EMPiRE、最新シングルが3位に WACKらしいブランドイメージの形成が功を奏す

 さて、結果としてオリコンのデータベースで何が起きたのか? 実は、やっとCDがリリースされた2019年7月の2ndシングル『SUCCESS STORY』まで、フィジカルのデータがないのです。そして、『SUCCESS STORY』はいきなり33,000枚以上のセールスを記録します。

EMPiRE / SUCCESS STORY [OFFiCiAL ViDEO]

 そうしたデータを見たときに私が振り返ったのは、WACKの社長である渡辺淳之介がマネージャーを務め、WACKアーティストの楽曲を手がける松隈ケンタがサウンドプロデューサーを務めていたBiSのことでした。ここでは、2010年から2014年まで活動していた第1期BiSのことを指します。BiSは、2011年3月に最初のCDをリリースしましたが、オリコンのデータ上で1万枚を超えるのは、2013年6月の『DiE』まで待つことになります。約2年。第1期BiSと比べるとEMPiREは、アーティストのブランドイメージをうまく形成しながら、CDリリースにあわせて鮮やかな数字を出しているわけです。

 「RiGHT NOW」は、JxSxK作詞、松隈ケンタ作曲、SCRAMBLES編曲。JxSxKは渡辺淳之介の変名、SCRAMBLESは松隈ケンタ率いる音楽クリエイターチームです。「RiGHT NOW」は、クラブミュージックも連想させるエレクトロを響かせつつも、あくまでサウンドはロック。そして、松隈ケンタならではの「泣きのメロディー」、つまり歌謡性を入れることで、メンバーのボーカルのウエットな側面を引きだしています。さすが手練れの技だと感じました。

EMPiRE / RiGHT NOW [OFFiCiAL ViDEO]

 カップリングの「NEVER ENDiNG」は、oni/MiDORiKO EMPiRE作詞、oni作曲、SCRAMBLES編曲。oniもSCRAMBLES所属のクリエイターです。こちらはメロディの開放感、疾走感が特徴的。「RiGHT NOW」同様にこちらもエレクトロなサウンドなのですが、2曲ともEDMのようなドロップやビルドアップを決して入れないところに、強固な「SCRAMBLESらしさ」を感じました。2019年現在も、アイドルシーンにはEDMの残滓がまだまだあるので、なおさらそう感じるのです。

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

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