中村雅俊が語る、“変化を重ねてきた”45周年の軌跡「全力投球してきたからこそ続けてこれた」

中村雅俊が語る、45周年の軌跡

俺が歌えば俺の世界の歌になる

ーーそうだったんですね! 吉田拓郎さん、筒美京平さん、松任谷由実さん(呉田軽穂)さんなど、本当にすごい作家陣が楽曲を提供していますが、中村さんが「この人に書いてほしい」とリクエストしてこともあったのでしょうか?

中村:いま話に出た「いつか街で会ったなら」は、俺が「拓郎さんに書いてほしいです」とお願いしましたね。松田優作さんとご一緒した『俺たちの勲章』(1975年)という刑事ドラマの主題歌なんですが、拓郎さんの曲が合うだろうなと思って。その前からずっとファンでしたし。『俺たちの旅』も自分から「小椋さんにお願いできませんか?」と言いましたね。『俺たちの勲章』『俺たちの旅』『ゆうひが丘の総理大臣』(1978年)は、同じプロデューサーのドラマなんですよ。

ーー個人的には『ゆうひが丘の総理大臣』の主題歌「時代遅れの恋人たち」が思い出に残っていて。夕方に再放送していて、ずっと見てました。

中村:(『中村雅俊45thアニバーサリー公演』に出演する)寺脇康文くんも同じことを言ってましたよ。カラオケに行くと必ず歌うって(笑)。最近、テレビ神奈川で再放送していて、ちょっと見てみたんだけど、すごく元気だよね。生徒を追いかけたり追いかけられたり、絶えず走ってて。

ーー(笑)。ベストを聴いていると、どんなテイストの曲も“中村雅俊の歌”にしているところがすごいなと改めて実感しました。

中村:俺が歌えば俺の世界の歌になる、というところはあるかもしれないですね。一つだけそうならなかったのが、小田和正さんに書いてもらった「小さな祈り」(1998年)なんですよ。小田さんの事務所で3時間くらい、みっちり歌い方の指導を受けて。小田さんはどちらかというと、短く切るような歌い方だと思うんですけど、俺は語簿を伸ばすクセがあって。歌えるようになるのがけっこう大変で……でも、そんなことを言いながら、いま聴くと「やっぱり俺の歌い方になってるな」と思ったりもするんだけど。

ーー80年代から90年代にかけても、ASKAさん、根本要さん(スターダストレビュー)、米米CLUBなどのヒットメイカーが楽曲を提供。サウンドやアレンジも変化していきます。

中村:それに伴って、俺の歌い方も変化してますね。70年代は優しく歌うことが多かったんだけど、80年代は少しずつ男っぽい歌い方になってきて。どう歌おうか意識していたわけではないんだけど、以前は出演したドラマの主題歌を歌わせてもらうことが多かったから、役柄と重なっていたところもありましたね。

ーー歌と演技がつながっていたと。

中村:そうだと思います。もちろん、作詞家、作曲家の方との出会いも大きくて。お亡くなりになった大津あきらさん(「心の色」「君の国」などの作詞を担当)に歌詞を書いてもらったのもそう。大津さんはいつも身近にいてくれて、レコーディングにも立ち会ってくれたし、地方のコンサートにも来てくれて。仲良くなると、それが歌詞にも反映されるんですよ。「俺のことを知ったうえで書いてくれてる」という感じもあって。それは松井五郎さんも同じですね。俺という人間を理解したうえで歌詞を書いてくれてるというか。ただ、そうじゃないアプローチの歌詞にもいいものがいっぱいあるし、作詞、作曲、歌の化学反応は大事ですよね。

ーー中村さんが作曲したシングル曲(「野生のリサ」「愛はここにある」)も収録されていますね。

中村:すいません(笑)。俺が作曲した曲はあまりヒットしなくてねえ……。大学生の頃から曲は作っていて、好きなんだけど、なかなかいい曲が作れない(笑)。でも、アルバムにはけっこうオリジナル曲が入っていて、それは俺の宝物ですね。

ーーそして00年代以降は、松井五郎さん(作詞)、都志見隆さん(作曲)のペアが定着します。そのほかにも、曽我部恵一さん、松本素生さんらの楽曲もあって。

中村:松井さん、都志見さんは俺のことをよくわかっているし、「こんな楽曲はどうですか?」と提示もしてくれるので、すごく助かってますね。曽我部くん、松本くんは、スタッフの推薦なんですよ。歌って、実際に歌ってみないとわからないんですよ。洋服も見るだけではダメで、着てみないと似合うかどうかわからないじゃないですか。歌もそうで、実際に歌っていて「これは合うね」とか「普段よりも上手く聴こえる」とか(笑)、いろんなことが見えてくる。つまり、先入観だけで決めちゃいけないということですよね。知らない作家の方であっても、「やってみようか」というのが大事だなと。

ーーなるほど。中村さんの歌を心の寄り処にしているファンの方も多いと思いますが、中村さん自身の歌に対するモチベーションも変化していますか?

中村:あまり大げさなメッセージは言いたくないんですよね。お芝居や映画もそうでしょうけど、受け取ってくださる方に委ねたほうがいいと思うんです。聴く人、観る人によって感じ方はいろいろだろうし、俺としては、自分が解釈した歌詞やメロディを送り届けるだけなので。俺は決して上手い歌手ではなくて、いい歌詞、いいメロディを作っていただいて、その世界を自分なりに表現するタイプだと思っているんですよ。それに触れてくれた方が、何かを感じてくれたらそれでいいかな、と。そういうことって、理由はわからないじゃないですか。音楽を聴いて「こことここが素晴らしい」って説明すると、ちょっとウソくさいでしょ?(笑)。

ーー(笑)。うんちくを語るのも楽しいですけどね。中村さんが好きなThe Beatlesにも、いろんなエピソードがあるし。

中村:そうだね(笑)。「Please Please Me」という曲があるでしょ? あれは“どうぞ、どうぞ”ではなくて、“どうか、僕を喜ばせてほしい”ということなんだよね。最初の“Please”と二つ目の“Please”は意味が違うんだけど、子どもの頃、「知ってる? あの題名はさ……」って話してました(笑)。

ーー最近では、「ポール・マッカートニーはステージで水を飲まない」というのが話題になったり。

中村:それはみんな言ってたね(笑)。あまりにもみんなが話題にするから、俺もそうしようかなって思って。水の代わりにハチミツを飲もうかな(笑)。

ーー(笑)。今回のベストアルバムには“yes! on the way”、つまり“まだ途中”というタイトルが付いていて。この先、歌手としてどんなことをやっていきたいですか?

中村:新しいことは思い付かないけど、45年間、1年も欠かさずツアーを続けているから、それをずっとやれたらいいなと思ってます。基本的にはホールのコンサートですが、ライブハウスで歌うのもいいしね。どんな環境であっても、歌は続けていきたいなと。こうやって音楽に関われていることが、すごく嬉しいんですよ。音楽との出会い、歌との出会いは俺の人生にとって、本当に大きいですね。

(取材・文=森朋之)

■リリース情報
中村雅俊
45周年記念シングルベスト『Masatoshi Nakamura 45th Anniversary Single Collection~yes!on the way~』

初回限定盤 CD4枚組+DVD1枚
 ¥10,000+税

通常盤 CD4枚組 
¥5,000(+税)

<LIVE BEST DVD収録楽曲>
1.100年の勇気
2.これからが長い道
3.迷いながら
4.70年代
5.過ぎた日にそっと花を
6.ただお前がいい
7.ナカムラ・エレキ音頭
8.時代遅れの恋人たち
9.恋人も濡れる街角
10.ふれあい
11.いつか街で会ったなら
12.君を胸に秘めて
13.海を抱きしめて
14.俺たちの旅
15.心の色
16.想い出のクリフサイド・ホテル
17.あゝ青春
18.風の住む町
19.ONE MORE HEART
20.君がいてくれたから
21.心の地図
22.滑走
23.ワスレナイ
24.はじめての空

※1~3 1994/5/18 大阪フェスティバルホール
※4~8 1998/6/28 日々谷野外音楽堂
※9~12 1998/5/14 静岡市民文化会館
※13~17 1999/9/17 東京国際フォーラム・ホールA
※18、19 1994/8/23 日本武道館
※20~24 2015/10/12 神奈川県民ホール
1~17は初映像商品化

<CD収録曲(57曲)>
CD-1
1ふれあい(1974年7月1日)
2白い寫眞館(1974年11月1日)
3いつか街で会ったなら(1975年5月1日)
4俺たちの旅(1975年10月10日)
5盆帰り(1976年5月25日)
6時(1976年11月1日)
7俺たちの祭(1977年11月1日)
8青春試考(1978年5月10日)
9時代遅れの恋人たち(1978年11月1日)
10日時計(1979年6月1日)
11激しさは愛(1979年11月1日)
12野生のリサ(1980年5月1日)
13マーマレードの朝(1980年9月1日)
14表通りは欅通り(1981年2月10日)
15心の色(1981年11月25日)

CD-2
1君の国(1982年5月21日)
2恋人も濡れる街角(1982年9月1日)
3燃える囁き(1983年5月21日)
4瞬間(ひととき)の愛(1983年7月21日)
5揺れる瞳(1983年12月21日)
6パズル・ナイト(1984年6月21日)
7夢一途に(1985年3月21日)
8日付変更線(1985年10月21日)
9想い出のクリフサイド・ホテル(1986年5月21日)
1070年代(1987年6月1日)
11もう一度抱きたい(1987年10月21日)
12さよならが言えなくて(1987年11月21日)
13未来が眠る日々(1988年9月1日)
14消えのこる青春の香り(1989年1月21日)
15RISKY NIGHT(1989年4月21日)

CD-3
1あなたにあげたい愛がある(1989年6月21日)
2闇の中のサファイア(1989年7月25日)
3ほほえみで抱きしめたい(1989年11月21日)
4願い(1990年5月21日)
5風の住む町(1990年12月21日)
6ざっくばらん(1991年11月21日)
7誰よりも…(1992年9月1日)
8ほんとうに愛ができること(1993年4月21日)
9迷いながら(1994年3月21日)
10ありったけの愛を集めて(1995年5月10日)
11過ぎた日にそっと花を(1996年9月10日)
12愛はここにある(1997年9月10日)
13小さな祈り(1998年7月1日)
14哀しい人(1999年6月1日)

CD-4
1心の地図(2000年11月23日)
2あいつ(2001年8月1日)
3虹の少女(2002年9月20日)
4立ち上がれ(2003年5月21日)
5空蝉(2005年2月23日)
6コスモス (2007年2月21日)
7涙(2008年6月25日)
8はじめての空(2015年9月23日)
9ならば風と行け(2016年9月14日)
10どこへ時が流れても(2017年9月13日)
11まだ僕にできることがあるだろう(2017年9月13日)
12だろう!!(2018年11月21日)
13千年樹(2018年11月21日)

■公演情報
『明治座「中村雅俊 45th アニバーサリー公演」』
2019年7月6日(土)~7月31日(水)
一部 芝居:脚本 鹿目由紀 鴻上尚史  /  演出 鴻上尚史
『勝小吉伝 ~ああ わが人生 最良の今日~』
出演: 中村雅俊・賀来千香子・東 啓介・愛加あゆ・山崎銀之丞・田山涼成・寺脇康文 他
二部 中村雅俊 LIVE
「yes! on the way」

【開演時間】
12:00/17:00
【料金(税込)】
S席(1階席・2階前方席))¥12,000
A席(2階後方席・車イススペース)¥8,500
B席(3階席)¥6,000

【チケット発売】
5月26日(日)10:00~ 一般販売開始
※6歳以上有料。5歳以下の入場は不可。
明治座オフィシャルサイト

中村雅俊『45周年ベスト盤発売&明治座公演制作発表記者会見』スペシャルイベント
開催日:7月1日
開催場所:明治座
※7月1日発売の中村雅俊シングルベスト「yes! on the way」を指定CDショップ予約者の中から抽選で招待
※応募方法等詳細:コロムビアサイトにて

『Masatoshi Nakamura 45th Anniversary 明治座 Special Live』
【開演時間】16:00
【料金(税込)】
S席(1階席・2階前方席))¥12,000
A席(2階後方席・車イススペース)¥8,500
B席(3階席)¥6,000

【チケット一般発売】
5月26日(日)10:00~
※6歳以上有料。5歳以下の入場は不可。

中村雅俊 公式サイト

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