元NGT48 長谷川玲奈も……AKB48グループの卒業進路として高まる“声優”人気

求められているのは“アイドルもできる声優”

 声優に転身した全員が、必ずしも成功できるわけではない。声優に限らず女優でもタレントでも同様で、アイドルグループ在籍時は人気だったにも関わらず、卒業後はテレビやメディアなどで滅多に見られなくなってしまった元アイドルは実に多い。必要なのは、声優としての技術をどれだけきちんと学べるかということだろう。例えば2018年にアイドルグループ・虹のコンキスタドールを卒業した陶山恵実里は、アイドル時代に大手声優事務所のマウスプロモーション附属の俳優養成所で学び、『アイカツフレンズ!』や『ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。』など人気の作品で頭角を現した。現在は正式にマウスプロモーション所属となっている。2015年から同事務所に所属する秦佐和子もまた、SKE48卒業後は日本ナレーション演技研究所などで学んだ経緯がある。現在アイドルを題材にしたゲームやアニメは数多いが、そこで求められるのは、あくまでも声優としての技術なのだ。

 今の傾向で言えば、『ラブライブ!』や『BanG Dream!』『ヒプノシスマイク』など、キャラクターソングに対する需要が高く、音楽活動も行える声優が求められているが、これは声優としての技術を持っていることが前提。要は、声優ができるアイドルではなく、アイドルもできる声優だ。『ミュージックレイン スーパー声優オーディション』など、アイドル活動を前提にした声優オーディションも数多く開催されているが、スフィアやTrySailなどが人気を博したのも、アイドル性以上に声優としての確固たる基盤ができていたからだろう。声優養成所もそうした傾向に対応し、声優の技術だけでなく歌やダンスのレッスンにも力を入れており、声優とアイドルを両立できる声優が続々と登場している。そうした状況において、元アイドル(が声優を目指す)という冠は、何のアドバンテージにもならないのが現実だ。生き残る以前に芽を出すことすら困難で、元NGT48の長谷川玲奈が進む先は、目下いばらの道だと言える。成功できるか否かは本人の努力次第。困難を乗り越えアニメ作品のクレジットに彼女の名前を見る日を、楽しみに待ちたい。

■榑林史章
「THE BEST☆HIT」の編集を経て音楽ライターに。オールジャンルに対応し、これまでにインタビューした本数は、延べ4,000本以上。日本工学院専門学校ミュージックカレッジで講師も務めている。

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