OAUの6人が生み出すとめどない高揚 『A Better Life』ツアーから感じたバンドの包容力と奥行き
TOSHI-LOWとMARTINがゆるいMCを交わす箇所もないことはないが、中盤にRONZI、KAKUEI、TOSHI-LOW3人のトークコーナーを設け、第一部・第二部構成で見せたのは着席スタイルに相応しかった(トーク中トイレ休憩に行ったり、赤子をあやしに退出する親などもチラホラ)。がっぷり四つで向き合うライブハウスではないからできることがある。さらにはトークのあと、TOSHI-LOWもジャンベを抱えて激しいリズムセッション「Banana Split」に突入、観客を一気に総立ちにさせ、すかさずエネルギッシュな「Making Time」になだれ込むなど、全体の構成も見事だった。6人の個性を尊重しながら全員でコンサートの流れを作り上げ、観客の気持ちも巻き込んでとめどない高揚を生み出していく。あぁ、いいバンドだなと思った。いい音楽だということはすでに知っていたけれど、それとは違うのだ。いいバンド、のニュアンスは。
ちょうど2時間の本編のあと、アンコールは「Traveler」と「帰り道」。前者は15年前から続いてきた〈僕らの旅〉を愛おしく振り返るナンバーで、後者は〈ただいま〉と〈おかえり〉と言い合える日々の大切さを噛みしめる一曲だ。『きのう何食べた?』の曲といったほうが早いのだろう。ただ、MCにあったように、海に消えた家族に最後の〈いってらっしゃい〉を言えなかった、あるいはちゃんと言ったのかどうか覚えていない、そんな後悔を今も抱えているという石巻の友人の話も、この曲のリアリティを増幅させてくれた。何気ない日々が一番大事。改めて書くと安っぽい、手垢にまみれた言葉だなと思うけれど、この2曲を聴いている間そんな気持ちになった人は皆無だろう。必然があり実感があった。これが終わったら大事な人のもとに帰ろうと思わされるだけの、心の動きが確かにあった。
いいバンドは、その人たちにしかできないこと、その人たちだから歌えることを持っている。無理な背伸びや憧れもないが、ただ等身大でいるだけでは聴き手を納得させられないものを届けてくれる。“いい音”だけでは括れないもっと確かなものを。OAUがそういうバンドになったことを、ほんとうに喜ばしく思う。当たり前の言葉で書きたい。おめでとう、ありがとう。
(文=石井恵梨子/写真=KAZUYAKOSAKA)