King Gnu 常田大希からBiSH アユニ・Dまで ソロプロジェクトでの音楽性に注目
しかし、中にはそうではないアーティストもいる。その代表がa flood of circleの佐々木亮介である。a flood of circleはガレージロックバンド。佐々木が常に革のジャケットを着用していることでも明らかなように、その佇まいやスタンスは“ザ・ロックバンド”である。しかし、ソロ活動では本当に同一人物なのか? と疑ってしまうほどに、ロックから距離の置いた音楽を作り上げる。ゴスペルやソウル、トラップまでを自在に扱うバリエーション豊かな作品を生み出すのだ。サウンドメイクもリズムアプローチも、バンドとは違う発想でクリエイトしているし、歌い方ひとつとってもバンドとソロで大きく異なる。バンドならば叫ぶように歌うことが多い佐々木であるが、ソロだと感傷的な歌い方はなるべく避けて、クールにラップを披露することすらある。その音楽性は、まるで海外基準のポップミュージックと言える。
最後に、BiSHのメンバーであるアユニ・Dによるソロバンドプロジェクト・PEDROにも注目したい。PEDROは音楽的なジャンルはBiSHと近しい部分がある。ただ、“楽器を持たないパンクバンド”BiSHのメンバーが“ソロでは楽器を弾いている”という部分が重要であり、ジャンルではなくスタンスが大きな差別化となっている。つまり、ソロ活動の意味合いが他の3組とは違うのだ。しかし、ソロ活動はグループではできないアウトプットを行うための実験の場と捉えれば、全員が共通の価値観を擁しているとも言える。
リスナーが求めるサウンドに寄り添い続けることは、バンドとしてのアウトプットの幅を狭めることにもなりうる。だからこそ、彼らはソロ活動や別プロジェクトを立ち上げ、そこで今やりたいことやバンドではできないことにトライするのかもしれない。
■ロッキン・ライフの中の人
大阪生まれ大阪育ち。ペンネームにあるのは自身が運営するブログ名から。人情派音楽アカウントと標榜しながら、音楽メディアやTwitterなどで音楽テキストを載せてます。