アンジュルム、メンバーそれぞれの“個性”を尊重する姿勢 リスナーを夢中にさせる魅力に迫る

 また、メンバーが増えるたびに、各々の強い「個性」もアンジュルムの武器になっていった。例えば2015年に卒業した福田花音は、卒業コンサートで前代未聞の「メンバー全員とのデュエットメドレー」を披露した。これは、残ったメンバーに似合うスマイレージ/アンジュルムの曲を福田自身がセレクトし演出したもの。自身もアイドルオタクであり、デビュー当時から人一倍客観的にグループのことを観察していた福田だからこその、圧巻のステージだった。

 また、ファッション好きで専門学校にも通っていた勝田里奈や、普段からメイクの研究に余念がない5期メンバーの笠原桃奈の存在は、ステージ衣装やヘアメイクに大きな変化をもたらした。全員お揃いの衣装、メイクではなく、それぞれが好きな柄の服を着て、好きな色のリップを塗ってステージに立つ。2018年の「十人十色」ツアー(『アンジュルム コンサートツアー 2018春 十人十色 +』)、2019年の「輪廻転生」ツアー(『コンサートツアー 2019春 ~輪廻転生~』)でも、カラフルなバラバラの衣装で歌って踊る彼女たちを見ることができる。

 こんな風に彼女たちは、いつの時代も自分の個性に対して正直であり、同時に仲間の個性を尊重してきた。初期スマイレージ時代から、メンバーが変わるたびにどんどんグループの色や楽曲が変わっていったのも、その時にいるメンバーの魅力的な個性を最大限活かした結果なのだと思う。

 社会の中で生きていると、みんなでお揃いの制服を着る方が、えらい人の意見に同意する方がラクだと感じる場面もよくある。でもアンジュルムは、絶対にそれをしない。そんなところが、多くの人を惹きつけて止まない彼女たちの魅力なのではないだろうか。

 10年間リーダーを務めた和田に続いて、今年9月には2期メンバーの勝田もグループを卒業することが発表された。さらに、今月3日には最年少の13歳・橋迫鈴が加入。今後、グループの雰囲気は大きく変わるだろう。だけど、それを不安に感じることはない。メンバーの個性を、変化を受け止めた先には、いつだって最高のアンジュルムが待っているのだ。

■みずさき
ライター。アイドルを中心にエンタメ系記事の執筆を行う。
また、アラサー女性4人組サークル「劇団雌猫」として執筆、イベント業も行なっている。
新刊『本業はオタクです。 シュミも楽しむあの人の仕事術』が7月22日ごろ発売。
Twitter:@samizusaki

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