アルバム『確率論≠paradox』インタビュー
メトロノームが語る、“再起動”を経た21年目への自信「僕らが一緒にいることは初めから決まってたこと」
メトロノームが、11月20日にニューアルバム『確率論≠paradox』をリリースした。メトロノームは、1998年に結成。2009年から7年間の活動休止期間を経て、「第10期メトロノーム」の開始を発表し、9月21日にシングル『解離性同一人物』でメジャーデビューを果たした。そしてバンドは今年、活動21年目を迎えた。今回のインタビューでは、活動休止中に変化したバンド内の関係性や、そこから生まれる楽曲、そして今作について語ってもらった。(編集部)
どんな曲であってもこの3人でやればメトロノームになる
ーーバンドを再起動させてから約3年、今年で活動21年目を迎えたメトロノーム。現在のバンドの状況はいかがですか?
フクスケ(TALBO-1):以前は3人ともあくまでバンドメンバーとして接していた部分が大きかったような気がするんですけど、再起動してからは飲み友達くらいの接し方になっているところがあって。より距離感の近い、砕けた関係になっていると思うんですよね。だからこそ、手を抜いているとかそういったことではなく、いい意味で軽い気持ちでメトロノームに向き合えているところもありますね。すごくいい雰囲気の中、いい活動ができているんじゃないかな。
ーーそういった変化に何か理由はあるんですか?
フクスケ:休んでいた7年分、僕らも大人になりましたからね(笑)。そういう部分が一番大きいような気はします。あとは、活動している間には見えなかったことが休んでいたときにちょっと外側から見えたりもしたので、気持ち的に楽にやれるようになったところもあるかもしれないです。
リウ(TALBO-2):活動休止してる間は次にまたメトロノームをやるかどうかなんてまったく決まっていなかったので、ミュージシャンとして新たな基盤を作るべく活動していたわけです。で、その基盤がしっかりできた上でメトロノームを再起動することができたので、感覚的にちょっと余裕があるんだと思うんですよね。その結果、各メンバーに対してまかせるところはちゃんとまかせられる、しっかり頼れるようになったっていう。いい意味で、いろんなことを分担してやれているからこそ、今までよりもラフな関係でいられるんじゃないですかね。
フクスケ:再起動してからは、なんでもとりあえず3分の1でやることにしてますからね。誰かの負担を大きくすることなく、3人が平等に曲を作り、平等な数だけ採用していこうと。それによって三者三様の色がしっかり見えて、アルバムとしていいものになるってことは『CONTINUE』(2017年リリースの再起動後一発目のアルバム)を作った時点でよくわかったので、以降もそのスタンスは貫いてます。
ーー各自がソングライティングをする際、メトロノームの楽曲として意識するところって何かありますか?
フクスケ:僕はそんなに気にしてないですね。前からそうなんですけど、一番好きなように作れるのがメトロノームなので、もう自由にやらせてもらってます。
リウ:僕も自分の好みのド真ん中のことをやらせてもらえているのがメトロノームだと思っていて。ここでやりたいことをやり切っているので、他では逆に何か違うことをやってみようかなっていうニュアンスだったりはします。
ーーご自身の趣味嗜好をダイレクトにぶつけられるのがメトロノームだと。シャラクさんはいかがですか?
シャラク(VOICECODER):僕ははっきりと使い分けて作ってる感じですね。メトロノームの曲はメトロノームのために作っているから、選考に漏れたとしても他の活動ではちょっと使えない、みたいな作り方をしてます。
フクスケ:まあでも、最近はどんな曲であってもこの3人でやればメトロノームになるっていう確信があったりするんですよ。だからこそ各々が自分なりの作り方をして、バラバラな楽曲を持ち寄ったとしても、最終的にはしっかりひとつにまとまるっていう。以前はもうちょっとメトロノームを意識して、そこに寄せた曲を作っていたような気がするけど、今は本当に自由。そういう部分がさっき言ったメンバー間の関係性にも繋がっているんだと思いますけどね。
リウ:うん。再起動に関しては僕が声をかけたことがきっかけにはなっているんですけど、その段階ではこんなにいい状況でまたバンドができるなんて想像してなかったんですよ。メイクするかしないかとか何も決めず、単純に「また3人でやろうか」くらいなノリだったから。でも、再起動一発目のZepp TokyoでのライブとキングレコードさんからCDを出させていただくようになってから、徐々に今のメトロノームの雰囲気が見えてきた感じなんですよね。
ーー再起動後、音楽シーンの中での居心地はいかがでしょう? 活動休止前と比べると、ジャンルのクロスオーバー化が進んだようにも感じるのですが。
フクスケ:実際のところ、「僕たちどこのシーンにいるんだろう?」ってくらい自分たちの立ち位置がわかってないんですよ(笑)。うちはうちでしかないみたいな感じなので。バンド自体は気持ちよくできているから、対バンをやったりイベントに出たりすれば、いい刺激をもらえて楽しいんですけど……シーンっていうのはよくわからないんですよね。
ーー当初のメトロノームはヴィジュアル系のシーンにくくられがちでしたけど、今やもうそんなくくりも必要ないような気がしていて。そういう部分での動きやすさがあるんじゃないかなと思ったんですよね。
フクスケ:そこに関しては僕らもいろんなバンドさんと対バンしていくことを理想にはしているんですよ。他のジャンルで好きなバンドさんとご一緒してみたいなっていう。とはいえ、実際はヴィジュアル系の枠に入りがちで、メイクしてないバンドさんと一緒にやることがほぼほぼない状況なので、まだちょっと上手くいってない感じではあるかな。
リウ:もどかしさは確かにありますよね。でも、居心地で言ったら、昔よりはかなり良くなってるとは思います。だってね、昔はどこのシーンにも入れない感じだったのに、今では「いろんなバンドとやってみれば?」って言われることが多かったりもするので。
ーー先ほど、再起動のタイミングではメイクするかしないかも決めていなかったという発言がありました。ということはまったく新しいスタイルでリスタートすることもできたわけですよね。
リウ:そうですね。活休してた7年間、シャラクくんはヴィジュアル系とは違ったジャンルで活動していたりもしたので、メトロノーム再起動にあたっては「どっちでも大丈夫だよ」っていう感じではありました。
ーーそこでメイクをしないという選択をしなかったところにメトロノームの強いアイデンティティを感じますよね。今まで愛されてきたスタイルでまた闘っていこうという。
シャラク:そうですね。再起動一発目のライブで化粧をしてなかったら、きっとみんながっかりするだろうなと思って。昔から応援してくれている人たちも納得するような出方はしないといけないって思ってましたね。今も化粧を落としたい気持ちはまったくないですし。このスタイルは貫いていくべきだと思うので。
ーーしかも、揺るぎないスタイルはありつつも、その音楽性はより自由に、より幅広くなっていますからね。そこが今のメトロノームのおもしろいところだし、他ジャンルへと攻めていける大きなポイントにもなっているなと。
フクスケ:そうですね。最近はほんとにみんな自由に曲を作ってますからね。そこに昔のメトロノームを再現しようなんていう感覚は一切ない。今回のアルバムは特にそうだけど、今までになかったような雰囲気の曲も入れることができたし、しっかり次に繋がるチャレンジができているんじゃないかなと思います。