ましのみが迎えた“変化”の理由 sasakure.UKとのコラボ曲「エスパーとスケルトン」から紐解く

 シンガーソングライター・ましのみが10月14日にリリースする配信シングル曲「エスパーとスケルトン」は、まさに2019年のポップスという手触りがする作品だ。

 エレクトロニカを連想させるかのようなイントロで幕を開けると、まず〈どこまで見透かしているの?〉と歌われる。この冒頭1行のみで、相手に心を読まれてしまう主人公の姿が浮かび上がり、「エスパーとスケルトン」という不思議な曲名の謎が一瞬で解けてしまう。自分より一枚上手な好意を寄せる相手をエスパーに見立て「君エスパーね」「私はスケルトンね」という関係性を歌った楽曲だ。

 サビでは〈迂闊に恋せよ乙女〉と繰り返し歌われる。穏やかながら、そこには確実に高感とカタルシスがある。ましのみのボーカルの中でも低めの音域が多用され、生々しさも感じさせる。ソングライターとしてはもちろん、シンガーとしてのましのみの魅力も感じられる。

 作詞作曲はましのみ、そして編曲を担当しているのはsasakure.UKだ。ボカロP出身のミュージシャンであるsasakure.UKは、2019年に桜エビ~ずに「214」という傑作を書き下ろしたのも記憶に新しい。「214」では、作詞作曲編曲のすべてをsasakure.UKが手がけていた。

 そのsasakure.UKは、「エスパーとスケルトン」ではエレクトロファンクやチップチューンの要素もサウンドに盛り込んでいる。ましのみの楽曲のポップさを最大化し、さらに2019年のポップスに仕上げている。

 今回のコラボレーションについて、sasakure.UKは「音楽家とはこうあるべきだ」とコメントしている。その真意をましのみはこう語る。

「明確にやりたいことがあったので、単純に私がうるさかったんだと思います(笑)。ピアノと声をいかして、隙間感があって、高揚感があるものにしたかったんです。その上で、sasakure.UKさんの意見をいかしつつ、やりとりをたくさんして、いつも以上にこだわって制作しました。メジャーデビューしてからいろいろな楽曲を発表していく中で、スクエアなビートで高い音で歌うと、聴く人によっては曲の内容が入っていかないのかな、ということを感じたこともあって」

 「エスパーとスケルトン」では、ましのみは歌い方だけではなく、歌詞も変化させた。

「いい曲であることはもちろん、何度も聴いてもらうため、口ずさめるものや、キャッチーさは大切にしています。今回からはネクストステージで、歌詞については作り込みすぎないようにしました。聴き手が頑張らなくても聴ける、隙間のある歌詞にしたいなと思ったんです」

 ましのみはピアノを弾きながら歌う。それもコラボレーションの刺激となった。

「今回はグランドピアノと声を中心にしたかったんです。sasakure.UKさんも生ピアノは初めてで。ベースの音色やリバーブ感もいろいろ試してもらって、いろんなことにチャレンジさせてもらいました。極限まで生に近いベースの音を使った打ち込みは、弾き語りだけじゃ表現できないノリにしたかったし、体が動き出すような音楽にしたくて。生音とかエレクトロとか、一つのジャンルや要素にとらわれたくなかったし、自由な部分を制限されることなく魂を届けたかったんです。アートワークもMVも、軸が通っているように、ひとつひとつ精査しながら時間をかけました」

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