シングル『愛をクダサイ/Beginning』インタビュー

PRIZMAX、7人で語るニューシングルと『~Level 9』への思い 「今の僕たちをしっかり見ていてほしい」

 役者として注目を集める森崎ウィン(以下、森崎)を擁し、この夏は国内外のフェスに出演するなど、国際派ダンス&ボーカルグループとして活躍するPRIZMAX。12月18日リリースのニューシングル『愛をクダサイ/Beginning』は、年内での脱退がアナウンスされているメンバー・福本有希(以下、福本)のラストシングルとなる。PRIZMAXの持つ多面的な魅力を凝縮したような2曲や12月29日に行われるライブ『PRIZMAX Live Level 9 ~CIRCUS WINTER EDITION~』についてはもちろん、福本からホリック(PRIZMAXファン)へ向けてのメッセージなども語ってもらった。(古知屋ジュン)

2つで1つの要素を持っている 

ーー有希さんが卒業されるこのタイミングに出る「愛をクダサイ」が、前向きな別れを描いたような歌詞ですごくグッときたんですが、有希さん自身はこの曲をどんな風に受け止めたんですか?

福本:この曲を聴いてから脱退を決断したわけでもなく、決断したあとにこういう曲ができあがってきたわけでもなく、本当にタイミングが見事に重なったんですよ。なので、これも一つの運命なのかな……という風に考えていて。公式発表した通り、僕の中では29歳から30歳になるこの時期を大きな区切りとして考えていて、第二の人生についてかなり強い思いを持って周りとも何度も話し合って、事前報告させてもらうことになったんです。それと同時にこういう曲ができあがってきて。もちろんホリックの方々は僕へのはなむけ的なイメージを持つかもしれませんが、そういう意図でできあがってきた曲というわけではないので、この曲を誰が聴いて何を思うかは自由だと思います。ただ、僕自身は初めて聴いたときに素晴らしい楽曲をいただけたなと思いました。あまり運命を信じるタイプではないんですけれども、こういうふうにいろいろなことが重なるタイミングがあるんだなと今回すごく痛感しています。

島田翼(以下、島田):もちろんこのチームからすごく大事な人が1人いなくなるというのは僕らにとって大きなできごとではあるんですが、有希がいうように、明確に何かを連想させる意図で作っているというわけではないんですよ。なので、シンプルにいうと余白の美しさを楽しめる曲だと思っています。聴く人によっていろいろな楽しみ方や解釈ができたり、そういった余白があっての美しさを感じてもらえる曲に仕上がっているので、聴きながら自分の体験を思い返してもらったり、歌詞から連想されるようなことがこれからの人生の中で起こるとしたら、そのタイミングに聴き直してもらったり。そういう楽しみ方をしてほしいなと思っていますね。

ーーなるほど。(清水)大樹さんはラップのパートを書かれていますけれども、どういう言葉を選んでここに入れたいと思ったんですか?

清水:ラップパートは4小節ずつになるんですが、これが僕の中ではすごく短くて、その中で使いたい言葉を厳選するのが大変でした。もともと歌詞全体のストーリーとして、心のない1人の人間がいて、その人がいろいろな人間と携わっていく中で感情を持ち始める……という裏設定があったんです。それは7月のワンマンライブ『PRIZMAX Live Level 8 ~CIRCUS~』のテーマにもリンクしている部分があるんですけれども、そんなタイミングで有希の脱退が決まって。書きながら改めて僕たちの歴史を振り返ってみたら、ファンのホリックに対する感謝の気持ちが溢れてきたりして……いろいろな思いが混ざり合ったリリックが完成したと思います。

ーーラップパートも含めてじんわり心に染みるような楽曲ですよね。振りはもう完成しているんですか?

小川史記(以下、小川):ちょうどいま振り入れ中なんです(取材は11月下旬)。歌詞の言葉選びのニュアンスが表現されたような振りで、繊細な動きの中にもがむしゃらな全力感が詰まっていると思います。あと全員でのパフォーマンスのシンクロ感がありつつ、各々の個性もすごく溢れているものになっていると思うので、ぜひ楽しみに待っていてほしいです。

ーーボーカルチーム3人の歌声がまた、すごくエモーショナルで。

ケビン:アルバムの『FRNKSTN』のときには、僕たちの声の区別がつきにくい部分もあったと思うんですが、「愛をクダサイ」はバラードということで、僕や森くんのパート、ウィンくんと3人の声が重なるパートもわかりやすいんじゃないかと思います。テンポ的にもメロディの良さ、歌詞の良さが伝わりやすい楽曲なのかなと。

森 英寿(以下、森):アルバムは全部英語詞だったので、まず発音の部分でかなり苦労したんですよ。今回は日本語詞で一瞬安心したんですけれども、これはこれで歌い方で歌詞をしっかり伝えなければいけないので、気持ちを乗せた歌い回しというのが難しかったです。

森崎:僕の第一印象は、昔のPrizmaXを思い出させるような楽曲だなと。前回のアルバムからはすごくコンセプチュアルなスタイルでやっているんですけれども、その中でもこの楽曲は僕が個人的に心躍るようなテイストで、改めてこういう曲が好きなんだなと気づかされたというか。昔のPrizmaXの良さもあるこの楽曲を、今のボーカル3人で表現する面白さもあると思います。ボーカリストとして、それぞれが本当に歌が好きなんだというのが純粋に伝わるような楽曲をいただけたことに感謝していますね。あと7人としては最後のリリースになるんですが、この曲を7人でリリースできたことに、7人になった意味があるなと思っています。

ーーJeff Miyaharaさんのプロデュースでアッパーな「Beginning」は、ライブでパフォーマンスしている様子が目に浮かぶようで。歌割が細かいですが、ボーカルチームはどうレコーディングに取り組んだんでしょうか?

森:「愛をクダサイ」とはテンポも含めてかなり違った感じの曲ですけど、個人的にはいろんな曲を聴くので、こういうのもかっこいいなと思ってワクワクして。

ケビン:個人的に、この曲は『FRNKSTN』の進化型というイメージで捉えていますね。ダンスも激しいですし、Bメロになるとアルバム曲の「BAD LOVE」のようなセクシーさもあるので、あの7曲の世界を組み合わせて進化した“怪獣”みたいな印象です。

ーーそういうふうに聞くと、アルバムの物語が続いている感じで面白くなってきますね。ウィンさんは歌ってみてどうでしたか?

森崎:『FRNKSTN』は勢いのあるサウンド面を含めて、僕たちにとってすべてが新しい挑戦だったんですよね。その中でボーカリストとしての新しい自分が見えた部分もあったのが、個人的にはすごく大きな収穫だったんです。だからこの「Beginning」をいただいたときにも、『FRNKSTN』の制作に取り組んだからこそ曲の解釈がちょっと変わったり、レコーディングで求められることが把握できていた部分もあったと思います。率直に「高音パート、高ぇ!」と思ったりもしましたけど(笑)、アルバムのときにも頑張れたことを思い出しながら取り組みました。

ーー血が踊るようなサウンドで、ダンス面もすごく楽しみです。

清水:まだ振り入れ中なんですけど、すごく難しいんですよ。一見わかりにくいと思うんですが、踊るとなるとかなり難易度が高い振付だと思います。振付とか構成ということだけじゃなく、シンプルにオンビートのリズムをとるのが難しい曲なので、けっこう苦戦しています。

島田:「愛をクダサイ」もこの曲も、ずっとお世話になっている安心と信頼の50(FIFTY)さんにお願いしていますね。僕たちのことを一番わかってくれていて、僕らの空気感や伝えたいことを具現化してくれる方なので。『~Level 9』の演出や構成、ステージングも全部50さんにお願いしているんです。

ーーかなり対照的な2曲をダブルAサイドにまとめたんですね。

森崎:過去のPrizmaXの色を踏襲したような「愛をクダサイ」と、『FRNKSTN』の流れを汲んだ「Beginning」を組み合わせた形になりましたけど、エンターテイナーとしていろんな面を見せていくということに、僕らがグループでやっている意味があると思っているので。

島田:裏コンセプトがあって、この2曲は身体でいうと動脈と静脈を表しているんですよ。対になっているわけではないけれども、2つで1つの要素を持っているという意味合いで。というのも、今回のシングルは『~Level 9』にリンクする形でリリースになっているんです。前回の『~Level 8』の裏テーマは“五感で楽しむ大人のサーカス”だったんですが、あのライブでフォーカスできなかった部分をフォローする続編のような感じですね。どういうことかというと、『~Level 9』は五感ではなくて第六感(注:五感を超えた、理屈では説明しがたい心の動きを指す)の部分、たとえば見ていて心臓がドキドキするとか、何かわからないけれどもすごくグッとくるとか、そういう瞬間瞬間を切り取って伝えていきたいなという思いがあるんですよ。それを象徴するような意味で、ライブ自体のテーマが“心臓”になっているんです。

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