the pillows「Funny Bunny」はいかにして特別な歌となったか エルレ、Uru…カバーの歴史辿る

 ところでこうしてCMで起用された「Funny Bunny」への反響について探っていたら、その中に「懐かしい」というリアクションをするリスナーもいた。たしかにこの曲は20年の間にさまざまな形でカバーされているので、そう感じる人がいるのも当然といえる。

 順を追って振り返ろう。the pillowsによるオリジナルの「Funny Bunny」は、1999年にリリースされている。当時のオリジナルアルバム『HAPPY BIVOUAC』の中の1曲だった。

the pillows / Funny Bunny

 この頃は彼らがアメリカンなオルタナティブロックに傾倒していた時期で、それまでのUKロック的な段階を知るファンはずいぶん土臭い音になったと感じたはずだ。当時の山中はThe PixiesやThe Breeders、Sonic YouthやThat Dogにハマっていたことを明らかにしている。こうしたオルタナ系のバンドは爆音を鳴らすことが多かったが、中にはメロディアスな曲もあり、「Funny Bunny」はそうした部分をうまくバンドサウンドに取り入れていたと思う。

 ただ、とくに派手なナンバーでもない「Funny Bunny」は、あくまで「彼らの中のいい曲」という立ち位置だった。それが年を追うごとに特別な歌へと変わっていったのである。

 まず2000年になり、ガイナックスによって製作されたOVAのアニメ『FLCL(フリクリ)』である。the pillowsの楽曲が数多く使われたことでも知られている作品で、「Funny Bunny」もその中の1シーンでフィーチャーされた。

 続いて2004年にはthe pillowsのトリビュート盤『SYNCHRONIZED ROCKERS』がリリースされる。この中で「Funny Bunny」はELLEGARDENによって演奏されており、オリジナルよりもエモーショナルな熱気が感じられる仕上がりになっている。もっとも細美武士は個人的な思い入れの強かった「この世の果てまで」のほうを演奏したかったようだが、そちらはYO-KINGが唄うことが決まっていたため、数ある楽曲の中から「これは名曲じゃないか」と感じた「Funny Bunny」を選び直したといういきさつがある(参照:書籍『ザ・ピロウズ ハイブリッド レインボウ』2009年、USEN)。

 また、2007年から『週刊少年ジャンプ』で連載が始まったマンガ『SKET DANCE』では、ストーリー中のバンド演奏の場面で「Funny Bunny」の歌詞が登場していた。そしてこの作品がテレビアニメ化された2011年にはthe pillowsも主題歌に関わりながら、カバーバージョンも作られた。「Funny Bunny」はThe Sketchbookというこのアニメのために作られたバンドによって演奏されている。これは楽曲の良さをストレートに生かした、バランスのいいアレンジになっている。

Sket Dance - The Sketchbook - Funny Bunny

 2014年にはthe pillowsのトリビュート盤の第2弾『ROCK AND SYMPATHY』が制作され、ここではBase Ball Bearがカバー。やや軽やかなアレンジだが、その一方ではサビ始まりの構成にすることで楽曲のエネルギーが押し上げられている。もうこの頃には「Funny Bunny」はすっかり特別な曲として認知されていた。

 さらに翌2015年にはアイドルネッサンスによる「Funny Bunny」が発表されている。こちらもサビ始まりで、しかもストリングスの音色も使ったドラマチックなサウンドだ。これは今年のUruのバージョンにも言えるが、男性的な言葉使いの歌詞を女性が唄うことで、歌に込められた意志がより引き立てられる感がある。

アイドルネッサンス「Funny Bunny」(MV)

 最後にもうひとつ、「Funny Bunny」のスペシャル版が体験できた瞬間について記しておこう。その舞台はこの4月に東北にて行われた『ARABAKI ROCK FEST.』だった。ARABAKIは大型のロックフェスの中でも最初にthe pillowsをヘッドライナーに起用したフェスだが、今年は彼らの30周年を祝うトリビュートを企画。the pillows がGLAY、ストレイテナー、9mm Parabellum Bullet、UNISON SQUARE GARDEN、SHISHAMOといったアーティストたちと共演するそのステージのラストに現れたのは、山中の少年時代からの憧れである佐野元春だった。そして熱狂の中、彼らは「Funny Bunny」と佐野の代表曲「アンジェリーナ」のセッションを行ったのである。夢の共演を終えた山中が放心状態のような表情をしていたのが印象深いライブでもあった。

the pillows『Happy Go Ducky!』(通常盤)

 今週、10月17日の木曜日には、横浜アリーナでの公演『LOSTMAN GO TO YOKOHAMA ARENA』が予定されている。30周年の記念となるこのライブについて山中は、自分たちを見たい人みんなが来れるようにチケットが売り切れない規模のハコでの開催を考えたものだが、フタを開けてみれば早々にソールドアウトした。当日の彼らは並々ならぬ気合でもって、音楽で真っ向勝負するとのことだ。「Funny Bunny」の演奏ともども、当日を期待して待ちたい。

the pillows - Funny Bunny (Live)

(文=青木優)

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