ゆず、ギターと歌だけで5万人の観客をひとつに 日本音楽史上初の弾き語りドームツアーを見て

 本編のラストはこのツアーのテーマ曲とも言える「SEIMEI」。ギターの弾き語りというミニマムな形で、“命の根源”という壮大なテーマを含んだ歌をストレートに表現する。それはこのツアーを象徴すると同時に、ゆずの本質が強く感じられるシーンでもあった。

 観客が掲げたスマホのライトがグリーンに輝くなか、アンコールは「栄光の架橋」から始まった。音数を抑えたアルペジオとふたりの声、観客の合唱が重なり、強く心を揺さぶられる。さらに純粋な疾走感に満ちた「少年」を披露した後、北川がゆっくりと観客に語り掛ける。

「2001年、初めてドームをやったときは、来てくれたお客さんには申し訳ないんだけど、そのときは俺たちはね、“5万人に負けるもんか。絶対に勝つんだ”と立ち向かうような気持ちだったんだ。でも、それから何年も経って、9回もドームでやらせてもらって。こんなに大きい会場なのに、ひとりひとり、みんなをすごく近くに感じています。もし、みんなもそんなふうに思ってくれていたらとっても嬉しいんだけど」

「ふたりでやれることには限界があります。だけど、ふたりでできることは無限だなと思っています」「令和の時代も、いや、死ぬまで俺たちと一緒に生きていこう」

 そんな真摯な言葉に導かれた最後の曲は「終わりの歌」。“路上の弾き語りから始まり、ここまで来た”という物語を込めたこの曲によって、ライブは幕を閉じた。

 ヘコんだり、がんばったり、哀しみに沈んだり、喜びに溢れたり、人を妬んだり、慈しみの情を感じたり。ゆずの歌には、年齢、性別、生まれ育ちを超え、あらゆる人の人生や生活のなかで起こる全てが含まれている。ギターと歌だけで5万人の観客をひとつにできるのは、彼らの歌がリスナーにとって人生そのものであり、それが広く深く共有されているからに他ならない。史上初の弾き語りドームツアーでゆずは、そのことを改めて証明したのだと思う。

(撮影:太田好治、立脇卓、田中聖太郎、岩﨑真子)

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

■セットリスト
ゆず弾き語りドームツアー2019 ゆずのみ〜拍手喝祭〜
5月30日(木)東京ドーム
1.青
2.DOME★BOMBAYE
3.贈る詩
4.飛べない鳥
5.スミレ
6.桜木町
7.陽はまた昇る
8.嗚呼、青春の日々
9.マボロシ
10.Hey和
11.うたエール
12.マスカット
13.シュビドゥバー
14.3番線
15.タッタ
16.岡村ムラムラブギウギ
17.夏疾風
18.サヨナラバス
19.夏色
20.SEIMEI(新曲)

<ENCORE>
1.栄光の架橋
2.少年
3.終わりの歌

ゆず オフィシャルサイト

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