乃木坂46と欅坂46、『ベストヒット歌謡祭』で発信したメッセージ 昨年のパフォーマンスを振り返る

 一方で、欅坂46は7枚目のシングル曲「アンビバレント」を披露した。この日はスケジュールの都合で4名が欠席。空いた席を埋めるようにしてけやき坂46(現・日向坂46)から4名が参加し、”欅坂46×けやき坂46 史上初のコラボ”が実現した。

 いま思えば、このメンバー補充にも似たコラボレーションは、この曲のテーマが”集団から離れたい/離れたくない”といったグループ活動におけるメンバーの内面の葛藤を描いたものだとしたとき、数カ月後に改名しデビューするけやき坂46の4名を含んだことで、両グループにとっても重要な意味を持っていたと考えられる。けやき坂46が1stアルバム『走り出す瞬間』をリリースし、姉分的存在の欅坂46から徐々に分離していったこの年。欅坂46から独立するその寸前を捉えた貴重な一夜だったと見ると、この日のパフォーマンスは幾ばくか深みが増すだろう。

 カメラは上方から、メンバーらが小さく踞ってひとつに固まっている状態を捉えて始まる。スカートを揺らす仕草から気持ちの”揺らぎ”が伝わる。やがてひとつだったグループが、腕や身体を大きく広げたことで散らばり、画面いっぱいに”自由さ”や”解放感”が充満する。あちこちでふらついていたり、奇妙な動きの連続で、一見この楽曲には掴み辛さがある。しかし、サビでは一転して全員揃っての切れ味鋭いダンスを見せ、センター平手友梨奈のスカートをフロント4名(けやき坂46から2名)が激しく引っ張ったり、逆にそれを平手が力強く振り払ったりする。そこから伝わるのは、グループという名のある種の”鎖”に縛り付けられる個人のもがきや苦しみだ。ラストの大サビ〈一人になりたい/なりたくない〉、カメラはここで、はじめてメンバーの顔を認識できる速度で(と言っていいほどそれまでが目まぐるしいカット割りで)それぞれの表情を映し出していく。必死に食らい付いている者もいれば、笑顔を見せる者もいる。グループ活動から一旦離れていた平手。平手不在の中、グループを支え続けたメンバーたち。さらに、徐々に一人立ちしようとしている妹グループ。そうしたそれぞれの立場や内面を炙り出すかのようなカメラワークを経て、この年の年末を始めていた。

 異なる世界観を表現していた乃木坂46と欅坂46の両グループのパフォーマンスだが、どちらも集団の中で成長する個人の自立を描いた作品だと考えれば、両者の根底にあるものはそう遠くない。好きだったグループから離れるメンバーの決意、一人になりたい・なりたくないと集団との距離感に悩むメンバーたちの苦悩。それぞれ描き方は異なれど、伝えたいメッセージや届けたい相手は、決して相容れないものではないだろう。

 今年の年末の坂道グループからは、いったいどんなパフォーマンスが見られるのか。まずは今夜の”初陣”から見定めよう。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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