SuchmosやSIRUPらに続く? 関西新鋭バンド magenta blue、ネクストブレイクの予感
この手の魅せ方をするバンドは、一体感重視のパフォーマンスやエモーショナルで押し通すタイプのバンドとは違い、確かな技術力が求められる。というよりも、演奏で生み出すグルーヴで引き込まれなかったら、表層的なサウンドの心地よさしか感じることができず、結果、ライブの印象も薄いものになりがちである。ボーカルにも同じことが言えて、細かなフシ回しやリズムに対するアプローチなど、そういう細かな技術がライブの良さに直結される。
そういった観点でみたとき、magenta blueのライブは、エモーショナルなボーカルや軽やかなギターのカッティング、ドラムのグルーヴの調和がひとつの波を作り、その波に身を任せることで音楽の気持ち良さに酔いしれてしまう。そんな心地よさがライブの真ん中にあるように感じた。実際、MCが終わったあとに披露された「Misery」は、イントロのギターから夏を感じさせる印象的な楽曲で、気がついたら、バンドが紡ぐグルーヴに合わせて、横揺れで音楽を楽しんでいる自分がいた。
実際、magenta blueの作り出すリズムの波に合わせながら、掲げた腕を左右にゆっくりと振るオーディエンスの姿も見られた。その時はmagenta blueの音楽が、いかに会場の空間を支配しているのかがよくわかった。この日のライブの最後に披露された「Hysteric rain」は、そんな会場の一体感をより強く感じた一曲だ。フィンガースナップから始まるこのナンバーは、R&Bのようなリズムアプローチを基本としつつも、カッティングギターによるファンク的なアプローチがグルーヴを加え、さらに終盤では流れを一変させるように、ボーカルが軽快なラップを繰り出すパートもある。一曲の中で次々に新しい表情を見せてくれるが、絶妙なバランス感覚を持って根底にある心地良さや、ディスコティックなムードは常にキープされていた。
メロ→サビ→イントロ(間奏)とほとんどのフェーズでリズムアプローチが変わっていき、曲が進めば進むほどmagenta blueが作り出す世界観に引きずり込まれていくような感覚がある。例えば、打ち込みと生音の混ぜ込んだドラムがビートの軸を握ることもあれば、フィンガースナップやウィンドチャイムといった聴き手を「おっ」と思わせるアクセントも豊富。そして、そのビートの中を泳ぐようにギターの音色が楽曲全体を鮮やかなものにし、そこに艶やかさを孕んだボーカルが加わることで確固たるアーバンな世界を作り上げるのだ。
現段階でもこのクオリティーの音楽を奏でているのに、さらにライブでセッションを重ねたら、どうなっていくのだろうと期待せずにはいられない。冒頭で述べた今の音楽シーンの流れからみても、このバンドが頭角を現す可能性は十分にあるようにも思えるのだ。
■ロッキン・ライフの中の人
大阪生まれ大阪育ち。ペンネームにあるのは自身が運営するブログ名から。人情派音楽アカウントと標榜しながら、音楽メディアやTwitterなどで音楽テキストを載せてます
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