Mrs. GREEN APPLE、フレデリック、ポルカ……新作に見るバンドサウンドの可能性

 最後に紹介したいのが、ポルカドットスティングレイのアルバム『ハイパークラクション』。この作品は、前述した二つのバンドに比べると、ギターのカッティングが印象的で、一般的な“バンドサウンド”のイメージに近い作品になっているように感じる。収録曲「バケノカワ」も「オトシマエ」も、音のバランスで言えば、ギターなどの高音域の音を強めに打ち出しており、バンドが作り出すグルーヴを存分に体感できる。ただし、アルバム全体で言えば、純粋な“ロックサウンド”とはひと味違う部分もある。例えば、「おやすみ」は90年代のR&B的な装いを強め、ポルカドットスティングレイが持つポップ性を強く打ち出したナンバーになっている。そもそも、ポルカドットスティングレイ自身が良い意味で“バンド”という枠組みにこだわっておらず、「面白いことがあれば何でもする」「リスナーの動向を読んだうえで、作品を提示する」という考えを持っているため、ジャンルに対する意識がフラットだ。今回のアルバムもそんなポルカドットスティングレイの哲学を随所に感じることができる。

ポルカドットスティングレイ「バケノカワ」MV
ポルカドットスティングレイ「阿吽」MV

 今回の記事では、オーセンティックなロックから距離を置き、バンドサウンドに新たな可能性を提示している3組の新作を紹介してみた。シンプルなラベリングだが、様々なポテンシャルを秘めた“バンド”という形。その奥深さの一端がこの記事で見えたのならば、幸いである。

■ロッキン・ライフの中の人
大阪生まれ大阪育ち。ペンネームにあるのは自身が運営するブログ名から。人情派音楽アカウントと標榜しながら、音楽メディアやTwitterなどで音楽テキストを載せてます。

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