OKAMOTO'Sが10年間貫いてきた“同じことを続ける姿勢” 兵庫慎司が見た武道館初ワンマン

OKAMOTO'S、結成10周年武道館初ワンマン

撮影:Shun Komiyama

  たとえば、僕が最初に新宿紅布で観た頃のOKAMOTO’S(もちろん「Beek」とかもやっていた)には、ハマがスラップベースを弾く曲も、レイジがイヤホンでバックトラックを聴きながら演奏する曲もなかった。コウキがキーボードを弾く曲もなかったし、ましてやコウキがリードボーカルをとる曲もなかった。「NOTHING」のようなダビーでサイケな曲もなかったし、「Dancing Boy」のように、美しくせつないメロディで感動をもたらす曲もなかった。というのが変わったところ。では、変わらないところはどこか。10年かかって辿り着いたせっかくの武道館なのに、メンバーの立ち位置はライブハウスのまんま、ステージの真ん中にギュッと集まった状態。大会場だというのに(曲によって同期を聴く必要のあるレイジ以外の3人は)イヤモニを使っていない。なので、花道の端や途中に幾つもモニタースピーカーが置かれている。

 生中継も入っていたし、カメラは4人を追っているが、その姿がスクリーンに映るのは全曲ではない。効果映像を使ったのも、「NOTHING」、「マダラ」、「ART(FCO2811)」あたりのブロックくらい。あと演出らしい演出は、アンコールの最後でOKAMOTO’Sのバンドロゴが出て来たことと、ミラーボールが回った程度だった。デカバコに付きものの特効としては、本編ラストに紙吹雪が舞ったのと、中盤に火炎放射があっただけ。しかもその火炎放射も、MCの時にハマが「ヤー!」とかめはめ波的に気合いを送るとボッと燃え上がる、という使い方で、コウキに「こういうのって盛り上がってる時に出すんじゃないの?」とつっこまれていた。

撮影:浜野カズシ

 なお、そのMCの時もハマは「武道館だからって、ひよってしゃべる時間を短くしたりとかは一切ありません!」と宣言し、その後もゆるさを貫いた。コウキの「べつに通常どおり」と同じことだ、ノリとしては。

  もっと言うと、さっき「変化」として挙げた、コウキがキーボードを弾くのも、バックトラックを使うのも、以前と比較すると変化ではあるが、サポートメンバーは入れない、コウキがキーボード弾くのでギターがなくなるならショウがギターを弾く、つまり4人だけのステージを貫く、ということでもある。

 というように。この10年かけてようやく辿り着いた日本武道館ワンマンのような「新たに挑みたいこと」に向かう時も、「譲りたくないところ」は守り通す、というか守り通した状態で挑まないと意味がない、という、このバンドの姿勢がそのまま表れた時間だったということだ。

 「武道館に立ってみてどう感じるか分からなかったけど、演奏してみて『OKAMOTO’S、でっかいところでできるな』と思った」。アンコールのMCでショウはそう言った。で、「まだまだやってないことあるんだよ。アリーナ! 1階! 2階 男! 女! って呼びかけるのとか」。確かに、言われてみれば全然やってなかった、そういういかにも武道館なアオリも。そこでさらっと「またやりましょう」と言ったのは、ハマだったと思う。

撮影:Shun Komiyama

(メイン写真=浜野カズシ)

■兵庫慎司
1968年生まれ。音楽などのライター。「リアルサウンド」「DI:GA ONLINE」「ROCKIN’ON JAPAN」「週刊SPA!」「KAMINOGE」などに寄稿中。

■ライブ概要
『OKAMOTO’S 10th ANNIVERSARY LIVE “LAST BOY”』
2019年6月27日(木)東京・日本武道館
時間:OPEN18:00/START19:00
▼SET LIST
1.Dreaming Man
2.Hole
3.FOOL
4.NO MORE MUSIC
5.Higher
6.NEKO
7.ハーフムーン
8.Animals
9.偶然
10.Phantom(By Lipstick)
11.NOTHING
12.マダラ
13.ART(FCO2811)
14.SAVE ME
15.HEADHUNT
16.BROTHER
17.ROCKY
18.Dancing Boy
【Encore】
1.DOOR
2.Beek
3.90’S TOKYO BOYS

OKAMOTO'S オフィシャルサイト

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