じゃないところで一手打つべきじゃない? と思います。そういう意味でアリス九號.の無料のコンテンツを増やすという考えはすごく納得したし完全に同意です。その無料のコンテンツで引っかかったら自分達のところに来る、さらにあのバンドもかっこいいらしいよって口コミで広がる流れが作れる。そこでうちのCDをもう1枚買ってよ、ではなくて、他のバンドもかっこいいから見に行ってみなよってイベントを開催できるのが本来の在り方だし、今いる客をこそこそ奪い合う現状を打破しないといけないんじゃないかなと思います。
ーーそのためにユナイトはどのようなアクションを起こしているのでしょう?
未緒:うちもちょっと前までは例に漏れず複数タイプ売りをやっていたんですが、近年からショップに置くCDは両A面とかじゃない限りCDは原則1種類、インストアイベントも求められる最低限程度しかやってないですし、いままでは商品として扱ってたドキュメント映像なども、どんどんYouTubeに投稿していっています。ユナイトをこれから少しずつ“お金がかからないでも楽しめるバンド”にしたくて、9周年ワンマンで9円のチケットを作ったのもその一環です。これからはお金は別で稼ぐからいいよって腹を括れたバンドから、次の時代の流れを作っていくバンドになれるのかなって思います。
ーーたしかにそうかもしれません。
未緒:将来どうなるかわからないし、どうなってほしいというよりは、まずは目先の細かい利益を諦めることから何か始まるのかもしれないと思っているし、ゆくゆくはユナイトを2000円払えばワンマンを楽しめるようなバンドにしたくて、その準備をしているところです。
将:ちなみに僕たちはシーンを盛り上げたいって思いで、これまでやってこなかったフェスを主催して、luz君とか別のジャンルのアーティストも呼んでやったんですけどユナイトには断られました!
一同:(爆笑)
未緒:バンド主導のフェスっていいなって思うんで本当に出たかったんですけど、その日は別のイベントが先に決まってしまってたんです(笑)。
ーーバンド主導のフェスって増えましたよね。上から下まで呼んで、いろんなバンドを見られるのはいい機会だと思います。
未緒:それが全員腹括ってタダだったらユーザー的にはさらに良くない?
ーーそれは最高ですけど(笑)。今日の鼎談で、皆さんがシーンのことを大事に思って活動されていることがよくわかりました。
RYO:SUKE:最後に声を大にして言いたいのは、「“シーンが縮小してます”って言うのを僕たちはもうやめませんか?」ってことですね。 僕たちはお客さんに喜びを与えるためにやっているし、そこに集まってくれる人たちに対して危機感を煽るようなことを自ら言うのはもうそろそろいんじゃないかなって。僕も昔はそういう姿勢を発信をしたことがあるけど今はもう違うなって思うし、「僕たちはここが素晴らしいと思っているからここにいる」ということを再確認するフェーズにシーン全体が入ってほしいという願いがあります。
ーーメディアもヴィジュアル系の素晴らしさを微力ながら発信していければと思います。
RYO:SUKE:メディアの皆さんもシーンの現状を憂うのはもうそろそろ辞めにして、一つでも多くの面白いバンドを発掘して、ユーザーの皆さんに紹介してほしいなって。だからこそ、僕たちアーテストはクオリティの高い音楽を作って発信していく。今一度「ヴィジュアル系」という文化を愛する人みんなが手を取り合って、素敵な新しい未来を作っていきたいですよね。
(取材・文=オザキケイト)
■WING WORKSリリース情報
WING WORKS 2nd Album『ENTITY』
発売中
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■WING WORKSライブ情報
2019年1月16日(木)柏PALOOZA
『UCHUSENTAI NOIZ 20th Anniversary☆SPACE PALOOZA CAMP☆CAMP13 COLOR RUSH☆SHOW』
WING WORKS / UCHUSENTAI:NOIZ / Mr.ChickenHat Timers / ジャックケイパー
WING-MEN
<LIVE MEMBERS>
Gu.toshi(iMagic.)
Ba.進藤渉
Dr.海青(ex.DAMY)
2019年1月26日(日)TSUTAYA O-WEST
『ViSULOG 9th ANNIVERSARY』
<出演>
WING WORKS / DaizyStripper / POIDOL / マザー / ユナイト / and more
WING-MEN
<LIVE MEMBERS>
Gu.toshi(iMagic.)
Gu.Daichi(ex.NOCTURNAL BLOODLUST)
Ba.YUCHI(sukekiyo)
Dr.SHO
Mp.ryu(Lavitte)
2019年2月9日(日)高田馬場AREA
KØU 1st anniversary EVENT『Ø+1』
<出演>
WING WORKS / KØU / GRIMORE / HOWL / ジャックケイパー / ビバラッシュ
WING-MEN
<LIVE MEMBERS>
Gu.toshi(iMagic.)
Ba.進藤渉
Dr.海青(ex.DAMY)
2019年3月20日(金・祝)青山RizM
WING WORKS ONE MAN SHOW『ENTITY』
※詳細後日発表