シングル『解離性同一人物』インタビュー
メトロノームが語る、7年ぶりの再起動とこれから「全員がいい具合にメトロノーム側を向いてる」
メトロノームは98年に結成、いわゆる「V系バンド」の中で異質な音楽性でありながら、シーンの中で確固たる地位を獲得するも、09年に東京・渋谷公会堂(当時C.C.Lemonホール)公演で活動休止状態にあった。それが今年の5月、7年の時を経て「第10期メトロノーム」の開始を発表、9月19日に行われたZepp Tokyoでの復活公演『Please Push Play』のチケットはソールドアウト、しかも9月21日にシングル『解離性同一人物』でメジャーデビューを果たした。2016年に突如“再起動”した「元祖テクノポップビジュアル系バンド」メトロノームのメンバー・シャラク(VOICECODER)、フクスケ(TALBO-1)、リウ(TALBO-2)に話を聞いた。(藤谷千明)
「やりたいことをその時々にやっている」(フクスケ)
ーーメトロノームは、リアルサウンド初登場になりますが、資料には「元祖テクノポップビジュアル系バンド」とあります。
フクスケ:基本的に周囲に言われてそういう表現になっているのですが、基本的にはロックとエレクトロが融合したテクノポップというスタンスでやっております。
ーーメトロノームは基本的に「ヴィジュアル系シーン」の中で活動されていましたが、音楽性、ボーカルのスタイルひとつとっても当時からかなり異質だと感じていました。結成しての初ライブは池袋サイバー(ヴィジュアル系の老舗ライブハウス)でしたが、当初から「ヴィジュアル系」として活動しようと考えていたのでしょうか?
フクスケ:サイバーに出ようって決めたのはシャラクだっけ?
シャラク:当時池袋サイバーはニューウェーブのイベントをよくやっておりまして。
フクスケ:あの頃はデジタル系のイベントも多かったよね。
リウ:いつの間にかだよね、ヴィジュアル系一色になったの。
シャラク:だから特にヴィジュアル系というつもりはなくて。
ーー結果的に「ヴィジュアル系」と、捉えられるようになっていたと。
フクスケ:初期の頃からメイクもしていたんですが、なんというか、もう少しヴィジュアル系的ではなかった。
ーー「ナゴム系」的な?
フクスケ:そういう感じでした。時代の流れですかね? だんだんメイクしていくと、ちょっとかっこよく綺麗にしてみようかな。僕なんか特にそうでした(笑)。なんとなく「こういうメイクにしたら売れんじゃね?」くらいの、いつから変わったかなんて覚えてないくらい。当時そういう話ってしたっけ?
シャラク:してない。
フクスケ:だから。悪い言い方をしたら「ごちゃ混ぜ感」というか、自分たちがやりたいことをその時々にやっているような感じです。メンバーのその時々の気持ちでどんどん変わっているので。リウはメトロノームに入る前はヴィジュアル系ではないバンドにいたし、シャラクは活動休止のあとはすっぴんでライブしていましたし。こうやってメトロノームになって、「メトロノームだから」って雰囲気でやってることはあります。
ーーテクノポップ、電子音楽と親和性の高いバンドサウンドは、00年代当時のV系シーンのみならず、音楽シーン全体からしてもわりと異質だったと思うんです。近年、たとえばボーカロイドを使用した楽曲がチャートに入ることも珍しくなくなり、音楽シーン全体が変わってきているじゃないですか。活動休止前と再起動後の受け入れられ方が、変わっているという感触はありますか。
リウ:それはフクスケさんの(ZeppTokyoライブでの)名言「時代が追いついた!」ですよ(笑)。
フクスケ:追いついたとかは、周りから言われてるだけというか、インタビュアーさんとかがいい感じに言ってくれるのを真に受けてるだけです(笑)。
リウ:でも僕は「ピコピコしてる」「ピコってる」っていう表現を音楽に対して使っているのを最初に聞いたのはメトロノームだったんですよ。
ーー近年ですと「ピコリーモ」など様々な使われ方をしていますね。
リウ:フクスケくんやシャラクくんが言葉にしているのを、「ポップだなあ」と思っていたんです。でも、休んでる間に色んなところで聞くようになったなあと。もちろん自分たちが最初だとか、大それたことは言えませんが。
ーー「時代が追いついた」という一例として、キングレコードからのメジャーデビューがありますね。こちらの経緯は?
リウ:再起動ライブをやろうということになり、やるなら一回きりじゃくて、ちゃんとやろう、新曲作って音源出そうという話を3人でしていました。そこで前の所属事務所(ART POP ENTERTAINMENT:イベンター、事務所。NoGoDなどが所属)が、いろんなところに声をかけてくれたんですね。それでキングレコードからお声がけいただいて。
フクスケ:このタイミングで出すなら、ちゃんとした会社から出そうと。「ちゃんとした会社」っていう言い方もおかしいですけど、大きな会社から出したかった。
リウ:自主制作でも作れるけど、今回はそうじゃない方法が良かった。
フクスケ:それでキングレコードさんからCDを出してもらえることになり、その時点では「メジャーデビュー」ということに気がついていなくて(笑)。
リウ:3回目くらいの打ち合わせの時にシャラクくんが、「もしかして……メジャーデビュー?」とボソッと。
シャラク:(無言でうなづく)
フクスケ:みんな気づいてなかった(笑)。
シャラク:誰も言わないからもしかして違うのかな? って思ってた。
フクスケ:俺は気づいてなかった。
リウ:でもCD出してみて、反響の大きさが全然違うというか「行き渡ってる」感じがうれしいですね。「再起動しました!」という宣言にもなりますし。
フクスケ:(ネット上で配信される)ニュースの数も違いますね。
リウ:自分たちも嬉しいですけど、そういうことひとつひとつに対してファンの人が喜んでいるのが嬉しいです。「メトロノーム、どうした?」みたいな(笑)。
フクスケ:ファンの間でも「突然真面目になった?」みたいな雰囲気が醸し出されて。前から真面目ですけどね(笑)。
リウ:本当に良い再スタートが切れたと思います。