『The Colors』さいたまスーパーアリーナ公演
SEKAI NO OWARI、『The Colors』ツアーで刻んだ大きな節目 “大人になった”4人の姿
ライブが終わってからふと気がついたのは、今回のツアーでSEKAI NO OWARIは初期の曲、つまり「世界の終わり」時代のデビューアルバム『EARTH』(2010年)の曲を1曲も演奏しなかったことだ(ツアー中、日によっては「死の魔法」がアンコールに組み込まれていたので完全に封印されていたわけではないが)。長年SEKAI NO OWARIのライブを見てきて、「インスタントラジオ」も「青い太陽」も「白昼の夢」も演奏されない単独ライブを見たのは初めてだった。また、これまで彼らのライブで重要な役割を果たしてきた2ndアルバム『ENTERTAINMENT』(2012年)収録の「Fight Music」も今回のツアーでは演奏されなかった。フェスのステージになるとセットリストは大幅に変わるので必要以上の深読みはすべきではないが、少なくとも今回のツアー『The Colors』では、独善性(それは間違いなく初期の彼らの大きな魅力の一つだった)よりもこの世界を取り巻く複雑な二面性が、カウンター精神(上に同じく)よりもこの世界にうんざりしながらそれでもなんとか融和しようとする思いが、優先されていたように思う。それは4人が大人になったからなのか、それとも独善性やカウンター精神だけでは闘い続けられないほどデビュー時から比べても世界のあり方が変わってしまったからなのか。きっとその両方だと、自分は感じた。
■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。Twitter