菅田将暉、楽曲によっていくつもの顔をみせる表現力 『紅白』初出場はシンガーとしての晴れ舞台に

 2017年にauのCM曲として起用された「見たこともない景色」でソロデビューした菅田将暉。翌年リリースした「さよならエレジー」がドラマ『トドメの接吻』(日本テレビ系)の主題歌に抜擢されたこともあって大ヒット。シンガーとしての存在感を確固たるものとした。注目すべきは楽曲提供に名を連ねるアーティストたちの多彩さだ。前述の「さよならエレジー」は石崎ひゅーいが、4枚目のシングル曲「ロングホープ・フィリア」はamazarashiの秋田ひろむが手がけているほか、忘れらんねえよ、あいみょん、そして米津と錚々たるメンバーが揃う。ジャンルも音楽性も異なるアーティストたちから菅田へと贈られた楽曲は個性豊か。しかし菅田はそこにただ“歌”で立ち向かい、きちんと自らの表現に落とし込んでいる。たとえば「さよならエレジー」では、ギターをかき鳴らしながら孤独の中でもがく切実さを歌に込め、「キスだけで feat.あいみょん」では、恋人と背中合わせで眠ることしかできない女性のやるせなさと気だるさを普段より幾分高い声のトーンで体現してみせた。『紅白』歌唱曲「まちがいさがし」は、Aメロでは優しく繊細に心の内を吐露し、サビでは懸命に“君”に向けて思いを届けようとする感情の振れ幅の大きさが、聴く者の心を揺さぶる。楽曲の世界観にどっぷりと浸り、歌い手としてできることを的確に分析、実践しているかのような菅田の歌唱スタイル。それは俳優としてさまざまな役柄を演じることと似ているのかもしれない。彼のシンガーとしての魅力は楽曲によっていくつもの顔をみせる、この表現力にこそあるのだろう。

菅田将暉 『さよならエレジー』
菅田将暉 『キスだけで feat. あいみょん』

 先だって放送された『MUSIC STATION ウルトラ SUPER LIVE 2019』(テレビ朝日系)でも「まちがいさがし」を披露した菅田。テレビ朝日屋上に作られた特設ステージから、東京の夜景をバックに歌い上げる姿が印象的だった。『紅白』では生オーケストラを従えての歌唱になるとのことで、豪華な演出にも期待がかかる。果たしてどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。シンガー・菅田将暉がたどり着いた晴れ舞台を心して見届けたい。

■渡部あきこ
編集者/フリーライター。映画、アニメ、漫画、ゲーム、音楽などカルチャー全般から旅、日本酒、伝統文化まで幅広く執筆。福島県在住。

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