『京都音楽博覧会 2019』

くるりと『京都音博』の“すごさ”を改めて実感 兵庫慎司による全アクトレポート

くるり

1 グッドモーニング
2 ブルー・ラヴァー・ブルー
3 スロウダンス
4 琥珀色の街、上海蟹の朝
5 キャメル
6 Tokyo OP
7 ジュビリー
8 ばらの花
9 ブレーメン
アンコール 宿はなし

 くるりはストリングス×2、鍵盤、ドラム、管楽器×1(なのでファンファンと2人)、ギターがサポートで加わった9人編成で9曲プレイ、アンコールの「宿はなし」はメンバー3人だけでプレイ。これまで13回ここでくるりを観て来て、テンパってる年もあったし、感極まっていた年もあったし、攻撃的に感じた年もあったし、頭と最後に(違うメンバーで)二回出た年もあったし、ウィーンのオーケストラとの共演を豪雨で中止せざるを得なくなって悔し涙を流した年もあった。という中にあって、今年がもっとも、なんというか、平常心に見えた。主催者としての責任とか、トリとしての使命とか、あらゆるものから解き放たれて、虚心に自分たちの演奏に没入しているような。マニアックな方には寄っていないし、「代表曲を並べました」みたいなベタな方にも寄っていないのが絶妙なセットリストにも、9人の衣裳にも、淡々としながらものすごい情報量の演奏にも、表れているように感じた。というところが、なんだかとてもすばらしかった。

 “情景描写がすばらしい曲”くるり内1位、いや日本のロックでトップクラスの「グッドモーニング」でそっと始まる。「ブルー・ラヴァー・ブルー」「スロウダンス」と『ワルツを踊れ Tanz Walzer』の曲を続けて演奏し、「ああ、だからこの編成なのね」ということが理解できる。ド名曲「琥珀色の街、上海蟹の朝」の最初の一音でオーディエンスがワッと湧くーー1曲1曲、一瞬一瞬、とにかく、今この場にいることが心地よいし幸福な時間だった。最後に三人だけで「宿はなし」、定番なんだけど、その安定感まで含めてすばらしかった。

佐藤征史(Ba/Cho)

 毎年欠かさず来ているが、今年の模様を見て、メンバーが入れ替わったり、音楽性がどんどん変わったり、いろいろありつつもずっと続いているくるり、そして毎回趣向を凝らし、様々なアーティストを呼んで行なわれる『京都音博』って、やっぱりすごいんだな、と改めて思ったりもした。

(写真=井上嘉和)

■兵庫慎司
1968年生まれ。音楽などのライター。「リアルサウンド」「DI:GA ONLINE」「ROCKIN’ON JAPAN」「週刊SPA!」「KAMINOGE」などに寄稿中。

京都音楽博覧会2019 公式サイト

関連記事