Toshl、Kaya、JILUKA、清春、鬼龍院翔……それぞれの強み打ち出したアーティストたちのカバー作品
カバーを完全に自分の色に染め上げているという点でいえば、デビュー25周年を記念した企画の第一弾としてカバーアルバム『Covers』を9月4日にリリースする清春を忘れてはいけない。ポニーキャニオン移籍後初のリリースとなる本作は、井上陽水や松山千春といった1980年代のフォークソングから最近のポップスまで幅広くカバー。事前に公開された「悲しみジョニー」(UA)のMVでは原曲の持つアダルトで少し気だるい雰囲気を清春が歌うことでさらにセクシーに仕上げ、「SAKURA」(いきものがかり)に至っては清春の新曲かと思うほど“清春の歌”になっており、もはや原曲のポップさは見当たらない。そして、今作にはsadsの「忘却の空」のセルフカバーが収録されていることも見逃せない。約20年前にリリースされたsadsの代表曲でもある「忘却の空」を50歳を迎えた清春がどのように歌うのか楽しみだ。
セルフカバーといえばゴールデンボンバーの鬼龍院翔も昨年12月にこれまでに提供した楽曲をセルフカバーしたアルバムをリリース。その名も『個人資産』。この鬼龍院らしいネーミングセンスに笑ってしまうが、元々中島みゆきのセルフカバーを聴いていた彼がいつか自分も同じようにセルフカバーをしたいと構想していたもの。楽曲も大国男児に提供したラブバラード「Love Days」、Dancing Dollsに提供したアップテンポな「メロメロバッキュン」、氣志團が敬愛するクリエイターに楽曲提供を依頼しリリースした『万謡集』収録曲「きかせて!アンコール」、大竹しのぶに直接オファーをもらい提供した「Miren」、NSC時代からの友人でもあるしずるの村上純がプロデュースしたコントアイドル・Dollふに提供した「バッドエンディング」など、自分の色を出すというよりはそのアーティストの色に合わせた曲が並ぶ。ゴールデンボンバーでは聴けないような曲調や歌詞が聴くことができる一枚となっている。
歌そのものを聴かせるためのもの、自分らしくアレンジしたもの、カバーの仕方はそれぞれだが、近年のカバーに対する“他人の褌論争”もある中、どれもがそれぞれの強みを打ち出したカバーになっており、その面白さを改めて再確認することができた。これが彼らの音楽を、さらにはヴィジュアル系の面白さを知るきっかけになってくれることを願っている。
■オザキケイト
平成元年生まれの音楽ライター。ヴィジュアル系を中心にライブレポートやコラムを執筆している。「Real Sound」や「ウレぴあ総研」、その他バンドのプレスリリースにも寄稿。
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