坂本真綾、水樹奈々、天野月子ら楽曲カバー『没入time mixed by DJ和』 暁月凛のアニソンボーカリストとしてのポテンシャル

 暁月凛が、愛してやまないアニソンとゲーム音楽20曲をカバーし、ノンストップMIXで収録したアルバム『没入time mixed by DJ和』をリリース。レジェンド級の作品に新しい光を当て、暁月凛というボーカリストのポテンシャルの高さと作品の親和性を見せつける1枚になった。

暁月凛 『没入time mixed by DJ和』ティザー映像

多彩にシフトチェンジするニュートラルな透明感

 「没入」……1.沈み入ること。2.一つのことに心を打ち込むこと。暁月が、底の見えない海にどんどん潜っていくかのように、寝食を忘れて没頭したもの、それはもちろんアニソンだ。10歳のときに坂本真綾が歌ったアニメ『カードキャプターさくら』のOPテーマ「プラチナ」を聴いたのが、アニソンに興味を持つようになったきっかけ。以来アニソンシンガーという夢をひたすら追い続け、その夢が叶ったのが2015年、3000名を超える大型オーディションで見事グランプリを獲得。そして翌年の2016年に、アニメ『金田一少年の事件簿R』EDテーマ「決意の翼」でアニソンシンガーとしてデビューを果たした。小柄でまだあどけなさを残す幼い顔立ちながら、その奥にはたゆまぬ努力と熱い血潮がたぎる。アー写のクールな表情からは、それを決して悟られまいと自ら防衛線を張るような、ピリピリとした思春期の感受性が伝わってくる。

 YouTubeでは、これまで数多くのアニソンカバーをアップしてきた。オーイシマサヨシ、Uru、fripSide、藍井エイル、川田まみ、ASCA、Aimerなど。「もっとカバーを聴きたい」。そんな声に応えたのが本作で、YouTubeで公開しているカバーとは一切かぶっていないところに、彼女のこだわりを感じる。

 時代も音楽性もさまざまな20曲は、ときに熱く、ときに切なく、そしてときに爽快に。多彩な楽曲群に1本筋を通しているのは、彼女の歌声の透明感だ。たとえば最愛の父親への深い愛情と、悲しみを乗り越えて前に進むことを固く誓った水樹奈々の「深愛」では、温かいオレンジ色の光を身にまとうように、楽曲に込められた愛情をエモーショナルに歌い上げた。藍井エイルの「アイリス」では、悲しみをすべて受け入れるかのようにブルーをまとい、切なさをはらんだクールな歌声でその世界観を聴かせる。Suaraの「夢想歌」は、和テイストのメロディが印象的で、無邪気に夢を追いかける子どものようなピュアさが、暁月の繊細なボーカルによって表現された。透明感のある歌声がニュートラルだとすれば、曲によってさまざまにシフトチェンジしながら、その曲ごとに歌詞と世界観に彼女は没入し、自らの色をもどんどん変えていく。それができるのは、アニメやゲーム、アニソンへの信頼とリスペクトがあるからだろう。

関連記事