m-floに聞いた、20周年以降の新モード「メチャクチャなパラレルユニバースみたいなことが起こる」

m−flo、20周年以降の新モード

私はたぶん狂ってるって言った気がする

 

LISA

ーー「EKTO」と「STRSTRK」にはその新しいモードを強く感じました。

☆Taku:「STRSTRK」がきっかけなんです。「STRSTRK」をつくるまでは、何をすれば良いか、何を出せばいいか、何がフレッシュか、何がm-floなのかとかいろいろ考え込み過ぎちゃったところがあって。僕のトラックに対して、みんながメロディをつけていくんだけど、僕的に「ごめん。違うんだよね」って感じになっちゃってたんです。「これだ!」っていうのができなくて。

ーーなんかしっくり来なかった。

☆Taku:しっくりくるのって元々難しいことなんですよ。過去の作品でも「これだ!」って思ったことはあまりないんです。今回そういうことにも気付かされたりして。今回ソングライティングキャンプをやってたときに90'sのヒップホップっぽいモノを作ったり、フューチャーベースを作ったり、いろいろ試していたんですね。その中で、ある日、「STRSTRK」のデモを作ったときに、二人とも「What the fuck is this?」みたいな感じになって。

VERBAL:僕たち、グアムで一軒家を借りてソングライティングキャンプをやってたんです。2階建ての家でLISAの部屋が1階にあって、僕と☆Takuは2階。で、☆Takuの部屋のドアがちょっと空いてたんですよ。そしたら、いきなり「STRSTRK」のトラックが流れてきて。僕は隣の部屋で他の曲を書いたりして作業してたんですけど、「なにこれ、なにこれ?」って部屋に入って行ったのを覚えてる。

☆Taku:そう。入ってきて、「なにこれ、ヘンテコなの」って。

LISA:私もスパークしちゃいましたね。もうシビれちゃった。私はたぶん狂ってるって言った気がする。「これやべえ、狂ってるー!」って。忘れないですね、あの瞬間は。最高でした。

☆Taku:とりあえず気分転換で作ったような曲に二人がそういうふうに反応してくれて「あ、こういうことなのかな」って。僕の中でそれがきっかけになって、そのあとトラックを作るのがすごく楽になったんです。自分がどういうトラックを作れば良いのかっていうのがあの曲で見えた。

ーー紙資料では「STRSTRK」をチルトラップと呼んでいますが、どのようなアーティストやジャンルをヒントにして作った曲なんですか?

☆Taku:資料にわかりやすい言葉が必要だったってことだと思うけど、チルトラップって付けたのはスタッフなんですよ。僕、block.fmやってるけど、チルトラップって言葉は一度も使ったことがないし、わかんない。「STRSTRK」は、単純に、おっそーい曲をつくろうと思ったの。トラップとかそういうんじゃなくて、おっそーい曲を作ろうっていうだけ。以上。

VERBAL:狙ってる感じがなかったんですよ。だから良かった。狙ってやると、「今の若い人に刺さろうとしてるのかな」みたいなのが出ちゃう。でも「STRSTRK」は何も考えないでやって出てきたのかなっていうのがすごく伝わってきて。要はタカハシトラップってことだよ(笑)。

LISA:そうだね(笑)。

☆Taku:けど、自分自身、オリジナルなものを作ったって思ってないし。本当単純に音を重ねていって作っただけです。

ーートラックに触発されて、リリックもスラスラ出てきた感じですか?

LISA:メロディはその場で降りてきました。だから、すぐ録って。そのときに〈I’m so starstruck〉っていう言葉も降りてきたんです。

ーーstarstruckというのはどのような意味なんですか?

VERBAL:有名人とかスターに会ったときに衝撃で固まるみたいな感じ?

LISA:それのもっと強い感じ。It’s madness, craziness みたいな。心にグッと刺さるとかじゃなくて、私をクレイジーにさせてしまうほどの「わぉ!」っていうヤツですね。

ーーLISAは、どのようなイメージで歌詞を書いていったんですか?

LISA:☆Takuと一緒で私もあんまり手直ししてないです。この曲では、何がどうなのかっていうことをあまり細かく伝えたくなかったの。どんなLoveなのかも具体的に伝えたくないし、どこまでクレイジーなの? っていうことも伝えたくないというか。宇宙チューンだとしたら宇宙規模に大きくしたかったんです。変な話、言葉も乗せたくなかったくらい。ラララとかタララでも良かったくらい、私、この曲に惚れたんです。言葉って残酷で、入れれば入れるほど世界を縮めてしまうから、もう何にも要らないって。このクレイジネスをキープするために、大きく大きく、スペイシーにスペイシーに、「何言ってんだかわかんない」くらいでいいじゃん、と思ったんです。

VERBAL

ーーVERBALはどんな思いでラップを書いんたんですか?

VERBAL:いろんなパターンのラップができるくらい、このトラックは刺激的でした。で、LISAと同時進行で何パターンか書いた中で、LISAの言ってるstarstruckにこのラップがすごくハマったんです。トラックがすごくダークだったこともあって、歌詞は暗い感じ。ディストピアにいるけど自分の中で何かが覚醒して盛り上がってる。その理由は崇めてる相手が……みたいな話ですね。その主人公の思想をキャプチャーした歌詞を書きたくて。

ーーVERBALのリリックには、Public Enemyの曲名でもある〈Welcome to the Terrordome〉という一節が出てきますよね。

VERBAL:気付いてくれてありがとうございます!

☆Taku:最初はerrordomeだったんだよね。

VERBAL:要はちょっとズレた世界観を歌おうと思ったんです。でも、Welcome to the Terrordomeすら知らない人たちにerrordomeは1ステップ多いなと思って、Terrordomeに戻したんです。

ーーそうやってPublic Enemyの曲名も引用しているくらいだから、コンシャスな意識で書いたリリックなのかと思ったんです。現代の管理社会への警鐘みたいな意識も多少あったんですか?

VERBAL:それを救うのは自分自身というか。すごく貧困な地区に住んでる子どもたちが、ハッピーな笑顔をみせるドキュメンタリー映像とかを観るとグッとくるんですよ。友達がいっぱいいて楽しく生活してるとか。一方ですごく恵まれているのに文句ばっかり言ってる子もいる。ニュースをつけると世界は良いことばかりじゃないですけど、それは自分次第なんじゃないかなって。頭の中の銀河でいろんなことを空想していけば、自分の世界を広げられるとか、そういうポジティブなことを言いたかったんです。

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